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王立図書館

 はじめて王立図書館に来た私の隣には心配性になってしまった兄が居る。

 と言っても、兄も王子様達の側近候補の一人だから文官の仕事があるので入口までのエスコートだ。

 ちなみに、この国の王子様は三人。

 長男で側室の子のディランダル様と妃殿下の子である次男ライアス様に三男のファル様だ。

 噂では皆様優秀だと聞く。

 このまま次男であるライアス様と婚約なんてしていたら、お家争いとかに巻き込まれていたかも知れない。

 良かった婚約の話が無くなって。


「昼に迎えにくる。一緒に昼食をとろう」


 兄は私の頭を撫でてから城の中に消えていった。

 私は城の中でも比較的入口に近い王立図書館の扉をゆっくりと開いた。

 ハッキリ言って、ここは天国じゃないだろうか?

 沢山の蔵書が自分の身長の何倍もの高さで並べられていて上の方の本は本棚に備え付けられた可動式の梯子を登ってとるようだ。

 どの本を読もうか悩んでしまう。

 私は手頃に手元にあった植物の図鑑を棚から引き出し立った状態でパラパラと図鑑をめくった。


「お嬢さん。そんなところで読むには図鑑は重いだろ?こっちに座ったらどうだい?」


 爽やかな笑顔の男の人に声をかけられて私は鞄からノートを取りだし、あらかじめ書いておいた『ありがとうございます』のページを開いて見せてから頭を下げた。

 私は、驚いた顔の彼の座っている席から二人分のスペースをあけて席に座り図鑑のページをめくった。


 


 お昼になり、そろそろ兄が迎えにくる頃だと思い本を棚に戻す。

 見れば余所者の私が珍しいのかすれ違う人にチラチラ見られている気がする。


「ねぇ、お嬢さん。俺とメシでもどう?」


 さっき席をすすめてくれた爽やかさんが私の前に立ちはだかった。

 私はノートのページに『兄が迎えに来るのでごめんなさい』と書いた。

 私が文字を書く間、彼はニコニコしながら私を見つめていた。

 

「僕の妹に何か用か?ミュルラル」

「へ?ユーエン様?えっ?妹?」


 そこに現れたのは兄だった。

 兄の顔を見た爽やかさんは顔を青くした。

 しかも、名前を呼びあっているので兄の知り合いなのだと解った。


『お兄様、この方に優しくしていただきました』


 簡単に書いて兄に見せると、兄は口元をヒクヒクさせて爽やかさんを見た。


「ひっ!」

「僕の妹に何をしたって?」

「席をすすめただけです」

「アルティナ、本当か?」


 私がコクコクと頷いた。


「アルティナ、世の中には爽やかな顔をしていても頭の中はドエロい事しか考えていないこう言う男も沢山いる。安易に近づいてはダメだ」


 えっ?そうなの?兄の後ろで首をプルプル振っている、その爽やかさんが危険人物なの?


「良いか?安易に男に近づかないと僕と約束してくれるか?」


 私はここで否定するのは後々面倒臭いと解っているから、頷いて理解したことを告げる。


「いいこだ」


 兄は最近よくする柔らかな笑顔を作った。


「誰、あれ」


 爽やかさんの方から小さな呟きが聞こえたが私は聞こえなかったことにして兄に肩を抱かれてその場を後にしたのだった。

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