告白……
お待たせいたしました。
目を覚ますと、私はベッドに寝かされていた。
横を向けば、シジャル様が椅子に座り本を読んでいるのが見えた。
私は何でベッドにいるのだろう?
起きていなかった頭が覚醒して私は飛び起きた。
横にいたシジャル様が驚いているのが解る。
「アルティナ様、大丈夫ですか?」
シジャル様が心配そうに声をかけてきた。
「アルティナ様は……精霊の洞窟で倒れられて、その後、シャルロに乗って帰ってきたのです……覚えてらっしゃいますか?」
シジャル様の言葉に私は眩暈を覚えた。
覚えている。
忘れていたかったが、覚えている。
そう、私はシジャル様とキスしないといけないのだ。
…………いや、まてよ。
よくよく考えてみれば、大好きなシジャル様とキスができると言うことなんじゃ…………
いやいやいや、シジャル様になんて言ってキスしてもらうんだ?
シジャル様、キスして…………
言えるか~~!
私はそのまま頭まで布団をかぶり倒れこんだ。
「アルティナ様!」
シジャル様の心配そうな声に目元だけ出して見た。
「ウィーザが本当にすみませんでした。友人だからと油断してしまいました」
私が首を横にふるもシジャル様は見ていないようで続けた。
「自分が……自分が!絶対にアルティナ様の想い人との仲を取り持ってみせます!」
シジャル様は決意したようにそう言った。
シジャル様は全然解っていない。
私は思わず枕を掴むとシジャル様に向かって投げた。
私の投げた枕を顔面で受けるとシジャル様は困ったような顔をした。
「アルティナ様が怒るのも仕方がありません……ですが、アルティナ様は本当に美しく素敵な女性です!アルティナ様が好きだと言って拒否する男など存在しません!大丈夫です……自分が協力します」
シジャル様の言葉に私の目から涙が溢れた。
だって、シジャル様の言い分では私は眼中にないってことじゃないか!
私が好きなのはシジャル様なのに。
シジャル様はオロオロしながらポケットからハンカチを出して私の涙をふいてくれた。
その時、私の頭に浮かんだのは義理の兄であるベスタンス様の誘惑の資料の一ページだった。
私はシジャル様の胸ぐらを掴み引寄せた。
唇を奪う!
私は頑張った!
だが、シジャル様の唇には到達することはなくシジャル様に肩を掴まれはばまれた。
「アルティナ様?」
伝わらない。
私の気持ちは全然伝わらない。
「アルティナ様……そんなに可愛らし顔ばかり自分に見せないでください。先程言ったようにアルティナ様は美しく素敵な女性なのです。どんな男も恋せずにはいられない。自分も例外ではありません」
それは、私を好きになってくれると言うこと?
私はシジャル様の手をしっかりと握ると声の出ない口を動かした。
シジャル様が好き。
シジャル様が首を傾げた。
まだ伝わらない。
私はゆっくりと口を動かした。
好き。
「あの、紙とペンをお持ちしますね。このままでは、自分に都合のいい解釈をしてしまいそうなので」
シジャル様が慌てて私の手から逃れようとするのを更に手に力をこめて防ぐ。
「アルティナ様?」
私は覚悟を決めた。
私はシジャル様に気持ちが伝わるように口を動かした。
キスして下さい。
その瞬間。
シジャル様が真っ赤に染まり口をパクパクと動かした。
まるで、声の出ない私のように。
シジャル様は暫く声を出せずにいたがゆっくりと私の名を呼んだ。
「アルティナ様」
私が頷くと、シジャル様は絞り出すように小さな声で言った。
「俺のことが好きなんですか?」
その質問には自信がある。
私は大きく頷いた。
シジャル様は更に顔を赤く染め上げた。
「今、そんなことを言えばどうなるか……貴女は解っているのですか?」
私が頷くとシジャル様がそっと私の頬に手を伸ばした。
「ご存知かも知れませんが、俺も貴女が好きです。いや、愛しています」
そう言ってシジャル様の顔が近づく。
シジャル様が私を好き?
理解する前にシジャル様の顔が目の前に!
そう思ったその時、私とシジャル様の間にスッと何かが割り込んだ。
「ウギャ~~!」
その後、シジャル様の悲鳴とともにシジャル様の顔が離れて行った。
何がおきたのか解らずシジャル様を見ればシジャル様の鼻にシャルロが噛みついていた。
「いでででででででで!」
シジャル様の悲鳴に執事さんやマーサさんが駆けつけてシジャル様からシャルロを引きはなそうと奮闘していた。
その騒動のせいで私の告白もシジャル様の告白も何だかうやむやになってしまったのだった。
急展開?
何だかすみません。