マーフィス執事
長くなりそうなので、途中で切ります。
シャルロの背中に乗って三時間ほどで一度地上に下りて休憩をはさみそこから三時間ほどでシジャル様のご実家についてしまった。
休憩をはさんだ後私がウトウトしている間にシャルロがスピードを凄くあげてくれたのだとシジャル様に聞いてシャルロに感謝をこめて沢山撫でてあげた。
「家族に紹介いたしますね」
シジャル様が私の荷物を抱えてくれて、シャルロは私の首に巻き付いた。
「シャルロは自分の使い魔のはずなんですがね」
私が苦笑いを浮かべるとシジャル様も苦笑いを返してくれた。
その後、シジャル様が玄関扉を開けようとした時、扉がひとりでに開いた。
「シジャル様、お帰りなさいませ」
扉を開けたのは白髪まじりの初老の執事だったのだが、執事はシジャル様から私に視線をうつすと大きく目を見開いた。
なんだろか?怖い。
「シ、シジャル様、こちらは」
シジャル様が私を見ると執事はシジャル様のお腹目掛けて蹴りを入れようとして避けられていた。
「何処から拐って来たんです!犯罪ですよ!」
「マーフィス……アルティナ様は家に療養に来ただけだ」
私はマーフィスと呼ばれた執事に頭を下げた。
「アルティナ様、頭など下げなくて大丈夫ですよ」
私は急いでメモ帳を取り出して書いた。
『これからお世話になります。アルティナと申します。声が出せない厄介者ですが、宜しくお願いいたします』
そのメモをマーフィスさんに手渡すと、また目を見開いた。
そして、瞳をうるうるさせ始めた。
「妖精のように美しいのに声を失ってしまっているだなんて、シジャル様に何もされていませんか?」
私は慌てて首を横にふった。
『シジャル様はとてもお優しく私を労って下さいます』
「……そうですか?」
何かを疑ったような顔をするマーフィスにシジャルの口元がヒクヒクしていたのは見なかったことにした。
「アルティナ様、部屋に荷物を置いたら、家の書庫に行ってみませんか?ここにしかない本もあるんですよ!」
シジャル様が私に笑顔を向けている後ろでマーフィスさんが信じられないものでも見るような顔をしていた。
「マーフィス、部屋を用意するように連絡をいれたよな?」
「旦那様がシジャル様の横の部屋をと……」
「…………はぁ?」
シジャル様の顔がひきつったのが解った。
シジャル様のお隣の部屋とか凄く嬉しいが、シジャル様には迷惑だったのだろうか?
「親父は何を考えてるんだ?」
「旦那様はたぶん、何も考えていません」
シジャル様が長いため息を吐いた。
「アルティナ様、別の部屋を用意させますのでお待ちください」
『隣の部屋ではダメなのですか?』
私のメモを見たシジャル様はオロオロしてから息を一つ吸い込むと、ゆっくりと言った。
「自分はユーエン様からアルティナ様を頼むと言われているので」
私は首を傾げた。
『私はシジャル様の側に居られれば安心します』
私のメモを見たシジャル様は膝から崩れ落ちた。
何かダメなことをしてしまったのだろうか?
慌ててシジャル様の背中をさすった。
「シジャル様どうなさいますか?」
マーフィスさんが呆れたように聞いてきたので、私はメモを書いて渡した。
『私はシジャル様のお側が良いです』
マーフィスさんはそのメモを見るとヒクッと口元を一度引き上げてから作り物のような良い笑顔を作った。
「では、お部屋にご案内いたします。シジャル様は捨て置いていただいて結構ですので」
私はシジャル様をチラチラ見ながらマーフィスさんの後を追いかけたのだった。
まだ、ついたとこ!