バグ管理システム
目の前の小動物はブラック発言を言い切った後
どこからか取り出した学者帽と眼鏡をつけ話しかけてくる
「まずは仕事の始め方を教えるよー!call BTSって喋ってみて」
この学者帽やら眼鏡も多分見てくれだけで
小動物と同じく実体はない映像だけとかそんなんだろうな
とどうでもいいことを考えつつ言われた通り喋ってみる
「call BTS」
そうするといきなり目の前にウインドウが表れた
「基本的にこの世界では魔法は音声入力になっているんだ!
callで魔法の呼び出しを準備して続く言葉が魔法名って感じだね!」
さっきまで田舎風の世界だったのに
このウインドウの部分だけなんかゲームの世界に入り込んだような感じになってる
時代が全然あってないな
「これって魔法名さえ知しってれば誰でも唱えられるのか?他の魔法とかも」
疑問に思ったので聞いてみると
「そんなわけないじゃん!魔法はさっきみたいな魔法陣で基本的には契約するんだよ
じゃないとヤバい魔法とか名前を聞いただけで呼び出すことができるようになるじゃん!」
そう言われてみればそうかと思い至る
まだ少ししかこの世界のことは知らないが
誰でも自由に使い放題な世界だったらもっと荒んだ世界になってるか
「それでだけど続けて説明するとその今呼び出したウインドウが仕事の内容
この世界に存在し報告されたバグが一覧で表示されている優れものさ!」
これがこの世界に発生しているバグ一覧ねぇ
元の世界のバグ管理システムとおんなじ感じかな
名前もBTSでバグトラッキングシステムの略称だろうし
そして表示されているウインドウを眺めつつ
右上に不穏な文字列を見つける
本日のバグ報告数 3901件
本日のバグ修正件数 210件
残りバグ報告数 134050012件
「・・・なぁちょっと聞いていいか?」
「なんだい?なんでも聞いてよ!」
一、十、百、千、万、十万、百万、一千万、一億・・・
「残りバグ報告数が1億超えてたりするんだけどこれ全部直すのか?」
小動物は自信満々に
「大丈夫!この世界にもバグを修正してくれる人はそこそこいるし
君のいた世界からもたくさん連れてくればすぐに解決する問題だって聞いてるよ!」
俺はその言葉を聞くと
自分の手で目を覆い隠し大きく溜め息をする
俺はこの時この仕事はこのまま一生やっても終わらないなと確信した
「あのなぁ・・・
バグを直すってのは人を増やせばすぐ解決するような簡単なモノじゃないんだぞ?
逆に増やせば増やすほど現場は混乱することが多いし
せっかくバグを直したと思ったら他の人の修正内容が別のバグになったりと」
とはいっても少人数でこの件数はどうやっても無理だけど
「というかこの世界根本的にバグってるんじゃないか?
プログラム云々じゃなくて設計や仕様の段階でさ
むしろバグってるからこそ動いてる状態とか普通にありそう」
小動物は少し考え込むが
「んーだとしても僕に言われても正直わかんないんだよねー
この世界のことは教えてあげられるけどそうゆう突っ込んだ話とかわかんないし!
きっとワタルが考えていることぐらいヒイラギ様も知ってると思うし!」
いや絶対あの女がわかってるわけないと思う
あの時に話聞いている感じだと
プログラムのプの字も知らないようななんちゃってSEみたいな感じだった
外注に全て丸投げしてって言ってたし
「まぁもしも本当にヒイラギ様が知らなかったとしても
そのことに意見するなら最低でもそれ相応の実績を積んでもらわないと話にならないと思うよ!
だからどっちみちやることはまずは仕事だね!」
はぁどっちみちやることは変わらない・・・か
まぁ確かにぐちぐち言っててもしょうがないし
今はこの世界での仕事を覚えるか・・・
BTSの画面を見てみるとバグの絞り込み検索ができることがわかったので
この周辺のバグを検索してみる
表示された件数は12万件
その内重要度で高いものを絞り込んでようやく294件
「重要度の高いもので絞り込んでも294件もあるのか」
一番日付の新しいものを選んで表示してみる
No. 134060038 重要度:緊急 担当者:なし 日時:3日前
エルドラの北東に位置する森にて低ランク魔物が大量発生
仕事斡旋組合にて何度も間引いてはいますが魔物の発生速度は日々上昇するばかりです。
このまま発生速度が上昇すると低ランクの魔物とはいえ手に負えなくなる可能性あり
こちらでは原因を特定できないため対応をお願いします。
「・・・えっ?こんなレベルの問題が300件近くもあるの?」
一緒に見ている小動物はそれを見て特に驚く様子もなく
「最初の仕事はこれにする?
どうせだめだったとしてもこの森周辺が低ランクの魔物が溢れてくるだけだし
特に世界全体には影響ないから放っておいてもいいとは思うけど・・・
するなら担当のところをタッチして自分の担当として割り当ててね」
この反応からするともしかして低ランクの魔物って誰でも簡単に倒せるようなものなのか?
子供でも簡単に倒せるような魔物だからそんなに危機感がないとかそうゆうもの?
一応重要度が緊急になってるし
それなら最初の仕事として特に問題なさそうなので言われた通り自分に担当を割り当てる
「それじゃぁお仕事開始だね!
町を出て歩いて30分ぐらいのところにあるし案内するから僕についてきて」
建物から外に出て小動物を先導にして町の外まで歩く
町にいる間は小動物がいるせいでチラチラ見られるのは気になるが
どうせこの先もずっとこうだろうと思いその視線は我慢する
門番のいる門をくぐると目の間には何にもない草原が遠くまで広がっていた
今まで会社の中に缶詰になってることが多かったからだと思うが
この見渡す限りの何にもない緑が広がる草原を見るだけでも
少しだけ・・・本当に少しだけだけどこの世界にきても良かったかもしれない
まぁそんな思いもすぐにこの小動物の言葉ですぐにかき消されるんだけど
「そんな耄ける暇があったら仕事してよ。こっちだから着いてきて」
仕事だしなと思ってそのまま大人しく小動物に着いて行くことにする