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飛竜

短めかも知れません。

すみません。

 シジャル様のご実家は王都から五日ほど馬車で揺られるとつくと聞いた。

 旅行の準備は姉二人が手伝ってくれた。

 一週間はあっという間に過ぎた。

 

「お迎えに上がりました」


 お兄様がつけてくれた侍女を一人連れていこうとしたのだが、シジャル様に滞在中は屋敷にいる侍女をつけるからいらないと言われてしまい困った。

 それだと、五日間の旅の面倒をみてくれる人が居ないから不安だ。


「大丈夫ですよ!一っ飛びですから」


 シジャル様の笑顔に何故だか嫌な予感がした。


「司書長、どういうことだろうか?」

「自分の使い魔の飛竜で行けば一日もかかりません」


 兄の呆れた顔を見ながらシジャル様が私の目の前に手を差し出した。

 見れば、シジャル様の腕に羽のはえた蜥蜴が巻き付いている。

 私がマジマジと見つめるとキューっと可愛い声で鳴いた。

 指を出すと蜥蜴は自分から私の指に頭を擦り付けた。


「自分の使い魔のシャルロです。アルティナ様を気に入ったようですね」


 シャルロと呼ばれた蜥蜴はシジャル様の腕からパタパタと飛び立つと私の首もとにネックレスのように巻き付いた。


「シャルロ、アルティナ様に失礼だ。こっちにおいで」


 シジャル様が慌てて手を伸ばすが、シャルロはプイッとそっぽを向いてしまった。

 そんなところも可愛いと思い、シャルロの首元を撫でてやるとクルクルクルと可愛いく鳴いた。


「司書長、飛竜とは安全なのか?」


 兄の心配そうな顔にシジャル様は苦笑いを浮かべた。


「自分が必ずお守りいたしますのでご安心ください」


 兄は渋々了承してくれた。

 荷物の入った重たいトランクをシジャル様が軽々と持ってくれて外に出た。


「飛竜は何処に?」

 

 兄がシジャル様に聞くとシジャル様は私の方を見た。

 私が首をかしげるとシジャル様は困ったように眉を下げた。


「シャルロ、たのむよ」


 シジャル様の言葉にシャルロは私の首元から飛び立つと十メートルはありそうな大きさに姿を変えた。

 大きなシャルロも私に顔を近づけてくる。

 黒い瞳に薄い緑色の体のシャルロの顔をおっかなびっくり撫でてあげると嬉しそうに目を細めた。

 

「自分の使い魔のはずなんですがね?」


 私が笑顔を作るとシジャル様も柔らかく笑ってくれた。

 私がシャルロを撫でている間にシジャル様がシャルロの背中に私の荷物と座るための鞍のようなものをつけていた。

 そして、準備が終るとシジャル様は私を抱えてシャルロにのせて風を和らげる魔法をかけてくれた。

 この魔法のおかげで早いスピードでも呼吸が出来るようになるのだと教えてもらい、私とシジャル様は兄に手をふって旅だった。




 シャルロは私を気遣うように飛んでくれているようで、揺れや衝撃が来ないような飛び方をしてくれているらしい。


「自分だけの時なんて振り落とされるかと思うぐらい飛び方が雑なんですよ」


 シジャル様が愚痴るように教えてくれた言葉にシャルロが文句を言うようにグルルルルっと低い声で唸っていて思わず笑顔になってしまう。

 シャルロに乗っている間はメモを書くことが出来ず意思の疎通が出来ないのにシジャル様は下に湖があるとか生き物がいるとか、私が退屈しないように沢山喋ってくれた。

 シジャル様の優しさに私がどれだけ助けられているか、シジャル様は解っていないと思う。

 本当に、私はこの人が好きだ。

 私はそんなことを思いながら、シジャル様の話を聞くのだった。

シャルロがほしい。

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