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親友 ベスタンス目線

読んくださりありがとうございます‼

 私の親友であるシジャルという男はハッキリ言って化け物だ。

 学生時代、誰もがライバルだと思っていた私の隣の席に座っていた彼は授業もそこそこにしか聞いていないような不真面目な男だった。

 だからこそシジャルとは戦わなくて良いのだと安心して横にいることを許した。

 いつだったか、教師が間違って出した難問が教室で話題になった。

 学年トップの私なら解けるに違いないと言われたのは嫌がらせだったのかも知れない。

 そんな私が頭を抱える問題をシジャルは解りやすく教えてくれた。

 訳がわからず自分が悩んでいた問題を全て聞いたがシジャルは難なく解き、解りやすく説明する。

 剣術も体術も魔術も人目が無いところなら手合わせをしてくれるのだが、ハッキリ言ってレベルが違う。

 シジャルが本気を出したら私は学年トップなんて無理だと解った時のショックといったら無かった。

 何故本気を出さないのか聞いたら、本を読む時間が無くなるからだとシジャルは笑った。

 シジャルの中で本を読むというのは最重要なものなのだ。

 だから、司書になれば良いとすすめた。

 シジャルもそのつもりになったようで、学生の間彼が本気を出すことは無かった。




 アルティナさんと出会ったのは彼女の姉で私の妻のリベリーに恋をし付き合うことになった時だ。

 シジャルにも相談し、参考にしろと大量の恋愛小説を読まされた後だ。

 私がはじめて恋をしたのは、リベリーとはじめて言葉をかわした王家主催の夜会。

 そこから、シジャルのよこした恋愛小説を読みまくり夜会に出まくり、リベリーと親交を深めた。

 そして、リベリーの実家であるモニキス公爵家であった夜会ではじめてアルティナさんに会った。

 アルティナさんはリベリーの九歳年下で、はじめて会った時は十三歳の少女でバルコニーの隅で月明かりの中、本を読んでいた。


「目が悪くなりますよ」

「今日は満月ですのでご心配なく」


 可愛いげの無い小娘だと思ったが、リベリーの妹だということは解っていたから、リベリーの情報を聞き出そうと話しかけ続けた。


「……あの、好きな色だとか花だとか宝石だとか好みの男性だとか、リベリー姉様に直接お聞きになったら?」

「それが出来たら君に聞いていない」

「……読書しているのが見えないのかしら?」

「勿論、読書の時に話かけるのが無粋なことなのは解っているが、夜会で読書するのも無粋なことなのでは?」


 変に頭の良い小娘で、厄介だと思った。


「『花に恋する』と言う小説のオスカール様のような方がリベリー姉様の好みの男性です。色や花や宝石はご自身でお聞きになった方がリベリー姉様はお喜びになると思います」

 

 アルティナさんはそれだけを教えてくれた。

 その小説はたしかシジャルに借りた本の中にあったから、直ぐに調べよう。

 そう思ったその時、リベリー本人がやって来て私の腕を掴んだ。

 

「ベスタンス・セリアーレ様!妹に何か?」

「えっ?いや」

「妹はまだ十三歳です。口説かれるような年齢ではございません!」


 誤解をされたのだと気がついて焦った。

 一番誤解されたくない人に誤解されたのだ。


「違います!」

「何が違うとおっしゃるの!」


 信じてもらえなそうな空気に絶望しかけたその時、呆れたような幼い声が聞こえた。


「誤解ですリベリー姉様」


 アルティナさんは泣きそうな顔のリベリーに向かって困ったような笑顔をむけた。


「そちらの方は私に興味などございません。先程からリベリー姉様の好きな色だとか花や宝石だとか私からリベリー姉様の情報を得ようと必死ですので、リベリー姉様に勘違いされては可哀想です」

「何故、君は包み隠さず話してしまうのかな?」


 そんな情けない話をされて、更に絶望しそうな私を他所にリベリーは顔を真っ赤に染めた。


「隠すようなことではないのでは?リベリー姉様も最近では貴方様の話しかなさいませんから、さっさと告白してお付き合いすれば良いのに、と馬鹿らしく思っていましたのでちょうど良かったでしょ」


 そういって笑ったアルティナさんはリベリーの妹らしく美しかった。

 その後、直ぐにリベリーに告白して今は妻にまでなっている。

 だがあの時、私の話をリベリーにばらした事はいまだに根に持っているし、妻の妹大好きの嫉妬からか会えば憎まれ口を叩いてしまう。

 そんなアルティナさんがシジャルを好きになるだなんて。

 ああ、からかい甲斐がある。

 シジャルのあの焦った顔。

 それに、リベリーが妹離れしてくれるに違いない。

 アルティナさんが突然、声を失ってからリベリーの元気がなくて困っている。

 リベリーには、常に幸せそうに笑っていてほしいのに。

 それに、親友にも少なからず幸せになってほしい。

 そのためにも、アルティナさんには頑張ってもらわないと。

 少しぐらいからかってもバチは当たらないはずだ。

 さて、次は何をしてやろうかと私はニヤリと、ほくそ笑むのだった。

『勿論、慰謝料請求いたします』を買っていただけると二巻が出るかも知れません。

買ってください。

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