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解ってない ユーエン目線

おいおい!って思わせたらごめんなさい。

 僕は決めた。

 アルティナの伴侶を司書長にすると。

 まず、話をしようと司書長に会いに行った。


「ユーエン様!」

「司書長、あの……相談があるんだが」


 僕の言葉に司書長は、パァーっと明るい笑顔を作った。

 な、なんだ?まさか、僕の言いたいことが解ったのか?


「ユーエン様、解っています。ちょっと宜しいでしょうか?」


 僕が頷くと司書長は僕をある場所に連れていった。

 その場所は騎士団の訓練所だ。

 何故こんな場所に?

 

「アルティナ様の婚約者に相応しい人間を騎士団長に見繕っていただけるように話していたのです」


 自信ありげに胸をはる司書長に僕は絶望した。

 こいつ、解ってない。


「おお!シジャル!にユーエン殿!」


 手をふる騎士団長に僕は更に絶望した。

 騎士団の中からアルティナの伴侶なんて無理だ。

 脳筋の多い騎士団の中でアルティナの事を考えて行動できる理性的な男がいるとは思えない。

 一人居たのはラフラの旦那である副団長のパルマぐらいだろ?

 頭を抱えたくなる僕をよそに、三人の男を紹介される。

 名前は覚える必要もない。

 言うなら、顔が良いがヒョロッとした男と爽やかだがゴリゴリのマッチョと強そうだが熊みたいな男の三人だ。

 皆、頭が悪そうに見えるのは気のせいか?


「義兄さんすみません。俺がついていながらこんな事になってしまって」


 後から慌てたようにラフラの旦那である副団長のパルマが走ってきた。

 

「こんなことになったなんて、ラフラに知られたら……解ってるのか?」


 小声で呟けばパルマが震え上がったのが解った。


「ラフラが帰って来るというなら僕は止めん」

「ひっ。義兄さんそんなこと言わないでください!」


 怯えたパルマは、ほっとく事にして僕は騎士団長に視線をうつした。


「騎士団長殿、この度は家のアルティナのためにお手数をお掛けしました。で、この中で一番強いのは?」

「そうだな~」


 ニコニコしながら成り行きを見守る司書長が憎らしい。


「団長、コイツらの強さを実際に見てもらうのはどうでしょう?」

「パルマ!良い考えだな!デスマッチか?」


 パルマの言葉にやる気マンマンの三人に嫌になる。


「司書長殿、司書長殿に見極めて欲しいのでまざっていただけますか?」


 パルマの言葉に司書長が首を傾げた。

 パルマは何を言ってるんだ?司書長をまぜて、もしアルティナの想い人を傷付けたなんて解ったら、ラフラの逆鱗に触れてしまうのに。


「おいおいパルマ、意味解ってんのか?」

「勿論団長が言いたいことは解ってます。俺にとってもアルティナは可愛い義妹ですから、半端なやつにはやれません」


 騎士団長はため息をつくと司書長の背中を押した。


「シジャルも行ってこい。お前が言い出したことだしな。可愛い嫁さん欲しいなら全員本気でやれよ!」

「「「了解しました」」」

「……じゃあ、近くで見極めて来ますね」


 騎士団長の言葉に乗り気には見えない司書長とやる気マンマンの三人が訓練所の真ん中に行くのを見送った。


「ユーエン殿、すまないな」

「……」


 何故、騎士団長が謝ってくるのかは解らなかった。


「パルマ、お前が嫁さん命なのは知ってたがいつのまにシスコンになったんだ?」

「煩いですね。俺は嫁さん命だから、シスコンにだってなってやるんです!」


 拗ねたように言いはなつパルマに騎士団長は苦笑いを浮かべた。

 そして、大声で開始を唱えた。

 向かい合って模擬刀を構えていた四人は一斉に飛びかかるかと思いきや、司書長だけ合図とともに後ろに引いた。

 

「シジャルのやつ客観的に相手を見極める戦術か」


 騎士団長の言葉に司書長を見ると、三人が模擬刀をふる中、司書長は三人の回りをグルリと一周回ると一気に三人に突っ込んだ。

 何がおこったのか?

 倒れる三人に不満そうな顔の司書長が立っていた。


「シジャル、騎士団に入れよ」

「汗臭いの無理なので遠慮します」


 騎士団長が司書長に向かって叫ぶと司書長はヘラヘラ笑って見せた。


「シジャルは俺の友人の辺境伯の息子なんだが、育ちのせいか強い。の、わりにあいつの親父と兄貴が怪物なせいで強い自覚がねえんだ」


 騎士団長はガハガハ笑うと僕の背中をバシバシ叩いた。


「俺はさ、うちの団員なんかよりシジャルがオススメだぞ」


 騎士団長、同意見だ。

 なんだあの強さは?

 

「パルマより強いんじゃないか?」


 僕が呟けばパルマは僕から目線をそらした。


「そう言ってくれるな。シジャルと本気でやりあったら俺だって無事じゃすまん」


 騎士団長の言葉に唖然としている間に司書長が戻ってきた。


「あの、ユーエン様すみません。期待外れでしたね。自分が、もっとアルティナ様に相応しい男性を探しますのでご安心ください!」


 意気込む司書長に僕は呆れた。

 何故自分が一番相応しいと思わないのか?


「アルティナ様には本当に幸せになってもらいたいので、微力ながらお手伝いいたしますね!」


 使命感のようなものをにじませながら司書長が言った言葉に騎士団長が、からかうように言った。


「シジャルが幸せにしてやったらどうなんだ?」


 司書長は驚いた顔をしたあと苦笑いを浮かべた。


「自分では力不足です。アルティナ様に申し訳ない。自分のようなつまらない男ではなく、アルティナ様を幸せにしてくれる男でないと」


 何故それを自分でしようとしないんだ!

 僕は呆れてため息をついた。

 仕方がない!

 外堀をガッチガチに固めよう。

 この身軽な男が、参りました!自分がアルティナ様を幸せにします!と言わざるを得ない状況に追い詰めよう。

 大丈夫だ。

 絶対に逃がしはしない。

 僕はニコニコと笑う司書長を見詰めて口元がヒクヒクしそうになるのを耐えたのだった。

これからお兄ちゃん本気出す。

たぶん。

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