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お読み下さりありがとうございます

(*´-`*)ゞ

 あの日からシャルロは常に私のそばにいて、シジャル様が私に近づくとグルグググググっと威嚇するような声を出すようになった。

 心配したマーサさんが常にそばについていてくれたこともあり、シジャル様と二人きりになることは出来なかった。

 でも、シジャル様が私を好きだと言ってくれたことは忘れていない。

 愛しているとまで言ってくれた。

 私は一人満ち足りた気持ちになっていた。


「シャルロ、自分はアルティナ様をいじめていたわけでは無いのです」

「グルグググググググ」

「信じて下さい」


 シャルロは口をガバッとあけて更にシジャル様を威嚇します。


「シャルロ~~アルティナ様と少しだけお話をさせてください!」

「グルグルグルグルグルグル」


 こんな会話を帰るまでシジャル様とシャルロは繰り返していた。





 旅の間に私の声は戻ることはなかったが、シジャル様と気持ちを交わすことは出来て私は満足して家に帰ってきた。

 シャルロの背中にのり帰ってくる間もシジャル様が私に話しかけようとするとシャルロがグルグググググっと威嚇してくるので大した話もできなかった。

 家に着くと、シャルロは定位置である私の首に巻き付き、荷物を抱えるシジャル様を威嚇した。


「お帰りアルティナ」


 そうこうしているうちに兄が出迎えてくれ、私は兄にしがみつくように抱きついた。


「アルティナ?」


 不思議そうな顔の兄がシジャル様を睨み付けたのが解り、私は慌てて首を横にふった。


「ユーエン様にお話したいことがございます」


 そんな私達を見ていたシジャル様が決心したように一歩前に出たのを見て兄は私に視線をうつした。


「アルティナがどんな風に過ごしていたかも聞きたい。立ち話もなんだ。中で話そう」


 兄に案内されたのは応接室で、兄は私を横に座らせてシジャル様を向かいの席に座るように促した。


「で、話とは?」

「まず、謝らなければいけないことがありまして」


 シジャル様の一言に一気に冷たい目になる兄の腕に私はしがみついた。

 私に視線をうつしてくれたので私は優しく笑顔を作った。


「……ひとまず聞こう」


 兄の反応にシジャル様は頭を一度下げてからシジャル様のご実家の話と精霊の洞窟での話をした。

 精霊の洞窟話が終るとシジャル様が深々と頭を下げ、兄が小さくガッツポーズをしたのが見えた。


「このような事態になるとは知らず、アルティナ様にご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」

「……そうか。だが、むしろ声を出すことが出来ると解ったことを感謝させてくれ」


 兄は胡散臭い笑顔を作った。


「……いえ、ここからが本題なのですが……ユーエン様からしたらこれは裏切りだと思われても仕方がないことなのですが…………自分は、アルティナ様を愛しています。ユーエン様には信用していただいていたのに、こんな気持ちを抱くのは間違いだと解っています……ですがアルティナ様への気持ちに嘘をつくことが出来ないのです」


 シジャル様は真剣に私への愛の言葉を兄に吐露した。


「ユーエン様に嘘をつくことは出来ません。自分にアルティナ様を幸せにする権利をいただけないでしょうか?」


 兄は口元をヒクヒクさせていた。

 シジャル様から見れば兄が怒っているように見えるかも知れないが、たぶん笑いを堪えているのだと私には解る。

 シジャル様の顔色がどんどん青くなっていくのが見てとれた。

 兄は口元に拳をあて一つ咳払いをするとシジャル様に真剣に返した。


「司書長の気持ちは解った。では、アルティナとの婚姻を進めると言うことでいいんだな!」


 兄の言葉にシジャル様はかなり驚いた顔をした。


「ユーエン様、先程の話は自分のかってな気持ちを言ったまで。婚姻を早々と決めてしまうのはいかがなものなのでしょうか?」

「では、アルティナと結婚するつもりは無いと言うのか!」

「滅相もない!ですが、それは自分が幸せになるだけで、自分が相手ではアルティナ様が幸せになるのか疑問です!年齢から言っても自分は大分年上ですから」


 兄は呆れたような顔をした。


「アルティナの幸せのためなら結婚はせず身を引くと言うのか?」

「アルティナ様の幸せが一番大事ですので」


 真剣なシジャル様の顔に私がドキドキしている中、兄がため息をついた。


「司書長、貴方にはアルティナを妻に迎えてもらう。これは決定事項だ。異論は認めん」


 兄の強気な発言にシジャル様が驚いている。


「アルティナ、お前もそれでいいな!」


 私が強く頷くと、兄は柔らかく笑い私の頭を撫でてくれた。


「司書長……言っておくがな、貴方とアルティナの婚約は昨日のうちに結ばれている。そちらのご両親からの許可ももらい早々に城に提出の上受理まですんでいる。逃げられると思うなよ」

「はぁ?」


 シジャル様の間の抜けた声が部屋に響いた。


「ご両親から聞いていないのか?ずいぶん前からアルティナと婚約をしてほしいと書簡を送らせていただいていた。その返事が来たというだけのこと。司書長のことは僕も信頼しているし、アルティナも司書長がいいと言う。よってアルティナを一生かけて幸せにしてもらうことにした」


 兄が楽しそうに笑って見せるとシジャル様は座っているソファーの背もたれにゆっくりと背中を預けた。


「ユーエン様に殺される覚悟でした」

「僕はそんなことはしない。で?いつアルティナの声を戻してくれるのかな?」


 兄の言葉に私とシジャル様の顔が一気に赤く染まった。


「……アルティナの声が戻るのは嬉しいが、司書長とそういったことをしたのだと解るのは兄として複雑な気持ちではあるがな」


 兄よ!何てことを言うんだ!

 そんなことを言われたら恥ずかしくて出来なくなるじゃないか!


「まさか、もう声が出るんじゃないよな?」

 

 私は慌てて首を横にふった。


「そうか。司書長がそこまで手が早いわけないか……まあ、二人のタイミングでいいだろう」


 シャルロに邪魔されただけで、一度チャンスがありました!とは言えない雰囲気を漂わせて、兄は笑った。

 シジャル様も何だかぎこちなく笑っていた。

 こうして、私とシジャル様の婚約は無事家族からの了承もうけ、恙無く進んだのだが、声を出すための手段であるキスが何だかタイミングを逃して出来なくなってしまったのだった。

シジャル様がちょっとだけ頑張りました?

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