仲間
皆様が読んでくださってありがたいやらなんやら!
ありがとうございます!
その日、私は悩んでいた。
いつも私に美味しい特別ランチを作ってくれる料理長様に何かプレゼントが出来ないかと考えていたのだ。
兄に相談したら『それが彼の仕事だから気にするな』と言われてしまった。
でも、彼の仕事は決められたメニューを作ることであって、私用にいつも作ってくれるランチは仕事外ではないのか?
やっぱり何かプレゼントがしたい。
何が良いか解らず本に何かヒントがないか眺めていた。
「モニキス公爵令嬢」
突然背後から声をかけられ驚いた私は本落とし、ヒッと小さな悲鳴を漏らしてしまった。
咄嗟のことだったせいで出てしまった声に、私は思わず両手で口をおさえながら後ろを振り返った。
そこには白銀の髪の毛に金色の瞳を銀縁眼鏡で覆った人物が立っていた。
彼は、比較的いつも王立図書館の入口の横にあるカウンターに座っている司書様だ。
バレた!
私の声が出ることが、この人にバレてしまった。
兄にも姉達にもバレてしまう。
そしたら、尋常じゃなく怒られてしまう。
そう思ったら私の目から涙かこぼれ落ちた。
司書様は呆然と私を見つめた後、弾かれたようにオロオロしだし、そしてポケットに手を突っ込み絶望的な顔をした。
「すみません。あいにくハンカチを持ち合わせていないのです」
そう言うと司書様は司書様の服の袖口で私の涙を拭ってくれたが止まるような気配はなかった。
「貸し出し用の登録書の不備がありまして、書いて欲しいのですが宜しいですか?」
司書様は淡々とそう言った。
私は泣きながらコクりとうなずいた。
「では、此方にお越しください。そんな状態の貴女をこのままにしていたら自分の命が危うい」
私が首を傾げると、司書様は私の手を掴むと歩き出した。
連れていかれたのは入口脇にある司書様達の控え室のような場所だ。
私が入ってくるのを見た、休憩していた数人の他の司書様達が目を見開きオロオロしていた。
「シジャル様!何、何したんですか?な、泣かすなんて!」
「煩いよバハス君。モニキス公爵令嬢が……手を怪我してしまったんだ。奥で処置してくるよ」
「ああ!なんだ!あ、魔法ですね!解りました」
彼の流れるような嘘に驚きながらついていくと更に奥に連れていかれた。
ついた先は小さな部屋で、机が奥に1つと中央に硝子のテーブルと二人がけのソファーが1つあるだけの部屋だ。
「ああ、あった。ハンカチをどうぞ」
司書様は私に机から綺麗にアイロンがけされたハンカチを手渡してきた。
「涙が止まりましたら、こちらの書類の、ここにサインしていただけますか?」
私が書類を見つめると司書様はニコッと笑った。
「アルティナ・モニキス公爵令嬢。心配しなくても自分は何も言うつもりはありませんよ。どうぞ、ソファーにお掛けください」
「……何故?」
私が司書様の方を見ながらソファーに座ると、彼は机の引出しからお菓子とお茶のセットを取り出しながら言った。
「自分にも秘密がありますから」
司書様はお茶用のポットに呪文を唱えて魔法でお湯を出して紅茶を淹れてくれた。
渡された紅茶をゆっくりと口にするとホッとする味がした。
「私の秘密は大した秘密ではないのです」
「と言うと?」
「……面倒になってしまったのです」
「面倒?」
司書様はキョトンとした顔で口にクッキーを一つほおりこむと残りを私の前にある硝子テーブルに置いた。
「兄と姉達との会話が面倒になりまして」
司書様は暫く凍りついて、弾かれたように笑った。
「素敵な理由ですね」
「けして素敵な理由ではありません。嘘をついているのですから」
司書様は自分用に淹れた紅茶を一口飲むと言った。
「ですが、自分も会話が億劫だと思ったりしますよ。透明人間にでもなりたいと常々考えたりも」
司書様は更に紅茶を飲んだ。
私もつられるように紅茶を口にした。
美味しい、ちょっと落ち着いて涙が止まった気がした。
私は書類の指定された場所に名前を書き足した。
「自分魔法が得意なんですが、魔法が得意だと知られたら魔法部隊に入れられてしまうので学生時代の魔法の成績は下から数えた方が早かったし、実は光魔法も使えるのですが使えるとバレたら神官にされてしまうので、ごく一部の人間にしか話してません」
それは、私に話して良い話なのだろうか?
私が首をかしげると司書様はニコッと笑った。
「自分はミリグリット辺境伯の次男のシジャルと申します。せっかくモニキス公爵令嬢の秘密をお聞かせいただいたので自分のも話しておこうかと思いました」
「何故……魔法部隊と神官が嫌なのですか?」
「自分は本が好きなので司書になりたかったのです。今や王立図書館司書長なんて役職も、もらっています」
「……羨ましい。私も一日中誰にも邪魔されずに本を読みたいから喋るのをやめたようなものなので」
司書様はハハハっと笑った。
「では、仲間ですねモニキス公爵令嬢」
「仲間ですもの。アルティナとお呼びくださいシジャル様」
「……では、アルティナ様。声の出し方を忘れないよう、たまにお話をいたしましょう」
「は、はい!是非」
こうして、私に気の置けない仲間ができたのだった。
9月15日に私の作品『勿論、慰謝料請求いたします!』が、ビーズログ様より書籍販売開始いたしたす!
Web購入されると『バナッシュさんのその後』、書店購入されますと『かき氷』の話が読めます!
他にもかなり本編の話も増し増ししています!
宜しければ宜しくお願いいたします!