私の兄と姉
いつもお世話になっています。
私の作品を読んだことのある人も読んだことの無い人もお付き合いいただけると嬉しいです!
見切り発車いたしま~す。
私には顔がよく頭の固い兄が一人と、美人で頭の弱い姉が二人居る。
要するに、4兄妹である。
兄は王子の側近候補とまで言われる優秀な人間で公爵家に嫁いだ長女と侯爵家に嫁いだ次女は社交界の宝石と言われる貴族女性達のカリスマであった。
そんな兄妹の中末っ子の私はというと、常に図書館に入り浸りの本の虫で、社交界に出ることを嫌い知識を頭に詰め込みたい変わり者。
「女性は女性らしくマナーやファッションの勉強をしなさい」
兄にはよく、そう言われた。
「貴女もちゃんと夜会に出て素敵な旦那様を見つけなくちゃ! そうね~~おすすめな殿方は……」
「アルティナに似合いそうなドレスを見つけたのよ! どう?パステルピンクにフリフリのドレス! 今、流行っているのよ!」
姉二人の価値観を押し付けられる毎日に私はうんざりしていた。
理想の女性像を押し付けてくる兄にも、興味の無い話を永遠(延々)喋り続ける姉二人にもうんざりなのだ。
そんなある日、私に婚約の話が上がった。
相手はなんとこの国の第二王子。
「お兄様、私に婚約なんて無理です。しかも、王子様だなんて……悪い冗談にしか聞こえません」
「これ以上の相手など二度と見つかるわけが無いのだ。アルティナこそ、わがままばかり言っていないで僕の言うことを聞きなさい」
兄にケンカを売り、肩を掴まれた私はそれを振りはらおうとして体勢を崩し転んだ。
勢いそのままに頭を床にぶつけて気絶してしまったのは予想外だった。
遠くで兄の焦った声が聞こえた気がした。
目が覚めると心配そうに私の手を握る兄と涙をいっぱいにした姉二人が私を覗きこんでいた。
「アルティナ。僕が解るか?僕のせいですまなかった」
謝る兄に首を横にふる私。
「アルティナ、痛いところはな~い?」
「アルティナ、喉は渇いてな~い?」
心配そうな姉二人にも首を横に振って見せた。
若干たんこぶが出来ている気がするが我慢できないほどではない。
私は口を開き喉をおさえた。
兄と姉二人が、首をかしげた。
私は首をおさえたまま、口をパクパクと動かした。
「アルティナ、お前まさか、声が出ないのか?」
兄は絶望を顔に張り付けて呟いた。
耳を塞ぎたくなる姉二人の悲鳴が部屋に響き渡る。
直ぐに医者が呼ばれ色々な検査をされたが一向に声は出ない…………。
いや、だって出すつもりが無いのだ。
私の話なんか聞く耳を持たない兄と姉。
なら、会話する意味がない。
だから私は、本を読むだけの生活のために声を出さないと、決めたのだった。
リハビリ作品になります。
宜しくお願いいたします。