新たな呪い
お楽しみいただけたら嬉しいです!
私が絶句して居るとシジャル様の目の前に透き通りそうな美しさの真っ白な雪をまとった大きな精霊が現れた。
その瞬間、私の首を撫でていた小さな女の子は消えてしまった。
もっと話を聞きたがったが仕方がない。
私は新たに出てきた美しい人を見た。
見ただけでわかる上級精霊様だ。
美しい精霊様にシジャル様が笑いかけるのを見て私の胸がズキリときしんだのが解った。
「シジャルか」
「ウィーザ久しぶりだな。今日は相談したいことがあって」
シジャル様はにこやかに笑い私に手招きをした。
私がゆっくり近づくと、精霊様が私の方に手をのばした。
何かあるのかと思い、更に近づくと手を握られた。
「落ち着く」
何だか解らず首を傾げると、シジャル様にその手をパシリと叩き落とされた。
「無闇に触るな」
「彼女は愛し子だろ?」
「愛し子?」
「我々のような人外のものが側に寄ると癒しをあたえる性質を持つ者のことだ。知ってて連れてきたんじゃ無いのか?」
私に触ろうとする精霊様からシジャル様が庇うように私の前に立った。
「ウィーザ、今日来たのは彼女の声のことで相談したかっただけだ」
「声?ああ、首に巻き付いているな呪いが」
「呪い!」
精霊様はシジャル様を押し退けると私の首もとをしげしげと見つめた。
「粘着質な呪いだな。呪いを解いてやっても良い」
「本当か?」
「ああ、その代わり愛し子よ。私の嫁に来い」
「却下だ!」
シジャル様は慌てて私と精霊様の間に立ちはだかった。
「シジャル、邪魔だぞ」
「煩い。アルティナ様は無事に家に帰すとご家族と約束しているんだ」
精霊様はフンと鼻を鳴らした。
「愛し子よ。私とシジャルのどちらを選ぶ?私ならお前の望むもの全て差し出してやるぞ」
精霊様の言葉に私はシジャル様の背中にしがみついた。
「何だつまらん。愛し子はシジャルが良いのか?私の方が美しいだろうに?」
よくよく見れば、精霊様の胸は平らで女性では無さそうだと漸く気がついた。
「声を出したいのだろ?」
精霊様はシジャル様を押し退けて、私の髪の毛を一束掴むとそれにキスを落とした。
絵になる光景に目をパチパチしていると精霊様は優しげに笑った。
「私を選びなさい」
私は苦笑いを浮かべて首を横にふった。
精霊様は美しいが、私がお嫁に行きたいのはシジャル様のもとだから。
私がそんなことを考えると、精霊様はフンとまた鼻を鳴らした。
「愛し子は趣味が悪いとみえる」
私が首を傾げると、精霊様はニヤリと口元をつり上げた。
「少しでも触れていれば、何を考えているかぐらい解る」
……と言うことは、私がシジャル様を好きで好きで愛しくて仕方がないということがバレてしまっているってこと?
「そこまでだとは知らなかった」
私は顔を両手で覆うと踞った。
「ウィーザ!アルティナ様に触るな!」
「心が狭いな。シジャルよ、愛し子は趣味が悪い。良かったな」
「なにがだ!意味が解らん」
シジャル様は呆れたようなため息を吐くと言った。
「とにかく、アルティナ様の声を治せるなら治してくれ」
精霊様は遠くを見つめてからニヤリと笑った。
「いいだろう!愛し子の呪いを解く手伝いだけしてやろう!」
精霊様はそう言うと私の首元に手をかざし、聞き取れないような呪文を唱えた。
すると、精霊様の手から青い光が出て私の首元に当ててくれた。
ひんやりとした光が私の首に吸い込まれていった。
「ウィーザ!ありがとう!さすが俺の親友!アルティナ様、どうです?」
シジャル様が嬉しそうに私の手を掴んだが、私の口から声が出ることはなかった。
「誰が治すと言った?手伝いだけと言っただろ?」
「はあ?」
シジャル様の間抜けな声が洞窟に響いた。
「愛し子が私の嫁になるなら治したが、愛し子は私の嫁は嫌だと言う。ならば、愛し子が嫁に行きたい相手との口付けで呪いが解けるように呪いをいじってやった。愛し子よ、今からでも遅くない私の嫁に来るか?」
精霊様の最後の方の言葉は私にはとどいていなかった。
だって、私が声を取り戻すには私がお嫁に行きたい人と口付けをしないといけないというのだ。
ようするに、シジャル様とキスしないといけない……
その言葉を理解した瞬間、私は意識を飛ばしその場に崩れ落ちた。
だってそうだろう?
呪いを解きに来て、新たな呪いをさずかってしまったのだから……。
こんな感じになりました。
すみません。