寝言 ユーエン目線
読んでくださりありがとうございます‼
その夜、アルティナに付けているメイドが僕の部屋に訪れた。
メイドは、うつむき言いづらそうに口を開いた。
「アルティナ様がお声を出されました」
「何!?」
急いでアルティナの部屋へ向かおうとする僕の服の裾を掴むと、メイドは首を横にふった。
「アルティナ様のお声が聞けるのは寝言だけでございます」
「何だと?」
メイドは悲しげな顔をしながら続けた。
「アルティナ様が夢にうなされてらっしゃる時に『お兄様ごめんなさいリベリー姉様ごめんなさい、ラフラ姉様ごめんなさい』と寝言をおっしゃるのです」
メイドの言葉に息がつまる思いがした。
「アルティナ様は朝には声がでないのです。無意識の時にだけ…………これが精神からの症状だということは解っております。ですが、どうにかして差し上げたいのです」
メイドは今にも泣きそうになりながらそう訴えてきた。
そんな報告をうけた次の日、アルティナを図書館に連れていきわかれた後で司書長が歩いてくるのが見えた。
「司書長殿」
「おや、ユーエン様おはようございます」
「ああ、おはよう……」
僕の歯切れの悪い挨拶に司書長は苦笑いを浮かべた。
「心配ごとでしょうか?」
「……まあ、な」
司書長はニコッと笑った。
「お時間よろしければ、中庭で散歩などいかがですか?」
その時何故、司書長についていったのかは良く解らないが、誰かにすがりたいような気がしたのかもしれない。
昨晩のメイドの話を司書長に話してしまった理由もそれだと思う。
「寝言ですか」
「ああ、寝言だ」
司書長は顎を擦りながら暫く考えると笑った。
「良かったではないですか?」
「良くないだろ!いまだに意識がある時は声が出ない。しかも、出せても寝言で僕らに謝罪なんだぞ」
司書長は足下に咲く雑草のような小さな花を摘み取ると言った。
「書物で読みましたが、人とは忘れる生き物らしいのです。どんなに声が出たとしても無人島で数ヵ月一人でいれば言葉を喋れなくなると言います。寝言でも声を出せていると言うことは、アルティナ様は声を出すことが出来ると言うことです」
司書長はまたニコニコしながら花をつんでいく。
「謝罪とはいえ無意識に声を出すほど、ご兄姉のことを思っているとは愛ですね」
「…………そうだろうか?」
司書長は手に持った紫色の小さな花を僕に差し出した。
「本当は王宮の中庭で拝借するのはどうかと思いますが、ラベンダーです。ラベンダーの香りはリラックス効果があるので悪い夢も見づらくなるのでは?」
司書長はその花を僕に押し付けると言った。
「自分、大したアドバイスは出来ないかも知れませんが話ぐらいは聞きますよ」
正直、司書長の言葉は凄くありがたかった。
その後僕は第一王子の執務室に隣接する部屋にある自分の机に行くとラベンダーを紙にくるみ鞄の中に入れた。
家に帰り、アルティナを部屋に送りとどけると僕はラベンダーを鞄から取り出してアルティナに渡した。
首をかしげるアルティナも可愛い。
「ラベンダーだ。最近、夜うなされていると聞いたから」
アルティナは本当に驚いた顔をしてからラベンダーに鼻を近づけて笑った。
「まあ、司書長がアドバイスしてくれたからなのだがな!」
僕の言葉にアルティナはキョトンとするとフニャリと笑った。
何だ、今の顔は?
さっきの嬉しそうな笑顔より何だか緩んだ笑顔だったぞ?
アルティナは僕にペコリと頭を下げて部屋の中に消えていった。
僕は暫くアルティナの部屋のドアを見つめて頭を抱えるのであった。
毎日更新出来ません。
すみません。
でも、頑張ります!