お見舞い
いつもありがとうございます
(*´-`*)ゞ
司書と名のる人物からブローチを贈られ、シジャル様からで無いのであれば返そうと思い馬車に乗った。
得体の知れないドロッとした魔物がにゅるりと馬車に入ってきた時は生きた心地がしなかった。
必死で馬車を内側から叩いたことにより、従者をしてくれていたご老人がその魔物を倒してくれた……らしいのだ。
私はどれぐらいで意識を手放したのかも覚えていない。
次に目が覚めた時には自室のベッドの上だった。
横には兄と姉達が手を握っていてくれていた。
なにが起きたのか解らなかった。
「アルティナ、大丈夫か?」
兄は心配そうに聞いた。
私は何も返さなかった。
今までとは何かが違うと思った。
何かが解らずボーッとすることか増えた。
そんな時、シジャル様とクリスタ様がお見舞いに来てくれた。
シジャル様の顔を見た瞬間、何かに気がついた。
声の出し方が解らないのだ。
話そうとすると息が出来なくなるほど苦しくて涙が溢れた。
私、本当に声が出なくなってしまったんだ。
バチが当たったのだ。
もっとちゃんと兄と姉達と話をすることを選んでいたら。
喋ることをやめたりしなかったら。
……違う。
もっと早くシジャル様に好きだと伝えていたら、声なんて出なくてもよかった。
それなのに、もう私の好きって気持ちは声にはならないのだ。
自分の不甲斐なさに涙が止まらなかった。
シジャル様にすがり付いて泣いてしまったのは許して欲しい。
その後もシジャル様は毎日会いに来てくれた。
私の気持ちを軽くしてくれるような本を選び、魔法で氷の薔薇を出してくれたこともあった。
「アルティナ様、今日はチョコレートをお持ちしました」
『毎日毎日すみません』
私がメモに書いて渡すと、シジャル様はニコッと笑った。
「謝るようなことではありません。好きで来ているんですから……それとも自分が来るのは迷惑ですか?」
シジャル様は心配そうな顔をした。
私は勢いよく首を横にふった。
「良かった。迷惑だと言われたら二日に一回にしようかと思いましたが、毎日会いに来ても大丈夫ですね」
そう言って笑うシジャル様に私は泣きたくなった。
好きな人に気を使わせて申し訳ない。
『本当に声が出なくなって解りました。こんな面倒な私は、お嫁には行けないと思うのです。お兄様に迷惑ばかりかけて申し訳ないです』
いろんな人に迷惑ばかりかけて、それでも誰かに頼らなければ生きていけない自分が情けない。
私の愚痴メモを見たシジャル様は驚いた顔をした後、真剣な顔をした。
「アルティナ様、声など大したことではありません。アルティナ様は美しく聡明だ。嫁に欲しい男は星の数ほどいます」
シジャル様の慰めの言葉に苦笑いが浮かぶ。
『シジャル様はお優しいからそんなことを言って下さるのでしょ?』
「アルティナ様はご自分の魅力が微塵も解っていない」
『魅力なんてありませんわ』
私が拗ねたように書いた言葉を見るとシジャル様は私の手をペンごと掴むと言った。
「アルティナ様の魅力は自分が一番よく解っています」
一気に顔が熱くなる。
きっと真っ赤に染まってしまっているに違いない。
「アルティナ様、自分の実家に療養に行きませんか?自分も有休を使ってお供しますから」
握られた手を見詰めていた私はシジャル様に視線をうつした。
「綺麗な場所が沢山あるんです。アルティナ様に見せてさしあげたい。勿論、危険からは全て自分がお守りします」
シジャル様と旅行。
一緒に旅行に行ったら、シジャル様ともっと仲良くなれる?
『こんな私がご一緒しては迷惑では?』
「迷惑なことがありますか?ああ、家の兄はアルティナ様を自分の彼女だと思い込んでいるので結婚の挨拶に来たと勘違いされてしまうかも知れませんね……」
そんな嬉しいことなら勘違いされてもいい。
でも、そういった意味でもシジャル様の迷惑じゃ……
「いっそのこと恋人だと言ってしまいましょうか?なんて、アルティナ様のご迷惑になってしまいますね」
私は勢いよく首を横にふった。
そんな嬉しいことはない。
「そんな可愛い反応されると、自分のような人間は調子にのってしまいますよ」
シジャル様は頬をうっすら赤くさせながら呟いた。
「……恋人のフリをしますか?」
シジャル様の言葉に私は頷いた。
こんな夢のようなこと、もう二度とないかもしれない。
なら、甘えてしまおう。
一生結婚出来なくても、シジャル様と恋人のフリが出来たら幸せな記憶だけは宝物に出来る。
こうして一週間後、私はシジャル様とシジャル様の実家に旅行に行くことが決まったのだった。
『勿論、慰謝料請求いたします!』の二巻が出ることが決まりました!
皆様のおかげです‼
今、必死で書き足しています!