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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

SANTA ―聖なる夜に―

作者: 稲生景

―海外、某所。


「ぎゃあああああああ⁉」


銃声と共に叫び声が響く。


「畜生っ! 撃てぇ!」


バァンバァン!


男達が市街地で銃撃戦を行っていた!


バァン!


「ぎゃあああああああああ⁉」


「畜生! 化け物め!」


「テメェラたった一人に何やってんだ! 数ではこっちが勝ってんだ、撃って撃って撃ち続けろ!」


バァン、バァン!


再び銃声が市街地に鳴り響く! 男達が相手にしているのはたった一人だ、しかしその男によって既に半数が殺られた。


バァン!


「があああああああ⁉」


男によって一人、また一人と撃ち殺されていく。


「畜生…畜生が!」


「ボス、教えてください、俺達は今…何と戦っているんですか⁉」


ボスと呼ばれた男は敵の正体を言わない。いや、知らないのだ。


彼自身、ある組織に依頼され、男の抹殺を頼まれただけだったからだ。


ボスは頭を抱える、こんなはずではなかった…たった一人殺せばいい、楽な仕事のはずだった…なのに蓋を開ければ殺されそうになっているのは自分だ、一体あの男は何者なんだ⁉ 


ボスがそう思った時、背後から声が聞こえた。


「俺が何なのかって?」


気がつくと自分の後ろに男が立っていた。


ボスは銃を構えるがその手は震えていた。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!」


バァン!


逃走を計った部下はそのまま撃ち殺された。


そして、銃口は今ボスに向けられている。


「お、お前は一体…何者なんだ…」


ボスが震えながら喋ると、男は煙草片手にその質問に答えた。


「俺か? 俺はな…」
















―日本、某所。


「はぁ…」


とある家に、一人の少女がため息をついていた。


少女はクリスマスが嫌いだった。


両親は共働きで仕事が多忙であまり家に帰ってこず、少女はクリスマスに家族と一緒に過ごしたことは一度もなかった。


今日はクリスマスイブ、両親はいつも通り仕事だ、…恐らく明日のクリスマスにも帰っては来ないだろう。


「クリスマス何て、大嫌いよ…」


少女が寝るために布団に入ろとしたその時だった。



シャンシャンシャンシャン♪



「?」


ジングルベル♪ ジングルベル♪ 鈴が鳴る♪


今日は楽しいクリスマス♪ ヘイ♪


突然部屋にクリスマスソングが聞こえてきた。


少女は周りを見渡す。


ジングルべル♪ ジングルベル♪ 鈴が鳴る♪


「な、何…?」


今日は楽しいクリスマス♪


「セィィィィィィィィィィィッ!!」


バリリィィィンッ!!


「きゃああああああ⁉」



突然何者かが窓ガラスを割り入って来た!


「ふぅぅぅぅぅ…」


「な、なな…」


入ってきたのは30代前半程の男だった。


真っ赤な服と帽子を着、真っ白な布袋を背負っていた。


「だ、誰ですかあなた⁉」


「ああ?」


男は煙草に火を付けて吸い始めた。


「…俺が誰かだって? んなもん見りゃあわかんだろうが…」


男は少女を見てこう言った。


「ふぅー…SANTAだよ」


「さ、サンタ?」


「違う…SANTAだ」


どう違うの⁉


少女はそう思った。


SANTAは煙草を吸いながらこっちに近づいてくる。


「俺は嬢ちゃんにプレゼントを届けに来たSANTAだ」


「ああ…わざわざ海外からここまで来てやったんだ、感謝しやがれ」


「ちょっと待って⁉ プレゼントをワタシに来たって…そもそもサンタ何て架空の人物でしょ⁉」


「あぁ? 目の前に本物のSANTAがいるのに信じられねぇのか?」


信じられないから聞いてるんですけど⁉


と少女は心の中でツッコミを入れた。


「安心しな…今どきのガキが欲しがるもんは大体分かってるからよ…あれだろ? PS何とかっつうゲームが今流行ってんだろ? 用意してるからよ…お、あったあった」


SANTAが袋からゲーム機を取り出し、少女に渡す。


「ほれ、PS3」


一文字惜しい! 何でPS3⁉ そこは最新のPS4でしょ⁉


と少女はそう思った。


「え、えーと…」


「…ふっ、安心しな、冗談だよ」


SANTAはPS3をへし折って投げ捨てた。


「お前へのプレゼントは…ん?」


シャンシャンシャンシャン♪


「え、何、今度は何なの⁉」


再びクリスマスソングが聞こえてきた。


ジングルベール♪ジングルベール♪ 鈴が鳴る♪


今日は楽しいクリスマス♪ ヘイ♪


「ちっ…嗅ぎ付けてきやがったか」


「ど、どういう事なの?」


ジングルベール♪ジングルベール♪ 鈴が鳴る♪


今日は楽しいクリスマス♪


「ヒャッハァァァァァァァァァァァッ!」


バリィィィン!!


「きゃああああああ⁉ また⁉」


割れていなかった方の窓を突き破り何かが飛びこんできた!


「ひひひひ…」


入って来たのは革ジャケットに肩パッドという世紀末ファッションのモヒカンの男だった!


「ヒャッハァァァァァ! 見つけたぜSANTAぁっ! ここがお前の墓場だ」


バァン!


SANTAが銃でモヒカン男の頭に弾を撃ち込んだ!


頭を撃たれたモヒカン男はそのまま地面に倒れた。


「メリークリスマスだこの野郎」


「殺したぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」


少女が叫び声をを上げた。


「安心しろ…峰打ちだ」


峰打ちって、銃に峰打ちなんてあるの⁉


少女がそう思ったその時。


バババババババババババ!


部屋に大量の銃弾が撃ち込まれた!


「嬢ちゃん、伏せろ!」


「きゃああああああ⁉」


SANTAと少女は床に伏せて弾丸を避ける!


銃弾によって部屋が穴だらけになり、壁が崩れ落ちた。


銃弾の雨が止むと外から声が聞こえてきた。


「ヒャッハァァァァァ!! SANTAぁっ! 今日こそは貴様の息の根を止めてやるぜぇぇぇぇ!」


外にはモヒカンとスキンヘッドの世紀末ファッション軍団が世紀末風バイクに乗って現れた!


「ったく、お前らクリスマスイブに一人の男を殺しに来るなんて暇人にも程があるんじゃねえか? もっと他の事に時間使えよ!」


「うるせぇ! 俺達は貴様を殺すのに忙しいんだよ!」


「それが暇だって言ってんだよ!」


バァン! バァン!


その言葉と同時にSANTAが銃を撃った!


「ぎゃあー!」


「がぁぁっ!」


「くそっ! 殺せぇ!」


世紀末軍団がSANTAに向けて銃を乱射する!!


「ちぃっ!」


銃弾の雨を避けながら、SANTAはベットに隠れる。


「嬢ちゃん! お前はどこかに隠れてろ!」


「は、はい!」


SANTAの言葉を聞き、少女は押入れの中に隠れた。


「さぁて」


SANTAがにやりと笑いながら袋を漁り始めた。


「テメェラにプレゼントだ!」


そう言うとSANTAは袋から取り出した手榴弾のピンを引き抜き、世紀末軍団に投げた!


ドカァァァァァァァァァン!!


「ぎゃあああああああああああああ⁉」


手榴弾が爆発し、モヒカン軍団が吹き飛ぶ!


「くそがぁ! 撃って撃って撃ちまくれぇ!」


爆発から逃れたスキンヘッド軍団がマシンガンを撃ちまくる!


「へっ! どこ狙ってんだへたくそ共!」


SANTAが再び袋を漁る。


「追加のプレゼントだ! 喰らいやがれ!」


そう言うとSANTAは袋から取り出したロケットランチャーを構え、スキンヘッド軍団に向けて撃ち込んだ!


「ぐああああああああああああああ⁉」


もろにロケットランチャーを喰らったスキンヘッド軍団は爆風で乗っていたバイクもろとも空に吹き飛んだ!


「嬢ちゃん! 今のうちに逃げるぞ!」


SANTAが少女を押入れからだした。


「な、何で私も⁉」


「あの馬鹿共の事だ、お前を俺の知り合いだと勘違いしてお前を人質にするかもしれねぇ、俺と行動した方が安全だ、だからついて来い」


「ちょ、逃げるってどこに⁉」


「そう言うのは後回しだ! ほら靴だ」


そう言ってSANTAが袋から靴を取り出し少女に渡した。


「…その袋どうなってるの?」


「ん? SANTA袋の事か?」


「SANTA袋って何⁉」


「んなことは後で話すからさっさと来い!」















―某所、高速道路。


SANTAと少女は車で高速道路を移動していた。


「…おじさん」


「SANTAさんだ」


「サンタさん、その…サンタなら普通トナカイじゃないの? 何で車?」


「SANTAだっつってんだろうが…トナカイなら車検に入れてる」


「車検⁉ トナカイって車検入れるの⁉」


「本来ならトナカイで一気に奴らを潰したい所なんだが…よりによって今日が車検の期限ギリギリでなぁ…」


「…サンタも大変なんだね」


「SANTAだ」


「SANTAさん、SANTAさんは何でそんなにSANTAにこだわるの?」


「……長くなるがいいか?」


「うん」


「あれはまだ俺がガキだった頃の話だ…」
















―数十年前、海外、某雪山。


あの頃の俺はまだSANTAでも何でもない十代のガキだった。


「ダディ」


「ジュニアか、どうしたんだ?」


「俺、いつになったらSANTAになれるんだ?」


「はははは、ジュニアよ、そう焦るな、来たるべき時が来ればお前にSANTAの称号をやろう」


「その来たるべき時っていつなんだ?」


「それは秘密だ」


「何で?」


「ジュニアよ、考えるな、感じるのだ、そうすれば分かる」


「…うん、わかった」


「はははは、それでこそ儂の息子だ」


…俺のダディはSANTAだった。


SANTA業界でも屈指の実力者として仲間からも慕われていて、男手一つで俺を育ててくれた、最高のダディだった。


ダディからはSANTAになるための全てを教えられた。


銃火器の使い方、火薬の調合法、トナカイとの戦い方、子供たちを笑顔にする方法…その全てを。


ダディの教えは厳しかったが、とても楽しかった。


俺も、早くSANTAになって、ダディと肩を並べてクリスマスプレゼントを配るんだ。


それが当時の俺の夢だった。




…しかしその夢は叶わぬ夢になってしまった。


ある日の夜、ダディが血だらけで帰って来た。


「ダ、ダディ⁉」


「ごはっ! …じ、ジュニア…」


「ダディ! 大丈夫か⁉ 今手当を…」


俺がダディの手当てをしようとしたその時だ。


外から大きな爆音が聞こえると同時に玄関が破壊され、家の前に大量のモヒカン&スキンヘッドが現れたんだ。


「ヒャッハァァァァァァァッ!! 追い詰めたぜSANTAぁっ! 今日こそ貴様の息の根を止めてやるぜぇ!」


「もう追いついてきたか…ジュニア、地下室に隠れているんだ」


「でもダディ、その怪我じゃ!」


「安心しろ…夜が明ける頃には全て終わっている…早く隠れるんだ!」


俺はダディの言葉を聞いて家の地下にある部屋に隠れた。


俺はそのまま夜が明けるまでじっとしていた。


上では大量の銃声と爆発音が鳴り響いていた。


地下室に隠れて数時間が経過した頃、上で鳴り響いていた銃声と爆発音が聞こえなくなり、静かになった。


俺は地下室を出て外を見た。


そこで俺が見たのは、それは地面に倒れているモヒカン&スキンヘッド軍団とその中心で倒れているダディの姿だった。


「ダディ!」


俺はダディの元に駆けつけた。


「ジュニア…」


「ダディ、酷い傷だ…早く手当てしないと」


「ジュニア…もういい、儂はもう駄目だ…」


「何言ってんだよダディ! ダディは最高のSANTAなんだろ? こんな所で死なないよね?」


「…最高のSANTA、か…ジュニア、儂は歳を取り過ぎた…もうSANTAとして生きるのは限界だと思っていた…だから今回の仕事でSANTAを辞めようと考えていたんだ…」


「そんな…嘘だ、俺は、俺はSANTAになってダディと一緒にプレゼントを配るんだって、そう思ってたのに…」


俺の眼から涙が零れた。


ダディが死ぬ、そんな事一度も考えた事は無かった。


それが今突然そんな事になって、俺は何も考えられなくなった。


そんな俺の頭を、ダディが優しく撫でてくれた。


「ジュニア…前にお前がいつSANTAになれるのかと言った時、儂が言った言葉を、憶えているか?」


「…『来たるべき時がくればお前にSANTAの称号をやろう』?」


「そうだ、そしてその時は来た」


ダディは自分の頭に被っているSANTA帽を俺に被せ、笑顔でこう言った。


「おめでとう、今日からお前はSANTAだ…いいかジュニア、これからはSANTAとして世界中の子供たちの笑顔のために、精進するんだぞ…」


「ダディ⁉ ダディィィィィィィ!!!」


その言葉を最後に、ダディは死んだ。

















「―その時から、俺はSANTAとして生き、ダディの言葉通り世界中の子供たちにプレゼントを配り笑顔を守って来たんだ…」


「…そうなんだ」


「ああ、だからクリスマスイブの今日、笑っていない子供達を笑顔にしに来たんだが…奴らが俺の居場所を嗅ぎつけやがった」


「さっきの変な頭とハゲの連中だよね、…あいつら一体何なの?」


「奴らは『悪い子』だ」


「わ、悪い子?」


「クリスマスプレゼントを貰えなかった悪い子供がSANTAを恨み続けることによって、モヒカンとスキンヘッドになった存在だ」


「え、つまりSANTAを信じないで悪いことばっかりしてるとああなるの⁉ 嘘でしょ⁉」


「本当だ、お前も気よ付けろよ」


絶対に悪い事はしないでいよう。


少女はそう心に誓った。



…パラリラパラリラパラリラパラリラ♪



その時、後方からから音が聞こえてきた。


SANTAがバックミラーで後ろを見ると、後ろから悪い子達がバイクでこちらに向かって来ていた!


「ヒャッハァァァァァァ!! 見つけたぜSANTAぁ! 今度こそあの世に送ってやるぜぇ!」


「ちぃっ、奴ら追いついてきやがったか! 嬢ちゃん、スピードあげるからしっかり掴まってろよ!」


そう言うとSANTAは車のスピードを上げ、猛スピードで高速道路を走り出した!


「逃がすかぁっ! 追えぇぇっ!」


悪い子達もスピードを上げてSANTA達を追いかける!


「ヒャッハァァァァァァ! 喰らいやがれぇッ!」


悪い子達がSANTAの車目掛けてマシンガンを撃ちまくる!


「くそったれがぁ!」


SANTAは見事な運転操作で弾丸を全て避けた!


「ヒャッハァァァァァァ! マシンガンは避けられても、こいつは避けられるかなぁ!」


そう言うと先頭に居るモヒカンの悪い子がロケットランチャーを取り出した!


「喰らいやがれぇぇぇぇぇぇ!」


悪い子がロケットランチャーを車目掛けて撃ちだした!


「くそっ! 嬢ちゃん! 伏せろ!」


ドカァァァァァァァァァァン!!!


ロケットランチャーは地面に命中して爆発し、その衝撃でSANTA達の車は宙に飛んだ!


「きゃあああああああああ⁉」


「畜生! 嬢ちゃん、脱出するぞ!」


「えっ、ちょっ⁉」


SANTAが少女を担ぎ、宙を舞う車から飛び出した!


「何ぃっ⁉」


そのままSANTAはSANTA袋から拳銃を取り出し、悪い子達目掛けて撃ちだした!


「ぐぇぇっ⁉」


「ぎゃあああ⁉」


SANTAは地面に着地し、少女を地面に降ろした。


その瞬間宙を舞っていた車が地面に落ちた。


「嬢ちゃん! 車の影に隠れてろ!」


SANTAの言葉を聞き、少女が車の影に隠れる。


「全くしつけぇ奴らだぜ、そのしつこさをもっと別の事に活かせよなぁ、彼女を作るとかよぉ!」


「うるせぇっ! 撃ちまくれぇっ!」


悪い子達がSANTA目掛けてマシンガンを撃ちまくる!


SANTAは銃弾の雨を難なく回避する!


「そんな弾当たらねぇよ!」


SANTAはSANTA袋から拳銃をもう一丁取り出した!


「さぁて、何処を撃ち抜かれたい? 5秒以内ならリクエストに応えてやるぜ」


「ふ、ふざけるなぁぁっ!! 撃ち殺せぇっ!」


悪い子達がマシンガンを撃ちまくるが、一発もSANTAには当たらない。


「残念だが…時間切れだ!」


その言葉と同時に、SANTAが悪い子達を撃つ!


「ぎゃあああ⁉」


「ぐぎぇぇぇぇ⁉」


「うがぁぁ⁉」


SANTAの撃ちだした銃弾を受け、悪い子達が倒れていく。


カチッ、カチッ!


SANTAの拳銃の弾が切れた。


「今だぁっ! 撃ち殺せぇっ!」


弾切れになった隙をついて、悪い子達がSANTA目掛けて撃ちまくる!


「当たらねぇって言ってるだろうが!」


「うげぇっ⁉」


「ごがぁっ⁉」


SANTAは弾切れになった拳銃を悪い子目掛けてぶん投げ、SANTA袋から手榴弾を二つ取り出した!


「メリークリスマスだ!」


SANTAが手榴弾のピンを抜き、悪い子達に投げつけた!


ドカァァァァァァァァァァァン!!


「ぎゃぁあああああああああああああ⁉」


手榴弾が爆発し、悪い子達が爆風で宙を舞った。


「ある程度は片付いたな、さっさと終わらせてやるぜ」


「きゃあああああああああ⁉」


SANTAがそう言った時、後ろから少女の悲鳴が聞こえた!


SANTAが後ろを振り向くと、少女が悪い子に捕まっていた!


「何するのよ、離して!」


「うるせぇっ! 大人しくしろこのガキが!」


悪い子が少女を抱えてバイクに乗った。


「嬢ちゃん!」


「SANTAぁっ! このガキを返して欲しけりゃここから東にある港まで来やがれぇ! ヒャッハァァァァァァ!」


悪い子がバイクを走らせ、SANTAから離れていく。


「待ちやがれ!」


「どこ見てんだぁっ! 死ねぇぇぇぇっ!」


SANTAがバイクで逃走する悪い子を追いかけようとするが、前方から悪い子達がマシンガンを撃ちSANTAを妨害する!


「チィッ!」


「ヒャッハァァァァァァ! 死ねぇぇぇぇぇぇっ!!!」


悪い子達がバイクでSANTAに突撃してくる!


「邪魔するんじゃねぇ!」


SANTAはSANTA袋から新しい拳銃を取り出し、悪い子達を蹴散らしていく!


















―某所、港。


「離して、離してよ!」


椅子に縛られている少女が暴れている。


「うるせぇっ! 少しは静かに出来ねぇのかこのガキ!」


「静かにしねぇと頭に銃弾をプレゼントするぜぇ?」


悪い子の一人が少女の頭に銃口を突きつける。


「ひっ…」


「おいおめぇら、そいつは大事な人質だぜ、手荒に扱うのはよせよぉ?」


悪い子達の元に30代後半程でのアフロヘアーの派手な格好の男がやって来た。


「す、すいませんAFRO様」


「あ、アフロ?」


「違う違う、アフロじゃなくてAFROだ」


だからSANTAと言い、どう違うの?


そう心の中でツッコミを入れた少女であった。


「しかし、今回はラッキーだぜ、なんせSANTAの知り合いを人質にできたんだからなぁ、今日が奴の命日だぜ」


「…な、何でそこまでしてSANTAさんを殺そうとするのよ、たかがクリスマスプレゼントを貰えなかっただけで…」


その言葉を聞いた瞬間、悪い子達の表情が怒りの表情に変わった。


「たかがプレゼントを貰えなかっただと!」


「お前のような良い子ちゃんのガキには分かんねぇだろうよ!」


「俺達がクリスマスイブの夜、どれだけ楽しみにして待っていたのか…そして朝起きた時に吊るしていた靴下にプレゼントが入って無かった絶望を!」


「俺達はSANTAを許さねぇ、絶対にぶっ殺すんだ!」


「そんなの逆恨みじゃない! 良い子にせず悪いことばっかりしてた貴方達が悪いんじゃない!」


「なんだとぉ⁉」


「このガキ、自分の立場を分かってねぇのか!」


「もう許せねぇ! ぶっ殺してやる!」


「まてお前ら!」


AFROが悪い子達を制した。


「お前らの気持ちも分かる、だがその怒りの矛先は…あいつに向けてやりな!」


悪い子達はAFROが指差した方角を見た。


そこにはゆっくりとこちらに歩いてくるSANTAの姿があった。


「SANTAだ!」


「ヒャッハァァァァァァ! 来やがったぜ!」


「積年の恨み、今こそ晴らしてやるぜぇ!」


悪い子達が殺気立つ中、AFROは愉快そうにSANTAに話しかけた。


「久し振りだなぁSANTA、去年のクリスマスイブ以来か?」


「やっぱり今回もテメェの軍団だったか、去年も俺にぼろ負けしたのに懲りねぇ奴だな、AFROさんよぉ?」


「相変わらずだなSANTAぁ、だがその減らず口もそれまでだ」


AFROが右手を上げると、悪い子達が少女に銃口を向けた。


「このガキの命が惜しけりゃあそこから一歩も動くな、SANTA袋もこっちに投げな」


「…」


「SANTAさん…」


「どうした? このガキが死んでもいいのか?」


「…分かった、ほらよ」


SANTAがSANTA袋をAFROに投げた。


「それでいいんだ…おい、やれ」


バァン!


「ぐぅ⁉」


AFROの合図で、悪い子の一人がSANTAの右足を撃った!


「SANTAさん!」


「ヒャッハァァァァァァ! SANTAを撃ってやったぜぇ!」


「あのSANTAが地面に膝を着いてやがるぜ!」


「最高の気分だぜぇ!」


「ハハハハハ! 無様だなSANTAぁ? さっきまでの余裕はどうしたんだ?」


「へっ…これぐらい怪我の内にも入らねぇぜ」


「まだ減らず口を言えるか…やれ」


バァン!


「ぐああ⁉」


悪い子がSANTAの左腕を撃った!


「どうした、減らず口を言う余裕も無くなったか?」


「…」


「SANTAさん! もう駄目だよ、早く逃げてよ!」


「へっ…嬢ちゃん、そいつは聞けない願い事だぜ…」


「何で…何でそこまでして私を助けようとするの? 私はクリスマス何て嫌いなのに…SANTAなんて信じて無かったんだよ⁉」


「…忘れたのか嬢ちゃん、俺はSANTAだぜ? SANTAは子供達の笑顔にするために戦うんだ…たとえそこが戦場だとしても、そこに笑っていない子供がいれば、俺達は必ず現れるんだよ」


「随分とご立派な精神だねぇ? …だけどよ、お前が子供達を笑顔にすることはもう無い、何故なら…」


AFROはSANTA袋を漁り始める。


「お前はここで俺達に殺されるんだからなぁ!!」


AFROがSANTA袋からガトリングガンを取り出しSANTAを狙い定める!


「…AFROよぉ、SANTAが何に乗って子供たちにプレゼントを配りまわるか覚えてるか?」


「あぁ? そんなもん知ってるに…!」


AFROが目を見開いた。


「そうだ! そう言えば…SANTA! お前トナカイはどうした⁉ なぜ一緒じゃない!」


…ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…


「おい、何か聞こえないか?」


「あぁ? 船の音じゃねぇのか?」


「…どうやら、車検から戻って来たみたいだな…」


「答えろ! トナカイはどこに居るんだ!」


ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…


「やっぱり何か聞こえるぜ」


「本当だ」


「こいつは…バイクのエンジン音?」


謎の音を聞き、SANTAが笑う。


「そんなに会いたいなら、今会わせてやるぜ!」


ブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!


その瞬間、SANTAの真上を何かが跳んできた!


「ヒャッハァ⁉」


「何だありゃあ⁉」


跳んできた何かは悪い子達目掛けて銃弾を発射した!


「うげぇ⁉」


「ごぎゃあ⁉」


「ぎゃあああ⁉」


「チィッ!」


悪い子達は次々と倒れて行くが、AFROはギリギリ回避してSANTA達から距離を取った。


何かはそのまま少女の近くで停止した。


「戻って来たか…トナカイ!」


「こ、これが、トナカイ…⁉」


何かの正体、それは真っ赤に染まったトナカイの頭骸骨を車体に付けた、無人の完全武装バイクだった。


「トナカイ! 嬢ちゃんをこっちに!」


ブルゥゥゥゥゥゥゥン!


「え、きゃあああああ⁉」


トナカイは角で少女を縛っていた縄を切り、少女を角で抱えてSANTAの元に来た。


「嬢ちゃん、お前は何処かに隠れてな」


「さ、SANTAさんは?」


「決まってるだろ」


SANTAがニヤリと笑い、トナカイに乗る。


「あいつらを蹴散らしてやるんだよ! 行くぜトナカイ!」


ブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!


SANTAはSANTA袋を拾い、トナカイで悪い子達に突撃した!


「き、来たぞぉぉぉぉ!」


「撃て、撃てぇっ!」


悪い子達がSANTA目掛けて銃を乱射する!


「当たらねぇよ! 喰らいやがれ!」


ババババババババババババババハバッ!


「うぎゃあああ⁉」


「ぐああああ⁉」


「がぁあああああ⁉」


トナカイの両側に取り付けられているマシンガンが悪い子達を撃ち殺していく!


「SANTAぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


AFROと悪い子達が銃を乱射しまくる!


「当たらねぇって言ってんだろうが!」


トナカイの頭骸骨の口が開き、中から砲口が現れる。


「発射ぁ!」


ドォォン!!


「くそぉっ!」


AFROは横に跳び砲弾を回避する。


「ぎゃあああああああああ⁉」


「うぎゃああああああああ⁉」


AFROの後ろに居た悪い子達は空中に吹き飛ばされた!


「畜生っ、SANTA…SANTAぁっ!」


「しぶとい奴だぜ! だったら…」


SANTAがAFRO目掛けて突撃する!


「くたばれSANTAぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


AFROがガトリングガンを乱射する!


SANTAは銃弾を避け、AFROに突撃し続ける!


「喜べ! SANTAさんがテメェに人生最初で最後のクリスマスプレゼントをプレゼントしてやるぜぇ!!」


そう言うとSANTAはバイクのメーター計器の真ん中にある赤いドクロマークのボタンを押した!


それと同時にトナカイの頭骸骨の眼が赤く発光した。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇっ!」


「メリークリスマスだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!





数秒後、大爆発が起きた!



「きゃあああああ⁉」


あまりの衝撃に隠れていた少女が尻餅をついた。


「さ、SANTAさん?」


少女が心配そうに炎で燃え盛る港を見る。


すると炎の中から、トナカイの頭骸骨を持ってSANTAが出てきた。


「痛ててて、少しばかり無理しちまったぜ…」


「SANTAさん! 無事だったんだね!」


「俺があの程度でくたばるかよ、ほれ、トナカイも無事だ」


そう言ってSANTAはトナカイの頭骸骨を少女に見せた。


ぶ、無事って言うのかなこれ…


そう思う少女であった。


「さてと、それじゃあ嬢ちゃんを家まで送るかね」


そう言うとSANTAはタクシーで少女と共に少女の家に戻って行った。










少女の家に戻ると、悪い子達によって破壊された家が元通り戻っていた。


「こ、これって一体…」


「SANTAにかかればこんなもん一時間で治せるんだよ」


「そ、そうなんだ…」


少女はもはやツッコむ気にもなれなかった。


「…さて、それじゃあ俺は次の仕事に行くぜ」


「え? 私にクリスマスプレゼントを渡すんじゃなかったの?」


「安心しな、もうすでにプレゼントは渡してある」


「? どういう事?」


「それは…明日の朝になれば分かるさ」


笑顔でそう言ったSANTAはトナカイの頭骸骨を片手に、何処かへ歩いていった。








―翌朝。


私はベットから起きる。


何事もない、いつもの日常だ。


昨日の事が夢だったかのようだ。


そう思った時、玄関が開いた音がし、その後に聞きなれた声が聞こえた。


「ただいまー 瑠璃、帰ったよー」


「瑠璃ー? まだ寝てるのかしら…」


お父さんとお母さんの声だ。


私は急いで玄関に行き、お父さん達を出迎えた。


「お父さん! お母さん! 今日も仕事で帰れないんじゃなかったの⁉」


「いやそれがさ、何故か仕事がいつもより凄い速さで終わってね、今日はもう休みになったんだよ」


「本当不思議よねー」


お父さん達は仕事が早く終わった事を不思議がっていたけど、私はすぐに分かった。


これがSANTAさんからのクリスマスプレゼントなんだ!


家族でクリスマスを過ごせる、それは私にとって最高のクリスマスプレゼントだった。


ありがとうSANTAさん。


本当にありがとう。


こうして私は家族みんなで最高のクリスマスパーティーを行った。












―あれから一年。


またクリスマスイブがやって来た。


今年もお父さん達の仕事は早く終わるらしく、明日クリスマスパーティーをやる予定なの。


私はもう寝るけど…今年はもうSANTAさんは私の元に来ないだろう。


だって、私はもう幸せだから。


きっとSANTAさんは…今もどこかで、子供達を笑顔にしているんだろうな。





















―海外、某所。


「…はぁっ」


一人の少年がため息を吐いていた。


「クリスマスなんてくだらねぇ…」


そう言って少年はベットに寝転がる。


そんな時。


シャンシャンシャン♪


「?」


何処からかクリスマスソングか聞こえてきた。


ジングルベル♪ ジングルベル♪ 鈴が鳴る♪


今日は楽しいクリスマス♪ ヘイ♪


「な…何だ?」


ジングルベル♪ ジングルベル♪ 鈴が鳴る♪


今日は楽しいクリスマス♪


「セィィィィィィィィィッ!!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」


窓ガラスを突き破り、謎の男が入って来た!


「ふぅぅぅぅぅぅ…」


「だ、誰? 誰だよあんた⁉」


「あぁ? 見てわからねぇのかよ」


男は煙草片手にこう言った。









「ふぅー…SANTAだよ」

どうも、稲生景と言います。


皆様、SANTA ―聖なる夜に― を読んでいただきありがとうございます。


如何だったでしょうか?


楽しんでいただけたなら幸いです。


この作品以外にも『虫から始める魔王道』、『魔王、辞めます』、と言う作品を書いているので、良かったらそちらも読んでください。


それでは皆様、メリークリスマス。

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