妹 ユーエン目線
9月2日ランキング1位ありがとうございます!
皆様のおかげです!
僕には自慢の妹が三人居る。
長女リベリーは23歳でナイトブルーの髪の毛とスカイブルーの瞳が妖艶で公爵家に嫁ぎ、次女ラフラは20歳でスカイブルーの髪の毛にエメラルドの瞳の可愛らしい見た目で、侯爵家に嫁いだ。
二人は社交界の宝石と呼ばれるほどの美人として有名で結婚した今でも異性からの関心を集めている。
そして、三女のアルティナ14歳はアメジストの髪の毛にラベンダーの瞳、外に出たがらない引きこもりのせいか日に当たらない肌は陶器のように白く儚げな雰囲気を持つ。
壊れ物のように見えるが、なかなかに自我を持つ女性だ。
アルティナは本にのめり込み社交界には出るつもりもない。
やれ、お腹が痛いだの頭が痛いだのと誰でも解るような嘘をつき馬車に酔ったと会場まで行って馬車から下りず本を読むような彼女に出会いなど、どうやって見つければ良いのか?
そんなとき、16歳の第二王子の婚約者を探していると国王陛下から話をもらった。
上の妹二人のように美しい女性なのだろうと言われ、頷いてしまったのが運のつきだった。
国王陛下にとんとん拍子に婚約の話を取り付けられてしまい、アルティナには悪いが婚約はほぼ決まったようなものだった。
第二王子がどんな性格か?と言われたら、脳筋と答える。
今、25歳の僕と同い年の第一王子の方が文武両道でアルティナを幸せにしてくれそうなのだが第一王子は恋愛に興味が無さそうだ。
14歳の第三王子は甘えたいだけのお子様だから論外だ。
どうにか第二王子から第一王子に婚約者を変えてもらえないか国王陛下にお願いしようと思っていた。
結婚とは女性の幸せだ。
早く良い男を捕まえて、妹達には幸せな暮らしをさせたい。
あの時まで、僕はそう思っていたのだ。
アルティナが第二王子の婚約者など嫌だと言った時、僕は結婚をすることが女性の幸せなのだと信じ込んでいた。
だから、アルティナがなに不自由なく暮らすために王族との婚約を実現したかったのだ。
言い聞かせようとアルティナの肩を掴めばアルティナは僕をキッと睨み付け、その手を振り払った。
アルティナのあんな顔はじめて見た。
僕の手を振り払ったアルティナが体勢を崩し床に頭を打ち付けてしまった時、意識を失ったアルティナを見て血の気が引いた。
幸せにしたかった大事な妹を僕は何の考えも無しに傷つけてしまったのだ。
それは、心にも身体にも。
目を覚ましたアルティナは、もう、喋ることが出来なくなっていた。
医者が言うには、ストレスからくる心的障害でストレスを取り除くのが一番だと。
それなのに、国王陛下はアルティナの声が出なくなったことを聞くと第二王子との婚約は無かった事にして欲しいと言ってきた。
その事実にアルティナは苦笑いを浮かべ仕方がない事だと筆談で伝えてきたのだ。
毎日、飽きるまで本を読むアルティナ。
僕が帰ると柔らかな笑顔を向けてくれる。
妹達の中でも一番美しいアルティナが結婚できないなんて考えもしなかった。
……もう、僕がアルティナを養い毎日飽きるまで本を読ませてあげればアルティナは幸せかも知れない。
誰にもアルティナを任せる必要なんてない。
僕がアルティナを幸せにすればいいんじゃないか?
僕のせいで声が出なくなったのだ。
僕が責任をとるのは当たり前だ。
そう、思ったのは間違いない。
だがね、アルティナは美しいのだ。
王立図書館に興味をもったアルティナを連れて王立図書館に連れてきた日、入口でアルティナを見かけた数人の同僚にアルティナを紹介して欲しいと詰め寄られた。
昼に昼食をとるためにアルティナを迎えに行けばいつもの数倍の人数の男達がアルティナを眺めるために本棚の間からチラチラと様子をうかがっていた。
食堂に連れていけばアルティナの美しさに大半の人間が言葉を失っていた。
これは、どうしたものか。
午後アルティナを王立図書館に送って行った後、出会う男出会う男皆にアルティナのことを聞かれた。
「大変そうだねユーエン」
「妹は本当に美人ですから」
第一王子ディランダルは苦笑いを浮かべた。
本当は彼にもらって欲しい。
文武両道、性格も穏やか。
白に近い金髪にアクアマリンのような瞳の美丈夫。
それに、僕の親友だ。
「アルティナが喋れなくなったのは僕のせいだ。だから、僕が幸せにする」
驚いた顔のディランダルはゆっくりと柔らかく笑った。
「そっか。困ったことがあったら何時でも相談しなさい。力になるから。ねっ親友」
「悪いな親友」
僕らはクスクスと笑いあった。
こんな男だから彼にアルティナを預けたかったのだが、今はそれを言うべきではないと僕は口をとじたのだった。
ありがとうございます!