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宝石姫 シジャル目線

読んでくださりありがとうございます。

 その日、自分は婚約破棄された。

 書類こそ無いが、自分が5歳からの許嫁のメイデルリーナは伯爵家の長女で気が強くてお喋り好きで、自分は苦手なタイプ。

 見た目は可愛いと言うよりは綺麗だと思う。

 代わって、自分の家は辺境伯という位。

 普通に暮らしていると魔物との遭遇率は高いし父も兄も平然と魔物の討伐をこなすから、本ばかり読んで魔物討伐にも手こずる自分は、非力で何の取り柄もない人間だと思い込んでいた。

 貴族学園に通っている間に、父や兄が異常で自分も人並み以上の力があることに気がついた。

 気がついたところで自分には力など興味もなかったが。

 自分の興味のほとんどは本。

 物語の主人公になりきったり、膨大な知識を頭にいれることは楽しくて楽しくて学園卒業後は司書になった。

 本に囲まれて暮らしいたいと思ったからだ。

 そんな中、許嫁のメイデルリーナは自分に色々なことを強要するようになった。

 やれ服装に気を付けろだとか、姿勢を正せとか、週に五回は会いにこいだとか。

 さすがに服装や姿勢は直ぐにでも直せるが週五回会うのは無理だ。

 せめて週三回にならないか聞いたら貴方は私を愛していないと泣かれた。

 だから、ここ数年は出来るだけ時間を作り会いに行った。

 今、愛していたのか聞かれたら、義務のようなものだったと思う。

 メイデルリーナと結婚することが自分の最善なのだと思っていたのだ。

 まあ、婚約破棄されたわけだが。

 メイデルリーナは第二王子の婚約者候補に選ばれたらしい。

 このままいくと自分の存在が邪魔になると思ったメイデルリーナの父親が頭を下げに来た。

 父や兄はふざけるなと怒ったが書類があるわけでもないし、自分はとくに何の感情もなかった。

 むしろ、週に五回会いに行かなくてよくなったことの方が自分には重要だったようだ。

 それに、婚約破棄した時には既に自分は司書長という位にまで上り詰めていて、本に時間を費やせることに多大なる幸せを感じていた。

 これからは、本だけに時間を使える。

 そう思った矢先に図書館に現れたのがアルティナ様。

 アメジストの長い髪の毛に、ラベンダー色の瞳の美しい女性。

 宝石のような女性に誰もが心を奪われていくのを目の当たりにした。

 アルティナ様の手にする本は簡単な絵本から薬学図鑑まで幅広く、読んでいるときの幸せそうな顔は男性の心を掴んではなさない。

 そんな彼女と接点ができたのは、彼女の貸出書類を作るときに気がついたサインもれ。

 サインしてもらえば解決するその書類を持って、他に不備がないかを確認しながら彼女に近づき声をかけた。

 彼女の口から漏れた小さな悲鳴は可愛らしく透き通った声だった。

 彼女はぎこちない動きで自分を見ると瞳に涙をいっぱいにした。

 ああ、これはダメだ。

 こんな顔誰かに見せたら連れ拐われてしまう。

 自分は害のない人間だと解ってもらわなくてはと、顔には出さないように必死に取り繕い執務室まで連れていき事情を聞けば、彼女の声が出ないのは反抗期の一貫であって不治の病とかではないのだと知った。

 ゆっくりと声を出す姿は可愛らしい。

 こんな可愛い姿を今は自分だけが一人占めしていることが不思議でならない。

 自分に出来ることなら、彼女のためにしてあげよう。

 如何せん、自分は人のいいなりになりすぎた。

 それにひきかえ彼女は、正解かは解らないが足掻いているのだ。

 彼女は自分のために出来ることを頑張っているのだ。

 だからこそ、彼女の力になりたいと思った。

 彼女は自分が味方だと思ってくれたのだと思う。

 自分は彼女のフォローのために今までで一番声を出している。

 声を出さない彼女の代わりに、自分が声を出している矛盾に可笑しくなる。

 不思議なことに彼女が側に居ても気にならない。

 穏やかな時間に溶け込む彼女はむしろ眺めていたい。

 こんな気持ちは、はじめてだ。

 彼女の時間を邪魔するやつは自分の出来る限りで排除しよう。

 魔物を倒すよりは簡単なはずだ。

 自分はそんなことを考えながら執務室で本を読む彼女を見つめて、ほくそ笑むのだった。

いつもありがとうございます!

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