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虐めたもうなかれ  作者: 自由なゆめゆめ
4/7

黒幕


 郁美達が戻ってきた。それも男を二人連れて。


  郁美を先頭に供の女子二人と男二人の五人。


 濡れたメンチカツの供養をする時間はなさそうだ。

 メンチカツに次はちゃんと全部食べてもらうだぞ。

 と心で呟いて、入って来た五人が近くに来るまで待つ。


 男の一人は、だらしなく前を全て開けて下に赤シャツが見えている。

BAD BOY赤シャツにプリントされた文字。


ベタ過ぎる。ズボンは尻が見える程下げている。

当然トランクスだろうパンツは丸見え。

髪型は、短めの髪を上に立ててる。

 まぁ。見た目も不良って感じ。

 もう一人の奴も、尻出しルックに制服のボタンを上から3つ外して、

だらしなく着ている。


 「転入生ってお前か? 面白い事してくれたらしいな。」

  

 「いや。うけを狙ったつもりはないが?」


 後ろ頭を掻く仕草をしながら答える。


 「ふざけてろ。いいから一緒に来い。」


 「餌がまだなんだが?」


 「どうせ食った物全て戻すだろうから意味ないと思うぞ?」


 にやにやしながら言い放つ。


 「あ~わかった。わかった。この食器を戻すから、食堂の外で

待っててくんない?」


 「いいだろう。待たせるなよ?」


 フッと鼻で答える。


 「姫、指名が入ったから行ってくる。あっ。間違っても平和に解決するから

先生には内緒で。」


 グッっと親指を立てて余裕をアピールする。


 姫は不安そうな顔をするだけで、何も言わない。言えないのだろう。


 「俺が戻ったら、字名を姫から・・・ちょじょんだ。」


 強張った顔から笑顔になる。

  

 食べ損ねたメンチカツ定食を運んで、使用済みと書いた台の上に乗せる。

   

 「おばちゃん、ごめん。どこぞのアホのお蔭で粗末にしてしまった。」


 中でおばちゃんが手を振っている。気にするなと言ってる様に見える。

  

 「あっ、このトレーちょっと借りるね。」


 それは、定食を乗せてたアルミのトレーだ。

 今から何があるか分からない。保険は必要だろう。



「待たせた。しかし、こんな入口で人相の悪い五人が待ってるって、

他の生徒のいい迷惑だな。」


「くっ。いいから黙って付いてこい。」


 このぺーぺの見た目不良君をからかってみる。


 「お前、臭そうなパンツが見えてるぞ?」


 「見せてるんだ!」


 「臭そうなパンツを?」


 「臭くねぇよ!」


 「この辺が黄色いが?」


 「うるせー!黙って歩け!」


 予想通りの返事が返ってくる。もうしばし、遊んでみたい気もするが、

体育館が見えてくる。


 五人に囲まれる様に、体育館の裏を通り過ぎるともう一つ体育館の様なのが

 見えてくる。かなり孤立してる。多少大声出しても問題無いくらい。


 「ここだ。入れ。」


 後ろから押される形で中へ入った。

 中には、黒のストッキングが色っぽく、ロングヘアーに軽くカール掛かった

 綺麗で、意地悪そうな女が一人と道着を着てる奴らが七人。

 その内三人は真面目に練習している。


 俺が入った事に気が付いて、手招きをする男が居る。


 そのまま、五人に囲まれて歩みを進め、その手招きした男の近くに来た。


 「おい。要件は分かってるよな?」


 「交際の申し込みか? 悪いが間に合っている。」


 「噂通りの面白い奴だな。だが、空手部の練習相手になった後でも

同じ事が言えるか楽しみだな。」


 「なんだ?稽古を見てほしいなら早く言え。」


 「フッ、まあいい。・・・お前、真野に・・・絶対王者の真野に似てるな。」


 「あ~良く言われる。良くも悪くも、ありふれた顔だが。」




 「くだらねー事しゃべってんじゃないよ!」


  色っぽい女が横やりを入れる。


 「美咲。そうカリカリするなよ。」


  あの色っぽい女は美咲と言うのか。少なからずここにいる女子は、

何かしら姫と関わってるのは明白だろう。

  ん?よく見れば郁美もかなりの美人に分類されるな。

  それはそれで。

   

  そんな美咲が怒り口調で、


 「チビ君、関係ないのに深入りして、自分のお節介に後悔させたくて

招待したんけど~

  遠慮は要らないからゆっくり遊んで行ってね?」


 「招待? んじゃ、茶くらいでるのか?臭そうなパンツ野郎と

汗臭そうでむさい奴にもてなされるのか?」


  美咲は、あきれ返った表情で、一息ついて、口を開く。


 「単刀直入に言う。私達と本間に関わるな。んで、録画したのを消すか

こっちに渡しな!」


  無言で美咲を見る。いや、ストッキングの色っぽい足を見てるが正解だが。


 「本間に追い込みかけて、やっと精神的にも音を上げる寸で所で

  邪魔しやがって!」


  何かが爆発したように、言い続ける。


 「トイレで上から水ぶっかけても、髪を切っても、スカート切っても、

何しても次の日何食わぬ顔で登校しやがる。生意気を通り過ぎて図々しい!

  この学校から去ってもらわないと気が済まない!!」


  ・・・何を勝手な事を。姫の顔が浮かんだ。


  ・・・怒りが込み上げる。


  「デブで不細工だった本間に身の程を教えてんだよ!!」


  「だから嫉妬の逆恨みで虐めたのか?」


  「教育だよ!教育!」


  「なんだ知らなかったのか? それを、俗に虐めって言うんだ。

   立派な犯罪だ。」


  「世間の厳しさを教えてやってるんだ!授業料もらいたいくらいだ!!

   教育料として!」


  高額せしめてただろう。額的にはアフターフォローも入れろ。って額。


  怒りが込み上げて切れる寸前だったが、深呼吸一つ。そして静かに口を開く。


 「えっと・・・

  何を根拠に虐めじゃないって? ふざけてるのか?」

 

  「お前に関係ないだろう。お前も的にされたいのか?」


 「お~~的ってくれ!受けて立とう!

   ぼったくられた授業料も返してもらおう!」


  

  やってしまった。。。


  こんな年下の奴らに、我を忘れてしまった。


  売り言葉に買い言葉。俺もまだまだガキって事が判明した。

  軽くショック。


   このショックで冷静さを取り戻す。


  姫から、俺に”的”を変えてもらえるなら有難い。

  しかし、姫に対してかなりの確執があるようだ。

  

  どうせ、何かの逆恨みだろうと予想。

  人生程、ままならないものはない。


  「本間とお前を的にしてやるよ。今更詫びても遅過ぎるから覚悟しな。」


  美咲が上から目線で言う。美人なだけにあまり嫌味に聞こえないのが怖い。


  「的にされるのは一向に構わないが、折角出向いたんだ。

   少しは楽しませろ。」


  周りがざわつく。実質六人の男と四人の女に囲まれてる訳だ。

  悪党の秘密基地に単身で攻めるとこんな感じだろうか。

  

  ある意味、こんなチャンスは滅多にないだろう。

  黒幕っぽい奴も居る。悪党全員集合の状態で、このまま帰るのは

  勿体ないお化けが出る。


  今一度見まわす。


  男六人。奥に三人。六対一なら何とかなりそうだ。

  

  「チビの癖に、いい度胸だな。」


  「ありがとう。取り柄がそれしか無いんでね。」


  ボスらしき男が脅すように、睨みながら凄んで言う。


  「では、リクエストに応えて稽古でも付けてもらおうか。」

  

  「んじゃ、折角だから提案が一つある。

   俺が勝ったら本間さんには二度と関わるな。

   俺が負けたら動画は削除して本間さんにもお前らにも関わらない。

   でどうだ?」


  周りの奴らが大笑いしだした。


  「おチビ君よぉ~立場分かってる?周り見えてる?それに先輩にため口って

頭弱いのかな?」


   実際は俺がかなりの年上だが。と突っ込みたい気持ちを抑える。


  「周りは・・・ワラ人形ではないな・・・

   敬語を使えってか? 俺は年齢関係なくお世話になった方や

   学べる何かを持ってる人なら、敬語を使う。

   悪いがお前らから得れる物はない。精々、卑怯な虐め方くらいだと思うが?」


  「吐いたツバのむなよ。お前ら入口で見張りしてろ。誰か来たらすぐに教えろ。」


  郁美の供の女AとBに命令する。

  命令された二人はすぐに行動に移る。


  「そうだ、折角だから本間も呼ぼう。」


  こいつ、さっきからムカつく事しか言わないが。


  姫が居ない方が、俺には都合がいい。姫の前での俺は、

背の低いキモもオタクでいい。何故なら、一ヶ月だけの存在。


  「まて、そもそも何故本間さんを虐める?」


  美咲が少し考えて口を開く。


  「あいつは目立ち過ぎなんだよ。」

 

  「それだけで、たったそれだけで虐めたのか?」


  すると美咲は、気が変わったのか本間の事を話し出した。


  内容はこうだ。


  姫は当然入学当初から美少女で注目されてたらしい。

  で、一年の姫に男が寄ってくる訳だが、その中でも三年の人気のある

みつる”って先輩が

  交際を申し込んだらしいが、相手にされなかったらしい。


  まぁ、姫の性格からしてどうしていいか分からず

  何も行動できなかったのだろう。


  美咲はどうも充に憧れてたのか、好きだったのか普通以上の感情を

  持ってたのは言うまでもない。


  その憧れの先輩を馬鹿にされたと敵視する。

  聞くと、昔の姫はデブで不細工だったとの事。

  それを知るなり許せなくなったらしい。


  最初は小さな嫌味を言う程度だったが、全く気にしてない姫をどうにか

膝ま付かせたく

  エスカレートしたとの事だと解釈できる話だった。


  また、この空手部の実力者の堂本が美咲に惚れてるのだろう。

  いい様に利用できる便利な駒の様な存在のようだ。


  黒幕は美咲で間違いない。


  それも美咲のねじ曲がった嫉妬が周りの巻き込んでの虐めだった。


  「おいおい。嫉妬で逆恨みもいい加減にしろ。

   虐める無駄なエネルギーを自分を磨く事に使って、振り向かせる糧に

できなかったのか?」


  美咲は、何か言いたそうだが何も言わない。

  図星を突かれたからだろうか。


  「虐める趣味はないが、本間さんと同じ虐めをお前に味あわせてやろうか?」


  美咲の眉間にしわができる。なんだか火の粉に油を注いだようだ。

  今のは一言多かったか。ちょぼっと反省。


  「堂本、私がこんなに責められてるのに、シカとか!!」


  堂本と思わしき男が立ち上がる。そいつはボスらしき男。


  さっきから、この男以外に口を開いてない。こいつがインターハイに出場までして

  結果を残した男なのだろう。そうは見えないのが笑える。美咲ごときに

利用されてるだけの男?にしか見えないが。


  可哀想な気もするが、悪女の美咲に惚れた弱みだろう。

  だが、笑えない。人間は、異性と金に弱い。凡人ならば権力にも弱い。


  男の友情は、女と金でもろく崩れ去る。

  女の友情は、男と金で脆く崩れ去る。

  

  名言である。


  女は分からないが、確かに仲のよかった奴と、金の貸し借り以来

つるまなくなった事はある。


  俺は、本気で好きになった女が居ない。本気で惚れた女の為なら

  何でもできるのだろう。


  先に惚れた方が負け続けると言うが、男と女は化かしあいとも言う。

  まぁ、経験の無い俺には未知の世界には間違いない。


  よって、堂本の気持ちも分かる気もする。同情の余地あり。

  あの筋肉を見れば、努力したであろう痕跡はある。

  秀才タイプに見えたが・・・女で落ち続けるタイプなのだろう。


  

  「美咲を怒らせたから覚悟しろ。」


  「覚悟? 何が始まる?

   無理やり下手なウサギのダンスでも見せられるのか?」


  「フッ。その余裕が絶望に変わるのが楽しみだ。

   おい、稽古つけてやれ。」


  立ってた堂本が座り直し


  一人の男が立ち上がって俺の前で止まり構えを取る。

 

  「副将の川波さんが出たら俺たちの出番ないな。」

  

  外野から聞こえてくる。そして、ざわざと騒ぎ出す。実質No.2なのだろう。


  「餌まだだし、暇じゃないんだ。ボスに稽古を願いたいが。堂本だっけ?

   俺を的にしたいんだろう?」


  堂本が立ち上がって、川波に下がれと手で合図する。

  帯をきゅっと絞め直して俺の前に立つ。


  身長175cm以上はありそうだし、体格にも恵まれてる。

  俺は164cmウェイト的にもかなり不利に見えるだろう。


  しかし、負けるつもりは無いし、負ける気もしない。


  「俺も空手の心得がある。最初っから全力で来る事を勧める。

   身も心も準備ができたらいつでも来い。不意打ちでもかまわない」


  「俺も舐められたもんだ。しかし、見れば見る程真野ににてるな。

   真野に憧れて武術を始めたが・・・お前には関係ないか。」


  ・・・こいつ以外に良い奴かも知れない。


  と、同時に右の正拳突きが来る。


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