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王立食堂

 兄が連れてきてくれたのは城で働く人達用の食堂で、下は平民騎士から上は宰相様までがこの食堂を使うのだと兄は言った。

 興味津々に中を見渡し足を踏み入れるとさっきまでガヤガヤと煩いぐらいだった食堂は空気がはりつめたようにシーンと静まり返り驚いた。

 余所者にきびしいとはこの事か?


「ユーエン様!デートでしたらこんな小汚い所に連れてきてはダメでしょうに」


 その時、食堂の調理場から目付きの鋭いおじ様が慌てたように頭を出してそう言うと、兄は呆れたように返した。


「いや、妹とデートなどしない」

「い、妹!」

「ああ、末の妹だ。アルティナこちらはこの食堂の料理長だ」


 私は丁寧に頭を下げた。

 料理長様は慌ててコック帽をとると私に頭を下げてくれた。


「妹は今、声が出ないから挨拶は会釈ですまないな」


 兄の言葉に料理長様が唖然とするなか、兄はメニューを眺めて呟いた。


「アルティナ、何を食べる?ハンバーグ定食か?ポークジンジャー定食か?肉Aセットもあるぞ」


 兄よ……聞いているだけで胸焼けしそうですよ。


「ユーエン様、女性にそのメニューはヘビーですぜ」

「?……そうか……だからここは女性が少ないのか……」


 兄は困ったように顎を撫でた。

 私はノートに『お兄様が手伝って下さるなら何でも食べれます』と書いて見せた。


「そうか?では……」


 そんな様子を見ていた料理長様は胸を強く叩くと言った。


「ユーエン様、俺におまかせくだせい!スペシャルランチを用意いたしやす」

「だが」

「まかせてくだせい」


 兄は呆れたように一つ息を吐くと肉Aセットとスペシャルランチを頼んでくれた。

 暫く待つと、茶色い肉の山の横に大量のライスが乗り小さなスープがついたトレイとお肉の挟まったサンドイッチにサラダとスープにデザートのプリンがついたトレイが出てきて驚いた。

 兄の何処にあの量がおさまるのだろうか?

 マジックをこれから見せられるのだろうか?


「アルティナ、そんな量で足りるのか?分けてやろうか?」


 私はプルプルと首を横に降った。

 充分な量である。

 私は料理長様にもう一度頭を下げてから空いている席を探す兄を追いかけた。

 兄が見つけた席に座り兄が運んでくれたトレイを受けとると、私は手をくみお祈りをしてから兄の方を見た。

 兄は私を気にするそぶりもなく大きく口をあけて肉を頬張っている。

 私もサンドイッチを手にとると、思いきって口をあけて頬張った。

 サンドイッチは今まで食べたことのないジューシーなお肉の味が口いっぱいに広がるワイルドな味がした。

 サラダもゴマを使った濃厚なドレッシングがかかっていてる。

 スープもお野菜が沢山入っていてプリンにたどりつくまでに大分お腹が苦しい。

 まあ、デザートは別腹なので食べきったけど。

 ああ、幸せだ。

 夢中で食べていたから気が付かなかったが何故か無茶苦茶見られている。

 うそ、顔にソースとかついているのだろうか?

 慌てて兄を見ると、むしろ兄の口にソースがついている。

 兄のこんな顔見たことがない。

 なんだか微笑ましくて口元がゆるむ。

 私はハンカチを取り出すと兄の口元をぬぐってあげた。


「ああ、すまないな」


 私は首を横に振った。

 貴重な兄の姿を見れたのだ。

 なんだか得した気すらする。

 私はノートを取り出して『私の口元は大丈夫ですか?』と書いて見せた。


「ああ、大丈夫だ」


 兄はそう言って笑顔を向けてくれた。

 私は安心して、今度はノートに料理長様へのお礼の言葉を書きはじめた。

 『美味しいランチをありがとうございます。どれもとても美味しくて食べ過ぎてしまいました。幸せをありがとうございます』と書いて兄の方を見ると私が書いた文字を見て一つ頷いてくれた。

 兄がトレイの配膳をしてしてくれている間に料理長様にノートをちぎって手渡したら泣かれた。


「家宝にしやす」


 大袈裟だ。

 だが、喜んでくれたのならいいや。

 兄に連れられて料理長様に手を振ってから食堂を出るとドッと騒がしくなったのが解った。

 もしかして、私迷惑だったのだろうか?


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