ちょじょん編 エピローグ
郁美と姫は別々のクラス。
名残惜しく、各々の教室に戻った。
何も言葉は交わさない。お互いに無言で席に着く。
教壇に先生が立ち、号令がかかる。
立った姫が握り拳を作って何かを決心した表情をした。
それを視界で確認できた。
授業が始まったが姫はとても嬉しそうで授業には未参加。
ぐぅ~~~ぅ。。。
隣からの音が、教室を包む。
姫のお腹だった。
「ぷっ」
思わずふきだすと
ぐろろろろろ~~~~~。
・・・俺のお腹の音が姫の音を追いかけた。
教室中が笑いに包まれる。
先生が静止するが収まらない。
姫は、真っ赤な顔をしていたが可愛すぎて気絶しそう。
しばらくすると教室は静けさを取り戻した。
姫は食べかけだろう弁当を出し、膝の上で広げる。
一口、二口くらいしか食べられてない綺麗な状態。
その弁当をこっそり俺に渡してくる。
成り行きに受け取ったが箸がない。
可愛いタコさんウインナーを手でつまみ口に運ぶ。
口の中で幸せな物が広がっていく。
うまい!! うますぎる!!
姫が懸命に箸を拭いて、拭き終わると俺に渡して微笑む。
俺も少し照れた仕草で鼻を掻き、両手を合わせて
姫にペコリと頭を下げて、ゆっくりと幸せと味を
噛みしめながら、半分残して姫に返す。
姫は、両手をブロックして全部食べろと言ってるが
無理やり返した。
姫は、両手を合わせて俺の方を向いてペコリと頭を
下げて、残りを食べ始めた。
・・・箸・・・拭いてない。少し恥ずかしい。
俺に渡す時も拭かなくてもよかったのに。
幸せに包まれて5時限目は終わった。
掃除らしいが当番制。
姫は当番では無く帰る支度をしている。
「ちょじょん、家はどっち方面?」
「西区だよ。」
「おおっ。俺も西区だ。パス?」
「うん。バス。」
「んじゃ、一緒に帰ろう?」
「うん! でもいっちゃん待っててもいい?」
「当然。んじゃ俺は職員室で転入の諸々済ませてくる。」
「了解。」
俺は南区だ。少し遠回りだが美咲を警戒しての事。
あまり姫を一人にするのも危険。
即座に職員室の野見山先生に今日の結果を報告して
姫の元に急ぎ足で戻った。
「ちょじょん、待った?」
姫の隣には郁美が居た。
郁美は俺を見ると軽く会釈する。
「ううん。いっちゃんの家、家の近所だから一緒にね。」
三人で帰る事になった。
二人は仲良く話しながら前を歩いてる。
俺は少し後ろから着いて行く感じ。
二人は気遣って、両サイドに来る。
両手に花とはこの事か。
幸せな時間はアッと言う間。二人を無事送り届けて、帰宅した。
事が一日で、あっさりと終わった気がする。
まぁ、水面下での虐めが表に出た状態だから当たり前か。
明日からは姫だけじゃなく、他の生徒も、虐めない、虐められない環境を
作らなくては。いい案を考えてるが脳みそ筋肉の俺が・・・
当然の事ながらいい考が浮かばない。
そして二日目。バスを降りて学校にに入り、教室まで来た。
昨日関わった面々とは誰とも会わずに教室入りした。
「皆の衆おはよう。」
近くの奴らが、義理で挨拶を返してくる。
その少し奥で郁美と一緒の姫も笑顔で迎えてくれた。
「ちょじょん、郁美さんおはよう」
「「おはよう。」」
二人がハモって挨拶を返してくれた。
二人顔を合わせて笑っている。
「昨日はよく眠れた?」
「「とってもよく!」」
二人してまたハモった。
また顔を合わせて笑っている。
俺もその輪に居る。この風の幸せを感じている。
いい仕事だ。続けたい。決心を固めた。
平穏に時間は過ぎる。
休み時間になると郁美が隣のクラスからこちらへ来る。
三人で意味のない話を楽しむ。
昼休みになった。
何も以上なし。平穏そのもの。
三人で食堂でお昼をする。
念願のメンチカツ定食を完食。
食堂で、積もる話に花が開いて二人の間に入れそうもない。
横槍入れるのも野暮ってものだ。二人の邪魔をしない為に
トイレと称して、食堂を出た。
校内をぶらぶら歩いていたが、堂本の顔が浮かんだ。
そのまま、体育館裏の第二道場まで足を運んだ。
「よお、へっぽこ空手部。調子はどう?」
「ああ。お前か。最悪だ。」
「そっか元気で何よりだ。」
「人の話聞いてるか?お前に打たれて・・・
飯を食っても胃がムカムカして最悪だ。」
「すまん。手加減はしたのだが。」
「・・・・・・・んで何しに来た?」
「いや、美咲とウサギのダンスの練習してるじゃないかと。」
「・・・俺はこの一件から手を引く。約束だしな。美咲とは切れる。」
「そう言ってくれると安心だ。俺も長くはこの学校に居ない。
お前の様な奴が、困ってる生徒を助けてくれると助かる。」
「敗者は勝者に従えか。まぁ、考えておこう。」
「期待してる。」
「あっ。格闘家がカップ麺すすってるってどうよ?」
「金欠でな。いつもではない。」
「だといいんだが。」
軽く会話を交わして道場を後にした。
美咲は居なかった。
それから一週間平穏に過ぎて行った。
気が向いたら空手部に顔を出し、へっぽこ空手部の
連中とすっかり仲良くなった。
もう大丈夫だろう。
帰り路にSKKK(シークレット教育矯正機構)に報告をしに行った。
学年主任の野見山先生からも報告が行ってて話は早かった。
後一週間問題無ければ、ここでの任務は終わりになる事になった。
後一週間で、姫ともお別れか。
次の日、学校で今後の提案をした。
自分が子供の頃に思っていた提案をする。
それは、トイレに意見箱を設置する事。
他人の虐めを見て、匿名で方向するもよし。
自分が虐められてる場合の助けを求めるもよし。
この意見箱は、廊下等ではなく目立たない場所に
置くことに意味があると訴えた。
俺の案はすぐに採用された。
もう堂本も信用できるし、この学校は大丈夫だ。
それからの一週間はアッと言う間だった。
愛らしい姫、美人の郁美、背の低くて顔の残念な俺。
その奇妙な組み合わせの三人の輪に他の生徒が集まり
三人の周りは笑いでいっぱいになった。
俺は別れを告げず、この学校の任務を終えた。
SKKKから正式採用の通知が届く。中に評価も同封されてた。
解決期間 EX
解決手段 EX
隠密行動 SS
後処理 EX
学校生活 SS
総合評価 EX
の高評価だった。評価のランクは
EX、SS、S、A、B、C の六段階。
S以上が求められる必須評価。
これから沢山の生徒を助ける事が仕事。
今回の初心を忘れずに、頑張って行こうと決心した。
それから一年後。野見山先生に呼ばれて、初陣と言うべく
この学校に来た。
野見山先生からその後の事を簡単に聞いた。
姫はバスケ部に戻り、郁美を筆頭に友人関係は良好。
堂本が以外に頑張って、虐めは全くと言っていい程ないらしい。
その背景には、へっぽこ空手部が風紀委員を作ったらしい。
堂本の意志を受け継いだ後輩が頑張ってるとの事。
へっぽこの癖に生意気な。
俺に感謝を述べてくれると同時に、初心を忘れぬ様との事。
懐かしい。姫に会っていくかと、女子バスケ部を訪ねる。
もう三年だし進路も決まってる事だろう。
部室の前。にぎやかな声が聞こえる。
俺は部室のドアをノックする。と同時に
「ちょじょん!また裸で!タオルくらいまといなさい!」
おお。郁美は姫を、ちょじょんって呼んでるのか。
ガチャ。ドアが開く。知らない女子部員が顔を出す。
「はい。誰?」
ドアがさらに開く・・・・・・
!!! ストレートロングの後ろ姿。それも裸。
「き、き、木見ですが、野田さ・・」
俺の声に振り返った裸体の主は姫だった。
俺に気が付き、裸で走って駆け寄ってきた。
そのまま言葉を発する前に抱きついてきた。
生の胸が・・・!!!
まだ、身体が少し濡れてて服も濡れたが・・・
おれ・・・は、思った。死ぬなら今がいい。。。
<< 番外編 いっちゃん >>
私には大切なお友達が一人だけいる。
名前は三井郁美。いっちゃんって呼んでいる。
いっちゃんは同じ歳なのに、とてもしっかりしてて私を妹の様に
気に掛けてくれる。いっちゃんは私だけじゃなくてみんなに優しい。
出会いは保育園。私は頬の肉で目が細くなるくらいの体形にお河童頭。
可愛いお洋服は似合わない。でも、いっちゃんは、腕にボンボンが
付いていて、フリルの付いたスカートの似合う可愛い子。
お遊戯発表会では、いつもお姫様役。
私は、木や石の役。いっちゃんは綺麗なお洋服と綺麗なお顔で憧れてた。
そんなある発表会で、いっちゃんが私をお姫様のお母さん役に推薦してくれた。
初めて着る綺麗なお洋服。体形が合わなかったけど、いっちゃんのお母さんが
私のサイズに合わせてくれた。
初めて夢の中に入れた気がした。いっちゃんありがとう。
小学校に上がったけど、太ってた私はボッチ気味。でもいつもいっちゃんが
横に居てくれた。
運動会の時の競技はいつもビリ。
フォークダンスは太ってた私と男子は手を繋がない。嫌な行事。
でも、いっちゃんが男の子役をしてくれてずっと踊ってくれた。
小学校五年生。いっちゃんは可愛くも美人になってきた。
バスケットボールをしてる姿がカッコ良くまぶしかった。
私も・・・いっちゃんみたいになりたいなぁ。。
一緒にバスケやりたいなぁ。。
私は、大好きな食べ物を我慢する決心をした。
から揚げを3つ以上食べない。マヨネーズは使わない!
ごはんは御代わりしない! 全然食べ足りなくてすぐに
お腹が泣き出した。それから野菜を多く食べた。
髪もいっちゃんより長くなるまで伸ばそうと決めた。
長くなったら、いっちゃんより絶対に短くしない。
手入れが大変らしいけどお母さんに聞けば大丈夫。
中学に上がった。見た目の大きく変わった私に友達が増えた。
でも、大好きなのは、いっちゃん。後は何も望まない。
そして、バスケも始めた。
いっちゃんみたいに綺麗じゃないけど、一緒に並んでも
足の細さは同じくらいになった。
少しだけ・・・いっちゃんに近づけた気がした。
年上、年下の男の子から一緒に写真を撮りたいと言われる様になった。
最初の頃はオロオロして、どうしていいのかわからない私を
いっちゃんが手を引いてくれてた。笑顔で写真に写れた。
三年になったら、可愛い野田、美人の三井。最強コンビと
書かれた校内新聞が嬉しかった。
憧れのいっちゃんと同等の友達になれた気がした。
私は、いっちゃんをずっと大事にしたい。
お婆ちゃんになっても、親友で居たい。
今までは、助けてもらうばかりだったけど、
これからは、いっぱい恩返しをしたい。
一番大事な友達。
そんな私は、明日から高校生。
いっぱい、いっぱい不安がある。
いっぱい、いっぱい心配がある。
でも大丈夫。
だって、いっちゃんも一緒だから。
一ランク落として同じ高校を選んでくれた。
何があっても絶対に友達だよ! と言ってくれた。
私もそう。絶対に友達。
いっちゃん。。。ずっとずっと私の大事な友達。。
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ちょじょん編を最後まで読んで下された方々に感謝します。
鉛筆書きの変な絵を差し込んですみません(*- -)(*_ _)ペコリ
まだまだ紹介したい話もありますが、読者が少なすぎて
モチベーション保てないので、これで終わるか思案しています(゜◇゜;)!!