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戦いはお茶会?

読んでくださりありがとうございます!

 私がシジャル様を好きになってから気がついたのは、シジャル様が誰にでも優しいということ。

 私を助けてくれるのを除いても、司書仲間が勝手にお菓子を食べてしまっても怒らないし、ベスタンス様にからかわれても笑っている。

 シジャル様の中に怒りの感情はあるのだろうか?

 凄く疑問だ。

 それに、私以外にもシジャル様に助けてもらっている令嬢は沢山いると思う。

 私以外にシジャル様に恋心を抱いている女性だって……居るに違いないと思う。

 その事を姉二人に相談すると苦笑いを浮かべられた。

 最初に口を開いたのは、リベリー姉様だった。


「アルティナ……メイデルリーナさんを覚えているかしら」


 元シジャル様の婚約者(正式なものではない)様が何なんだ?


「ほら、メイデルリーナさんってプライドがお空の果てまで高い方でしょ?だからなのか、シジャル様を好きだと言い出す令嬢にわざわざお茶会や夜会でシジャル様は自分のことが大好きだから付け入る隙なんてないって喧嘩を売るんですって」


 リベリー姉様の言葉にラフラ姉様が眉間にシワを寄せた。


「次はアルティナに喧嘩を売ってくるに違いないわ!気を付けるのよ!」


 私は深く頷くことしか出来なかった。




 その日のお茶会は王妃様主催のお茶会で、令嬢のほとんどの人が招かれるお茶会で姉二人は始まる前からピリピリしていた。

 

「「絶対に今日、喧嘩を売ってくるに違いないわ!」」


 息ぴったりに言われて私は苦笑いを浮かべた。

 喧嘩を売られたからって、負けるつもりはない。

 シジャル様を追いかけて捕まえるって決めたんだもの!

 私は気合をいれるために胸の前でガッツポーズを作った。

 そんな私を見て、姉二人が蕩けるような笑顔をくれたのは嬉しかった。

 お茶会の前に主催者である、王妃様に挨拶に行くと王妃様は私を可哀想な子を見るように涙ぐんだ。


「まあ、いらしてくださってありがとう。声の方は大丈夫かしら?不自由は無くて?」


 私が笑顔で頷くと王妃様は困ったように笑って言った。


「本当は貴女にライアスのお嫁さんに来てほしかったのだけど……本当にごめんなさいね」


 私は慌てて首を横に振った。


「王妃様、妹は王子殿下の婚約者候補から外れて真実の愛を知ったのですわ」

「まあまあまあ!素敵!リベリー公爵夫人詳しく聞かせて!」


 リベリー姉様は夢物語でも語るように、私とシジャル様の話を始めた。


「あの頃アルティナは声を失い王子殿下との婚約の話もなくなり絶望からか前から好きだった本にのめり込むようになりました」


 興味津々の王妃様の瞳がキラキラしている。


「そんなアルティナを陰日向から護って下さったのが、シジャル司書長様です。ある時は涙にくれるアルティナの涙を優しくぬぐい」


 まあ、袖でですが。


「ある時は暴漢から身を挺して護ったのです。いつしか、アルティナはシジャル司書長様を愛しく感じるようになりました」

「まあまあまあ!」

「ですが、シジャル司書長様はいささか鈍感で……アルティナは声が出ないながらも、シジャル司書長様に振り向いてもらえるように頑張っているんですの!ですから、前に比べたら天と地ほどの差があるぐらい、生き生きとしてますのよ」


 王妃様は頬をピンク色に染めて言った。


「素晴らしいわ!アルティナ公爵令嬢!私、応援するわね!」


 王妃様の言葉に私は笑顔をむけた。


「こんな美しく可愛らしいのに司書長ったらダメね!」


 王妃様が口を尖らせた。

 可愛いのは貴女ですといって差し上げたい。


「そうだ!後で王子達も来るのだけど、貴女達のお兄様と司書長も呼びましょう!きっと、更に盛り上がるわ!ちょっと呼んできてくれる?」


 王妃様の言葉に執事様が一礼して去っていった。

 お茶会の日は、時間が無いからシジャル様に会えないと思っていたから、会えるのは嬉しい。

 私がニコニコすると、王妃様は左手で目を覆った。


「なにこの子、可愛い」


 何やら呟いていたが聞こえなかった。




 お茶会が始まると姉達の周りにはドレスの花が咲いたように令嬢達が集まってきた。

 リベリー姉様のドレスは夕焼けのようなオレンジのグラデーションのプリンセスラインのドレス、ラフラ姉様のドレスはエメラルドグリーンのマーメイドラインだ。

 私はラベンダーブルーのAラインのドレスだが、姉達のように派手ではない。

 控えめが好きだ。

 私はゆっくりと紅茶を口に運んだ。


「まあ!地味」


 その中で聞こえた悪意のある言葉にその場の空気がピリリとした。

 声の方を見ると真っ赤なAラインのドレスに金髪をツインテールに結った若草色の瞳の令嬢が立っていた。

 私の前までやってきたその令嬢は私をマジマジと見つめるとフンっと鼻を鳴らした。

 

「ごきげんよう。私、ライバラス伯爵家次女、メイデルリーナともうします」


 この人がシジャル様の婚約者だった人?見た感じ、派手な人だ。


「メイデルリーナさん、妹に何か用かしら?」


 ニコニコ笑顔のリベリー姉様が私の前に立った。


「ええ!私の幼馴染みのシジャルと仲良くされているって勘違いなさっているって聞きましたので、ご忠告に」


 ラフラ姉様の口元がヒクリと動いたのが解った。


「ほら、シジャルって私のことが大好きでしょ。私がライアス様の婚約者候補に残ったから仕方なく諦めたみたいですけど、毎日のように会いに来てくれるぐらい私のことが好きな彼が直ぐに心変わりするとは思えないですから?」


 姉達の周りにいた数人の令嬢達が眉間にシワを寄せた。


「あまりお茶会にも夜会にも出てらっしゃらないからアルティナ様はご存じないかも知れないけれど、私とシジャルが会っているところを見た人がこの中には沢山いるんですのよ」

 

 聞いていた話通りだが、面と向かって言われるのはやっぱり苦しい。

 その時、ディランダル王子と兄とシジャル様の姿が目にはいった。

 シジャル様がまだ彼女を思っていたらどうしよう。

 周りが騒がしくなったことでメイデルリーナさんがシジャル様に気が付いた。


「シジャル!」


 嬉しそうに手を振るメイデルリーナさんにシジャル様が首をかしげた。


「メイデルリーナ?自分に何か?」


 シジャル様は不思議そうに近づいてきた。


「用が無かったら呼んだらダメなの?」


 メイデルリーナさんの甘えたような声にソワソワしたような気持ちになる。


「……ダメでは?貴女はライアス殿下の婚約者候補なのですから」


 シジャル様はチラッと私を見るとニコッと笑った。


「アルティナ様もいらしたのですね。今日のドレス、落ち着いた品のよさが、アルティナ様によくお似合いですね」


 私は慌てて頭を下げた。

 嬉しい!地味だと思っていたけどシジャル様に褒められたからお気に入りのドレスに決定だ!


「ちょっとシジャル?」

「はい。なんでしょう?」

「貴方、私のドレスを褒めてくれたことなんてないじゃない!」

「…………そうでしたか?……基本メイデルリーナは自分の話はほとんど聞いていないので途中から喋った記憶すら、ないですね。すみません」


 周りの令嬢達が呆然とする中、シジャル様はニコニコそう言った。


「で、でも!毎日のように会いに来るぐらいシジャルは私のことが好きでしょ?」

「……えっと、週5で会いに行かないとメイデルリーナは泣くので仕方なく通いましたが?」


 周りの空気がどんどん冷やかなものに変わっていくのが解った。


「愛が無いと無理でしよ?」

「……愛があるのであればメイデルリーナは妹のようなものだからですよ?」


 メイデルリーナさんは目を見開いた。


「じ、じゃあ!あの女は?」


 メイデルリーナさんが私を指差した。

 失礼極まりない。


「メイデルリーナ、人に指を指すものではありません。しかも、身分だってアルティナ様の方が上です。不敬だと言われてもおかしくないですよ」


 シジャル様は真剣な顔で注意してくれた。

 メイデルリーナさんの目に涙が浮かぶ。

 私は、シジャル様の上着の裾を掴んだ。


「アルティナ様?」


 私は手元に置いていたメモに『私は大丈夫ですから』と書いて渡した。

 シジャル様はそれを見ると、困ったように笑った。


「気を使わせてしまいましたね。申し訳ございません。あっ!アルティナ様が恋愛小説ブームのようなので新しいものを何点か入荷いたしましたよ」

『では明日、借りにまいります』

「明日と言わずこの後にでもどうぞ」


 そう言ってニコッと笑うシジャル様に胸がキュンと鳴いた気がした。

長くなるので一旦切ります。

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