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あの日全てを失った   作者: 涙山 原点
12/13

すべてを失った日


12月2日、もうすぐ冬休み。私は思い切って里美に聞いた。

「なぁ、里美、出会ってから結婚して4年ほど経つのかな。幸せか?」


里美は「幸せ?正直今わからないな」私は予想していた答えに胸が苦しくなり、言葉が詰まる。


私は「里美はこの生活も限界…か?」里美は「…うん。」と答えた。


私は「里美、どうしたい?」と聞いた。それ以上聞きたくなかったが聞くしかなかった。

里美は「うん…パパと離婚したい。」と言った。


私はやっぱりもうそう思っていたんだと思った。

私は「離婚以外考える方法ってないのかな?」と聞くと里美は「別居のつもりで冬休み帰ろと思ってたけど、多分、私実家に行ったら帰ってこないかもしれないって思ってた。でも、子供たちの学校もあるし。どうしたらいいかわからなかった。

でも別居だとパパに結局養ってもらわなきゃいけないし、離れてるのにそんな風にするのは嫌だろうし、私も何か違うなって。

それなら離婚して、子供達は私が引き取って、国の支援受けながら仕事できる様になったら働く様にして、自立していこうと考えてる。」



もう正直、里美は私の事より子供が優先だった。それは当たり前だった。子供には何も罪はない。辛い日々を送らせる訳にもいかなかった。



私は里美の離婚に同意した。



そして今ある借金の金額をありのまま説明した。そして今現在、電気も水道もガスも滞納している事、税金は何年も未払いという事も。里美は驚きはしてなかった。

残念そうだっただけ。



里美は最高の男性と出会えたと思っていた相手がここまで最低な人間だったとはと思ってもなかっただろう。私はどんな綺麗事並べようとも家族を傷つけ、裏切ってしまった。

小さな頃、家族の愛情に飢えてた私は、こんなにも家庭的な里美を幸せにしたい、喜ばせてあげたいという一心から、お金を使っていた。間違った愛情を注いでいた。

里美は決してそんな風な事を望んでいなかったのに。

自分が中途半端に生きてきたツケがきたんだろうと反省し続けた。里美を騙すつもりもなかったが、結果騙し続けた事が大きい代償となってこの結果になったんだろう。

反省するなんてぬるいだろう。


里美に今まで出会ってからの話をして感謝の気持ちを伝えた。里美は泣く事はなかったが子供達の事は忘れないでと涙目になって言った。


私は「もちろんだよ。里美も梨花も結生もお腹の子も忘れない。借金返して必ず迎えに行く」と私は言った。



里美は「ごめん、離婚した後、パパと先の事は考えてない。やり直せるかもわからない。ごめんなさい。」と言った。


里美は今はこんな状況またやり直しせるか何て話せない状態だった。当たり前だ。もう私の事が無理だから離婚するのに何でやり直す話が出てくるんだろうか。


私は何を馬鹿な事を言っているのだろうと思った。こんな事になって借金返したから終わりじゃないよなって思った。


この長い日々の中で、里美はお金以外で、私には対して、人として愛情がなくなっていたんだと。



里美は「パパ、こんな事になってこんなお願いするのは申し訳ないんだけど、離婚して私達がここを出て行くまでの間は今まで以上に笑顔で家族の時間として過ごしたい。最後だから。最後だから笑顔で終わりたい。いい…かな?」


私は「そうだね。最後ぐらい笑顔でいたいもんね!」と胸が苦しかったがそういうしかなかった。



離婚が決まってから私は里美のご両親に連絡し、経緯を話した。

ご両親は残念がっていたがこれから頑張りなさいと言ってくれた。私は何度も謝った。

私の父にもあって話をした。父は涙ながら離婚を考え直してほしいと言ったがすでに、里美は決心しており、気持ちは変わらなかった。



それから離婚の手続きは川の流れのように進んだ。

里美は離婚の手続き後、各役場などに今後必要な書類や手続きなど一つ一つ確認し、メモを取っていた。母子手当の手続きや転出届け、子ども手当、学校の手続きなど。

里美から「本当は養育費など、本当はね、欲しいけど、パパもお金大変だと思うから余裕ができたらお願いします。ごめんなさい。」と言った。

私は「うん。でも養育費は何とか頑張るから!」と前向きな声で言った。


里美は「もう、そういう所が私信じられないの。パパは何とかなる様って考えてるかもしれない。でも私にとって養育費は必要だけど、今は素直にもらえない。パパの大丈夫がわからないの。もし毎月もらってても、いつか払えなくなったってなってパパとそんな話で揉めたくないから。だったら本当にお互いが素直な気持ちで話し合えたら、養育費お願いします。」と里美から言われた。



信じられないか…。そうだよね。こんな風になるまで、誤魔化し誤魔化しでやってきて、最後養育費は何とか頑張るじゃないよ。

養育費ぐらいは何とかして当たり前なのに。

一つ一つ発する言葉、かえって里美を不安にしていたし、私の発言には、もはや信頼が無かった。


ここまで本当にどうにかしたい気持ちが相手に伝わらなくなると、苦しくて、頭が混乱していた。

私はもう喋る言葉が見つからなかった。




何だか里美は、前よりずっと強くなっていた。強くなろうとしてた。

これから自分の力で生きていく為に。言い換えれば私が隠していた借金の事で、里美は信じられる者は自分だけと思ったのかもしれない。


養育費の話一つちゃんと出来ない自分が本当に情けない。



昨日夜、夫婦として最後の日だった。

今日は家族の最後のの食事。いつもと変わらない食事だったが、今日は特別に美味しかった。

とにかくご飯一口一口ゆっくり食べた。私はおいしいと何回も言った。

それを梨花がみておいしいと真似していた。里美は久しぶりに笑顔で笑っていた。

ご飯を食べ終わりみんなでお風呂に入った。

とても狭いお風呂だったがワイワイして楽しかった。

我が家はこんなにも賑やかだったんだと改めて思った。

そのお風呂の中で私は梨花に

「パパとママ、離婚する事になった。色々あって離れるんだ。ごめんね。でも梨花が困った時はパパはいつでも会いに行くからね!だから心配しないで。」

梨花は黙って声を殺して泣いた。

でも、正直に言ったのは里美がパパと離れる事を嘘で伝えたくない。これ以上嘘はついても、つかれたくもないからという事だった。

辛い事実でも、子供にちゃんと目を向けて言えばわかってくれると里美は言った。その後二度と会わないわけじゃないんだからと言ってくれた。

私も小さい頃、わけもわからず母がいなくなった経験があってか、正直に伝えようと思った。

でも、父でも母でもどちらかしか親がいない寂しさをこの子達にも味わあせてしまうのかと思った瞬間辛かった。


今日の思い出は一生忘れない様にしようと思った。

最後なのにこんなにも楽しくみんなと笑ったのは久しぶりだった。



離婚届けを書いた日。里美は表情はいつもより引き締まっていた。

書いた後里美は「今までありがとう。これからは父として子供達の事、宜しくね」

と言った。正直、こんな自分なのにまだ父として子供の為に繋がりをもたしてくれることに涙し感謝した。


里美と結生を乗せて市役所まで言った。私は運転しながら、ここはよく里美と結生が買い物のあと散歩していた道だなーと思い出していた。

途中、梨花もよくここの公園でブランコしてたなーなど色んな思い出がふと出てきた。

ルームミラー越しに里美を見た。里美はずっと窓の景色を無表情のまま眺めていた。


あの時、借金せずいれば。

普通にお金があって普通に生活ができて普通に仕事をしていれば。

何もかもそう思ってしまった。



市役所についた。私は結生を抱っこして結生に変顔をしていた。反応はいまいちだった。変顔に集中していたら

「パパ、パパ」と里美が呼んでいた。

私は急いで向かった。

梨花の事だった。離婚した事で養子縁組を離縁をどうするか聞かれた際、私はしないと伝えた。「娘には変わりない」と言った。

里美は「ありがとう」と言ってくれた。里美は「苗字も変えない」と言った。

子供の為にと里美は言った。

離婚したが私は決して終わりでは無いと感じた。だけどそう思うのは自分だけだったと思う。

周りからは見れば、離婚は離婚。夫婦が離婚する事は簡単な事ではない。

喧嘩や浮気などではない。勿論、喧嘩や浮気も良くないし、それで離婚して復縁もありえないかも知れないが、私達の離婚は里美に散々見せたくない所を、知られたくない所を偽り、綺麗に見せようとしてた。うんざりだろうし、私の事なんて信じられないのだろう。

離婚になってもしょうがない。


里美は最後まで、私と子供達の親子関係だけは繋げていようとしてくれた。それは子どもには何も罪はないから。


里美自身は私との縁は繋ごうとはしていなかった。それはわかっていた。






手続きの関係で早めに里美の実家に行かなければいけなかった為、里美達は最低の荷物を持って出発する事になった。


残りの部屋の荷物は私が片付けて、必要な物は送ると言った。


里美の実家に行く当日、私は東京駅の新幹線乗り場まで一緒に行った。

子供達は初の新幹線に喜んでいた。里美は緊張していた。無事に席に座り、私は窓の外から話かけていた。

結生はこちらを見て何か言っている。里美の口の動きは結生に「パパだよ。パパだよ。」と伝えているようだった。


私は新幹線の出発のベルが鳴るまで窓の側を離れなかった。



新幹線のベルが鳴った。

ドアが閉まりゆっくり、ゆっくりと新幹線が走り出す。私は思わず里美達が乗る新幹線を追いかけた。



私は「里美、ありがとう!元気でね!梨花、新しい学校でもいっぱい友達作るだよ!結生もっと一緒に遊び…たかった。お腹赤ちゃん、元気でね。」と言っている間に涙が止まらなかった。

声も震え、涙が溢れて言葉が詰まった。窓からは里美達がパパと言っていた。すぐに新幹線はスピードを上げ、里美達の車両に追いつけなくなった。



私は新幹線が見えなくなるまで、駅のホームで見送った。涙が止まらなかった。


ずっと我慢していたが本当に大切な家族が行ってしまった事に、今になり感情が抑えられないでいた。


私はしばらく立ち尽くしていた。

力が抜けてその場に崩れた。


もっとたくさん話したかった。もっとたくさん伝えたかった。

でも全然伝えられなかった。いつも気持ちを伝えてくれていたのは里美であり、いつも笑顔でいてくれた子供達だった。



そのまま目を閉じた。



「里美いつもお弁当ありがとう」

「ごめんね、パパ。いつも同じようなお弁当で。でもおいしいって言ってくれて嬉しいよ」


「パパー、梨花の事にもっと高い高いしてー」

「結生の次な。」

「じゃあーママに抱っこしてもらうもん」


「里美、梨花、結生は今日でこの家とも最後になる。だから最後ここでの思い出にみんなで写真撮ろう」

「ハイチーズ」

「あれ、みんなで顔バラバラじゃん、里美達も少し笑って。じゃあもう一……かい」




色んな記憶が一度に蘇る。

私はホームで目を閉じた。目を閉じても涙が溢れていた。

そして楽しかった思い出がたくさんあったんだと思い返しているうちに悲しいのに、涙を流しながら微笑んだ。

時間が戻ればいいのに。



私はあの日全てを失った。




私は1人家に戻り部屋の片付けを始めた。片付けは5日間かかった。


その間、思い出に浸ってしまった時間もあったたため、少し時間がかかった。


細かな荷物はほとんどダンボールに詰めて、必要なないものはゴミ袋に入れた。


大きな家電品は引越しやにお願いした。家電も、今ある荷物もほとんど、里美の実家に行く物だ。


ほぼ荷物が空になり、あとは家の退去手続きのみだった。


明日に退去を控えた日、本当にここでの生活が終わりを迎えるのだと感じた。今部屋にあるものは部屋の電気と布団だけだった。


こんなにも部屋は広かったんだなって。何もないとやっぱり寂しいものなんだなって感じた。

私は最後、みんなでご飯を食べた食卓を眺め、子供達が寝ていた部屋も見る。そしてよく里美と話したり、テレビ見たり、映画を見たりしたリビングを見た。


周りからみたら救いようのないダメ人間

で自業自得なのはもうわかっている。でも私なりに頑張ってきた。


よくよく考えれば遅かれ早かれこうなっていたのも時間の問題だったかもしれない。


離婚前に里美は「パパ、何かあったら私にも言ってほしい」と言っていた事があった。

私は借金の事を言わないで、ここまできてしまったんだよな。




最後離婚の時に言っても遅かったよな。

私は借金の事をもっと早く相談していればと思った。

何度も何度もこんな事を、前から後悔していた。



空になった部屋をまた眺めていた。

今頃はもうとっくに実家についているだろう。

家で家族が待ってくれている事がどれだけ、幸せな事か改めて感じるのだった。





退去当日、部屋の修復担当の方がきた。担当者が「きれいにお使いなってましたね。」と言った。

私は里美がいつもきれいにしてたからなーと思った。

担当者が「あれ、これは?」と壁を見た。

そこには薄い黄色のクレヨンで、梨花が書いた私と里美と梨花と結生とお腹の赤ちゃんと天国の赤ちゃんを描いた笑顔あった。

あたりにも薄い色だった為、気づかなかった。担当者が「かわいい絵ですね」と言った。

私は「はは、すいません。」と言った。

担当者が別の部屋に行っている間、梨花が描いた壁の絵を眺めて、手をあてた。

どんな気持ちで描いていたのだろうか?

みんなと一緒にいたいのは私だけじゃなくて、それ以上に子どもだったんだろう。

私の勝手な事情で子供達に苦しい思いをさせてしまってると反省した。



私は全ての手続きが終わり実家に帰る事になった。

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