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第1話 ナルとメル、学校に行く

 ポータルズの外伝です。

史郎とルルの娘、ナルの視点で書いています。

本編同様、のんびり仕様です。

挿絵(By みてみん)

 イラストは、おとめさんの作品です。


 いつものように、朝起きると、妹のメルと二人で部屋の隅にある大きな穴の前に行くの。

これは私たちのパーパが作ってくれた滑り台で、この三階からマンマがいる一階まで降りられるんだよ。


 この家は、家族のためにパーパが魔法で建ててくれたの。

すごいでしょ。屋上にはお花畑やお風呂もあるんだよ。


 いつものように、パーパが教えてくれた「じゃんけん」をする。


「「最初はブー、じゃんけんポン」」


 本当は、「最初はグー」らしいんだけど、メルが一度「ブー」って間違えた時、パーパがすごく笑ったから、いつも「ブー」って言ってるんだよ。


「ああ、負けちゃった」


 私は、チョキを出してメルに負けたの。

 本当は、メルは最初にグーしか出さないんだけど、私はお姉ちゃんだから、2回に1回は負けてあげるんだよ。


「じゅあ、メルからねー」


 メルがぴょんと滑り台のトンネルに飛びこむ。


「「「わー!」」」


 メルのすべる声がこだまして聞こえてくるの。


「「「お姉ちゃん、もういいよー」」」


 メルの合図で私も滑り台に入るの。

 パイプの様になった滑り台は、家の外をぐるりと回って一階まで降りるんだよ。

 上手に滑ったら、すごくスピードが出るんだから。


 「わー!」 いつものように気持ちよくシャーって、トンネルの中を進むの。

  突然辺りが明るくなって、ポーンと体が弾むのよ。


 これは、滑り台の出口にパーパが置いてくれたクッション。

この緑のクッションは、コケットっていうベッドにも使ってあるんだけど、ふわふわで、とっても気持ちいいんだよ。

 ウチに来た友達は、いつもこの滑り台をうらやましがるの。


 でも、実は私も、前から友達のことがうらやましいって思ってるの。

 それはね、なぜかというと「学校」。


 私と背が同じくらいの友達は、みんな学校に行ってるのに、私とメルはなぜかまだ行ってないの。

 パーパやマンマにどうしてって聞いたことがあるけど、二人が困った顔をするから、それからは聞いてないんだ。


  あ、この匂いは、パーパの朝ご飯ね。

  二人は得意料理が違うから、匂いでどちらの料理か分かるんだよ。


 ◇


 「お早う、ナル、メル」


 パーパが穏やかなお顔で挨拶してくれるの。

 友達は、あまりかっこよくないねって言うけど、私はパーパのこのお顔が大好きなんだよ。

 だって、見てるだけで、心がホカホカするんだもん。


「お早う。

 二人とも、お顔を洗ってきなさい」


 マンマは、凄く綺麗なの。

 でもお行儀にはとてもうるさいんだよ。

 メルなんか、しょっちゅう叱られてるんだから。


 そうそう、マンマにくっついていると、なんかフワ~っていい気持になるんだよー。

 ほら、さっそくメルがくっついてる。

 わたしもくっついちゃおう。

 しばらくマンマにくっつくと、すごく元気が出るから不思議なんだ。


「さあ、お顔を洗ってきてね」


 私とメルは、水の「まどーぐ」が置いてあるお部屋に行って、それで顔を洗うの。

 最初は上手く洗えなかったけれど、マンマが教えてくれて今は一人でも洗えるよ。


 メルはときどき、てきとーに洗ってるけど、なぜだかマンマにばれちゃうんだよね。

 だから、最近は、きちんと洗ってるわね。


「おや、二人とも、きちんとお顔が洗えたみたいだね」


 私達の頭を撫でてくれているのは、「じーじ」なの。

 私もメルもじーじが大好き。だっていろんな楽しい遊びを教えてくれるもの。

 じーじは凄く有名な「ぼーけんしゃ」だって、キツネのおじちゃんが言ってた。

 ウチはパーパもマンマも「ぼーけんしゃ」なんだよ。すごいでしょ。


 ああ、そうそう。

 私とメルもパーパ達と一緒に「ぼーけん」したことがあるんだよ。

 すごく楽しかったなー。

 また、行きたいなー。


 ポータルっていう黒い穴に入る時が、ちょっとだけ怖いけどね。


 ◇


 あっ、今日は「まくじー」が来てる。


 まくじーは、本当は「マック」という名前だけど、じーじやパーパの友達みたい。

 だからよくウチに来て、一緒にご飯を食べるんだよ。

 すっごく大きいんだから。

 前に「ぼーけん」の途中で会った、熊のおじちゃんくらい大きいんだよ。


 ウチは、いつも家族全員で食事するの。

 お姉ちゃんたちも一緒だよ。 

 だから、いつだったか、パーパが長いこと「ぼーけん」でいなかったときは、悲しかったなあ。


「「いただきまーす」」


 ウチはいつもこの合図で食事が始まるの。パーパの世界で使ってる言葉なんだって。


 あ、今日もミルクがある。私もメルもミルクが大好きだから、ミルクが無いと、とっても残念なんだよ。

 嵐の時なんかは、ミルクが買えないからすごく悲しかったの。

 でも、今は、パーパが魔法の箱からいつでもミルクを出してくれるから大丈夫。


「ナル、メル、食べ終わったかな?」


「うん」


「今日は、パーパから大事な話があるよ」


 なんだろう。前にパーパがそう言ったときは、「ぼーけん」に行っちゃったんだよね。

 メルが悲しそうな顔をしているから、きっと私も同じ顔だと思う。

 私は何か怖くて目をぎゅっとつぶったの。


「ナル、メル、学校に行ってみない?」


 えっ!?


「二人が嫌なら行かなくてもいいんだからね」


 私は驚いて、すぐに声が出なかったの。

 でも、メルは違ったみたい。


「学校いくー!」


 すぐに答えたの。それで、私もやっと声が出せたわ。


「学校に行きたい!」


 皆がニコニコしているから、私達の答えで良かったみたいね。


 でも、学校っていったいどんなところかしら?


 ◇


 朝ご飯のあと、マンマがお皿を洗うのを私とメルで手伝ったの。

 これはいつものことだから、もうお皿を割らなくなったよ。


 そのあと、初めて見る服をマンマが着せてくれて、お出かけすることになったの。

 私は緑のワンピース、メルはピンクのワンピースね。

 胸の所についてる飾りは「ボーケン」の時にキツネの人たちが住んでる町で自分で選んだんだよ。

 あの時は、たしか、じーじが買ってくれたんだっけ。


 ときどき、メルの服がいいなって思うこともあるけど、私は目の色が緑だから、緑の服が似あうってパーパが言ってた。


 私がパーパ、メルがマンマと手をつないで町を歩いたの。

 私たちは、ウチからあまり出ないから、こうやって町を歩くととっても楽しい。


 みんながこっちを見てるわ。なぜだろう。

 みんなの髪が茶色いのに私とメルの髪が白いからかな。

 パーパの髪なんか黒いんだよ。いつも茶色い布で隠してるけど。


 ◇


 うわー、大っきな建物だなー。

 前にお城に行ったときはもっと大きかったけど。


「ナル、メル、これが学校だよ」


 えっ!? 学校って、こんなに大きいの?


 学校の門が開いて、優しそうな女の人が出てきたの。

 ウチで働いているニーナさんと同じくらいかな。

 ニーナさんが五十才だから、そのくらいかも。


「シロー様ですね。

 女王陛下からうかがっております。

 どうぞこちらへ」


 シローっていうのはパーパの名前だよ。

 女王って、パーパのお友達っていうお姉ちゃんの事だね。

 二人は「ちきゅー」っていう世界から、この世界にやってきたんだって。


 私たち四人は、女の人と一緒に、大きな建物に入っていったの。



 ポータルズの外伝二作目です。

時期的には第8シーズンの初めになります。


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