妖精と怪物 クリスタ目線
ゆっくり更新ですみません。
後、アルティナちゃんの年齢を14歳に変更いたします。
16歳で反抗期はちょっとアレなので……
私の婚約者はこの国の第一王子であるディランダル様だ。
言わば私、クリスタ・ロザリオは次期王妃。
……私がそんな器で無いことぐらい承知の上だ。
騎士団長の娘で生まれた時からディランダル様の婚約者。
王妃教育の合間に屈強な男達と小さい時から剣術や体術を遊びと称して教え込まれ、王妃教育よりも武術にのめり込むダメな女。
それなのに、ディランダル様はどんどん素敵な殿方になり私はどんな淑女よりも……もしかしたらディランダル様よりも男らしく成長してしまった。
本物の淑女達は私を白百合の貴公子と呼び、男達は私を戦女神と呼んだ。
ぶっちゃけて、私はディランダル様に相応しい女にはなれていない。
むしろ、男だったら女性にモテモテだった自信すらある。
それでも、私はディランダル様が好きなのだ。
キラキラと輝く黄金の髪の毛に星をちりばめたような黄金の瞳。
才色兼備とは彼のためにある言葉。
そんなディランダル様に私は相応しくないと思い始めたのは、ディランダル様が楽しそうに話してくれたユーエン殿の一番下の妹さんのアルティナさんの話を聞いた時だった。
遠めに見たことのあるユーエン殿の妹三人。
一番上は妖艶な美人、二番目は強さを思わせる凛とした美人、三番目は可愛らしさと美しさをまぜて絞り、良いところだけを取り出したような儚げな妖精のような神秘的な美しさを持つ美人。
そんな、私が一番憧れる美しさをもった一番下の妹のアルティナさんをディランダル様が興味深そうに話していたことに絶望した。
ディランダル様との婚約を破棄しなくてはいけないのかも知れない。
そう思い王宮に行くと、偶然ディランダル様とアルティナさんが噴水の裏で話をしているのに気がついた。
行ってみて驚いた。
婚約破棄を臭わせる話をしていたからだ。
まあ、私の早とちりからの誤解であったと解った時は膝から崩れ落ちそうなほど安心した。
しかも、ディランダル様が私に笑ってほしくて私に側にいてほしくて、イチャイチャしたいほど私が好きなのだとアルティナさんが教えてくれたのだ。
考えてみれば、私は緊張からあまり笑わず、極力距離を取りイチャイチャなんて恐れ多いと思っていた。
ディランダル様も私が好きだから不安や不満を持っていたと解って、アルティナさんが居なくなった後、ディランダル様と手を繋いで中庭デートを楽しむことが出来た。
その、中庭デートの時ディランダル様が教えてくれたのだが。
アルティナさんは、私の心の兄であるシジャル兄さんのことが好きらしい。
ビックリした。
シジャル兄さんは、なんと言うか、無気力というか?恋愛なんてものに興味を持つ類いの人種では無いと思っていたからだ。
婚約者だったはずのメイデルリーナ嬢と一緒にいるところを何度も見ているが……うん。
興味が無いのが丸解りだった。
前にもっと彼女に興味を持ってはどうか?と言ったら『彼女が自分に興味が無いのに興味を持つのは大変ですね』って言って笑っていた。
まあ、メイデルリーナ嬢はどちらかと言うとシジャル兄さんが好きなんじゃなくて、自分に夢中の男が居るってことに価値を感じているタイプだったからシジャル兄さんの反応は全うに見えた。
まあ、その話も無くなったみたいだから良いんだが。
こんなにお世話になったんだ。
私がアルティナさんの力に少しでもなれたら良いと思った。
そんな私が司書長をしているシジャル兄さんに会いに王立図書館に足を運んだのはディランダル様との仲が強固なものになってから三日後のことだった。
図書館の中は静かで穏やかな時間が過ぎている雰囲気だ。
そこで見たのは、本を読むアルティナさんを穏やかに見つめるシジャル兄さんだった。
???
あんなシジャル兄さんの顔はじめて見た。
穏やかで幸せそうな緩んだ顔だ。
「シジャル兄さん」
声をかければ、いつも通りの笑顔を私にむけるシジャル兄さん。
「やあ、クリスタ。今日はどんな本をお探しかな?」
「私が本苦手なの知っているだろ?意地悪言わないでくれ」
「言葉使いの本が良いかな?とってくるよ」
シジャル兄さんがクスクス笑いながらカウンター席から立ち上がる。
意地悪だが、シジャル兄さんは私に今一番必要な本を見つける天才だから黙って従うことにする。
本を持って帰ってきたシジャル兄さんは貸し出しの手続き書を書きながら言った。
「何か相談事なのか?」
「シジャル兄さん……アルティナさんが好きなのか?」
シジャル兄さんが書いていた書類の上で文字が読めないほど変な形になっているのが見えた。
動揺が半端無い。
「……クリスタ、大人をからかうものじゃない」
「からかってなどいない。勝手にシジャル兄さんが動揺しただけだろう。それに私も子供ではない。今ならシジャル兄さんと魔物狩りをしても、数で負けるなんてこともない」
「それを引き合いに出すところがまだまだ子供なんじゃないかな?」
「……負けたのが今でも悔しいだけだ!」
何時も通りのシジャル兄さんの反応に戻ってしまった。
「アルティナさんは本当に可愛いな」
私が呟くと、シジャル兄さんは二枚目の書類もダメにしていた。
「私もあんな儚げな美人に生まれたかった」
「……アルティナ様は儚げに見えても一本芯の通った強い女性だ」
「そこに惚れたのか?」
三枚目の書類にはインクがぽたぽたと垂れて使い物にならなそうだ。
なんだ、シジャル兄さんもアルティナさんに惚れているんじゃないか。
「私はシジャル兄さんの味方だよ」
「……ありがとうクリスタ」
シジャル兄さんは苦笑いを浮かべた。
勿論、協力するさ。
私を大好きな人に導いてくれた妖精と私が唯一勝てないと思う怪物の恋だなんて、物語のようじゃないか!
この物語を私がハッピーエンドに変えてやる!
私はそう決意して四枚目の書類を書くシジャル兄さんを見つめるのだった。
読んで下さりありがとうございます
(*´-`*)ゞ