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司書長様 ラフラ目線

二番目のお姉様目線です!

 アルティナの気持ちを確めたお茶会の次の日、私達はアルティナに連れられて王立図書館へやって来た。

 家族でぞろぞろ行く場所では無いと思うのだけど、お兄様はすぐに仕事行ってしまったので、さっそくアルティナの想い人を探すがカウンターには年配女性と若い女性の二人だけ。


「で?アルティナ!司書長様に挨拶はしないの?」

「どこにいるのかしら?見当たらないわね」


 アルティナは私達が純粋に本を探しに来たと思っていたらしく少しほっぺを膨らませていて可愛かった。

 アルティナは『執務室では?』と書いて見せると私達を刺繍の本の棚まで引っ張って行った。

 刺繍の棚まで来て、アルティナは固まった。

 そこには私達が探していた司書長様がいたから。

 どうやら本の返却をしているようで左手に本を沢山抱え右手で丁寧に本を棚に戻している。

 そんな司書長様は、なんだか美しく見えた。


「おや、おはようございますアルティナ様」


 アルティナはゆっくりと頭を下げた。

 その時、司書長様と目があった。


「こんなに美しい人が沢山いては、今日の図書館はいつも以上に忙しくなりそうです」


 司書長様の言葉に私と姉様は、まあ!っと嬉し声を上げた。

 だって、男性から美しいと言われて喜ばない女性は居ないと思うもの。

 それなのにアルティナはちょっと呆れたように私達を見ていた。

 司書長様は重そうな本を沢山抱えているのに汗一つかいていなかった。

 なかなか力持ちのようね。


「どうぞ、ごゆっくり。貴女様方にふさわしい本が見つかりますように」


 司書長様はそう言って本を棚に返しながら去っていった。

 前にメイデルリーナさんと一緒に居るところを見た時と全然違う爽やかな笑顔だった。

 営業スマイルってやつかしら?


「あんなに笑う方だったのね」


 姉様も同じイメージを持っているようだわ。

 それはそうね。

 私と姉様は同じ状況でしか司書長様を見ていないのだから。

 メイデルリーナさんが言ってた司書長様のイメージとも違うし、仕事をしているときの司書長様は人当たりが良さそう。

 私がそう考えていると、いつのまにかアルティナが私が昨日言っていた薔薇の品種ののった本を差し出してきた。

 分厚くて更に大きな本に驚く。

 渡されたら凄く重くて泣きたくなったわ。

 アルティナは手馴れた感じにテーブル席をすすめてくれて私は大人しく本を開くことになった。

 見れば私の横の席に姉様もとっても複雑で目眩がしそうなほど細かい刺繍の本を手渡され座らされていた。

 アルティナを怒らせてしまったのかもしれないと私と姉様はちょっとだけ反省をした。



 お昼が近くなって本から顔を上げると、姉様が若い男の人に声をかけられていた。

 昔、姉様に付きまとっていた伯爵子息だと気が付き席を立とうとしたその時、伯爵子息の腕を司書長様がつかんだのが解った。


「神聖な図書館でナンパ行為は止めてくださいませんか」

「お前には関係ないだろ!」


 逆上した伯爵子息に動揺すらしないで、ニコニコと笑顔を崩さない司書長様は軽々と伯爵子息の手を捻りあげて言った。


「図書館での問題行為は関係なくありません。ただでさえ女性の利用客は貴重なので本当に困るのですよ」


 だけど、その伯爵子息って騎士団所属だったはず。

 思った通りすぐに捻りあげていた手を体勢を変えてすり抜ける。

 早く助けを呼ばないと。

 そう思った時には伯爵子息が司書長様に向かって腰にさしていた剣を抜こうとしたのが解った


「武器ですか?では手加減は不要ですね」


 司書長様はそう言うと伯爵子息の剣を抜こうとする手を掴むと脇腹に膝蹴りをいれ素早く足を払い、倒すと言った。


「こんな狭い場所で剣を抜くのは不利ですよ。そして、本を傷つけられては困る。貴方は今後一切の図書館への立ち入りを禁止します」


 伯爵子息はすでに目を回していて聞こえているかは定かではないとおもう。

 そんなことより、鮮やかな身のこなしに驚いた。

 司書長、格好良いじゃない!

 司書長は目を回した伯爵子息を軽々とかつぎ上げるとカウンターに向かった。


「エンジェリーナ君、ちょっと騎士団に彼を捨ててくるから何かあったら呼んでください」

「シジャル様が暴れた後で何かしようとする人は絶対に出ません。さっさと捨ててきて下さい」

「あ、はい。行ってきます」


 司書長様はそのままスキップでもしそうな勢いで図書館を出ていった。

 他の司書さん達の反応が慣れきっている。

 しかも、年配の女性司書さんが近づいてきて心配そうに声をかけてくれた。


「宝石姫のお姉様。大丈夫でしたか?」

「あ、はい」

「すみませんね。たま~に要るんですよ図書館がどういう場所か解ってない脳筋が。司書長が騎士隊長様にキツ~く言い聞かせて来て下さいますからもう図書館には来られませんのでご安心を」


 私は急いで姉様に近づき手を握った。

 

「姉様、大丈夫?」

「ええ。まさか人妻になっても言いよられるとは思ってなくて怖かったのだけど…………ビックリに変わってしまったわ」


 同意見だわ。

 どうしてあんなに強い人が司書なんてしているの?

 司書長だから強いとか?

 謎だらけだわ。

 私と姉様が理解に苦しんでいると遠くの方からアルティナが走って来るのが見えた。

 どうやら、アルティナはとっても奥の方の本棚にいたみたい。

 慌てているのが解ってなんだか少し安心する。

 

「アルティナ、大丈夫よ。司書長様が助けて下さったから」


 私の言葉にアルティナは瞳に涙をためて安堵の息を吐いた。

 姉様はアルティナを安心させるように抱き締めてあげたがむしろ、安心からかアルティナの瞳から真珠のような涙がこぼれた。

 本当に私達の妹は可愛い。

 

「まあまあまあまあ!宝石姫ビックリなさったんですね!司書長が全部悪いわ!甘いものでも食べたら涙が止まるかも知れないわね!司書長の引き出しの中のマカロンをとってきましょうね」


 年配司書さんはそう言ってアルティナの頭を撫でた。

 アルティナはポロポロと涙を流しながら首を横にふった。


「たまたま、騎士団長を近くで捕まえられたので投げつけて来まし……た……!!!」


 帰ってきた司書長様がみるみる青くなったのが解った。


「ア、アルティナ様どうなさいましたか?」


 明らかにオロオロする司書長様にカウンターにいた若い女性の司書さんがニヤニヤしながら言った。


「シジャル様が暴れるから宝石姫が泣いちゃったじゃないですか~」

「!!!自分、えっ?自分のせい?あ、すみません、ごめんなさい!」


 慌てた司書長様は勢いよく頭を下げた。

 それを見てアルティナはプルプルと首を横にふった。

 司書長様は顔を上げるとポケットに手を突っ込み絶望的な顔をすると袖口でアルティナの涙を拭ってあげていた。


「ハンカチはあるのですがクシャクシャなので、ちょっと我慢してください」


 そんな司書長様の行動にアルティナはヘニャっと笑った。

 ああ、お似合いだわ。

 アルティナのあんなにゆるんだ顔を私は見たことがないもの。

 姉様を見れば私と同じことを思っている顔をしていた。

 そして、姉様も私の方を見ると苦笑いを浮かべた。

 アルティナの横には彼が一番だわ。

 なら、邪魔が入らないうちに外堀を埋めなくちゃ。

 私達の大事な妹という名の宝物ですもの、私達より幸せになってもらいたいもの。

 さあ、午後からは姉様と司書長様を捕まえる作戦会議をしなくちゃ。

 そんなことを考えていた私と姉様は同時にクスクスと笑いだしたのだった。

姉様達が一番、腹黒?

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