3人集まると・・・
3時限目の休み時間になった。警戒レベルはMAX。
奴らにしてみれば弱みを握られてる以上、一分一秒でも早く弱みを取り除き
安心したいだろう。
昼休みに勝負をかけると予想する。俺なら昼休みに失敗した時の為に、
放課後と言う保険をかけるからだ。この休み時間の後は昼休みになる。
前準備としては今しかない訳だ。
「さっきは、ありがとう。とても嬉しかった。
でも・・・巻き込んでごめんなさい。」
鈍い頭を回転させ続けて険しい顔になってるのだろうか。
姫が俺の顔を覗き込んで申訳なさそうに、ぽつりと言う。
わいわいしてる教室の中で、二人だけ取り残された錯覚に陥る。
「あっ。姫。ごみん。考え事してた。」
「さっきの人達でしょ?
その内の一人は小学校からずっと仲の良かった親友だった子なの。
何でも相談してたし、心から信頼してる大好きな親友だったから・・・」
その続きの言葉を待つが、それ以上は語らない。
だったから??何だろう。自分の立場で考える。
抵抗できない。
仲直りしたい。
変な人と付き合うの止めて欲しい。
そう考えるとあの中に ”三井郁美” が居た事は明白。
「その親友はどうして姫を虐める様になったの?」
俺の目を見るが何も返してこない。
・・・見ないでくれ。照れる・・・
「まぁいいや。でも、仲直りできたら昔の親友に戻れると思う?戻りたい?」
「うん!戻りたい!」
力強い返事が返ってきた。
登校拒否せずに、虐められながらも登校してたのは、
仲直りの機会を伺ってたのかもしれない。
「姫! 俺と一緒に仲直りの糸口を見つけよう!」
「うん!うん!! うっ。うぇぇん・・・・・・」
いきなり泣き出したが 顔は笑ってる。
一人で頑張ってきた。戦ってきた少女に光が見えた瞬間だったのか。
感謝の気持ちと嬉しさ溢れる感情が手に取る様にわかる。
本当に強く、優しい子。 顔は120点! それはさて置き。
こんなに優しい子を虐めてる昔の親友の心に少しの痛みがあればいいのだが。
「んで、三人の一人が元親友で、他の二人は?」
「他の二人は、違う中学出身で一年の時はクラスが違ったから、殆ど話した事ない。
でも三年の先輩とも仲が良くて、目立つ存在?みたいな感じ。」
話は続く。
「最初は、他の二人からの嫌がらせだったの。その時は郁美とまだ仲良くて、
その嫌がらせが毎日続き、郁美が精神的に参ったみたいで・・・
向こうの誘いにすぐに乗ってしまって。」
そっか。バックに先輩がいる訳ね。んで?
「郁美はずっと見てるだけで、何もしなかったけど・・・
今は逆転して郁美が中心に嫌がらせして他の二人が見てる状態に・・・」
まぁ。何だ。仲間には入ったものの、何もしない郁美に対して
一人でやるよう命じられたが、一度やると後に戻れなくなったパターンから
気が大きくなったって所か。
凡人は、一人では不満を口にしないが、三人集まればって奴だよね。
典型的な弱者の行動に笑える。
先輩からこんな話を聞いた事がある。
人間には大きく三つに分類できる。
① 天才
まぁ、天に与えられた才能。1を聞いて10を知る。
② 秀才
努力で天才に近づこうとする。10を聞いて10を覚える。
③ 凡人
周りに流され上からの指示を待つ。10を聞いて3を覚える。
凡人にはなるな。と言われたものだ。
全てに置いて、凡人は協調性が無い。あれば秀才タイプになる。
天才、秀才は一人で戦えるし、自分の意志をしっかり持ってる。
姫は秀才タイプだろう。
また、凡人と凡人以外の行動の例えがある。
移動用の足が欲しいとする。
天才、秀才は、周りの仲間を思い出し車を持ってる仲間が居れば、
自分の足は原チャリで十分だろうと、中古の原チャリを買う。
車が必要な時は友人にお願いする訳だ。
凡人は、中身の無い自分を良く見せたいのか、ローンを使用してまで
少し高級な普通車を買う。そして、燃料代に車検、税金とローン地獄が始まる。 情けない事にローンの為に仕事に追われる事になる。
自己満足の為に、小さな見栄の為に無駄な時間を費やすのだ。
また、天才、秀才タイプはローンをあまり使わない。
欲しい物は我慢し、必要な物をお金を貯めて購入するのだ。
凡人とはお金の使い方や考え方が根本的に違うのだという。
更に付け加えるなら、凡人は欲しい物と必要な物の区別が付かないともいう。
しかし、今は強制的に秀才にされるパターンが多い。
俗に親から勉強しろ勉強しろと強制されて、凡人が無理をして秀才を目指す。
当然無理が爆発する事が多くある。
ある意味、現代が作り上げた第④のタイプと言えよう。
③凡人と④タイプは一人二人は何もしないし、我慢する。しかし三人集まればどうだ。
突然強くなる。悪い事でも出来てしまう大胆さを手に入れる。
それが一人、二人に戻った時また弱い自分に戻ってしまう。
凡人の凡人たる由縁。
だが、凡人と天才の相性は抜群だが、凡人と秀才はそんなに相性は良くない。
しかし、小さい頃からお互いを見てきた仲なら別である。
一緒に成長した過程に置いて、凡人が秀才を目指すだろうし、
秀才が凡人に戻る事もある。
上記の例から郁美を孤立させれば、元の親友に戻れるはずだ。
事実、虐めのデータでは三人以上で一人を攻撃するケースが殆どである。
郁美を孤立させればこちらの勝ちだ。
そう考えてると、郁美が教室に入ってきて俺たち二人に近づいてくる。
当然だが、二人の供を従えて三人一セット。
「黄金チビの変態君? 昼休みに三年の堂本先輩が用があるって。
第二道場で待ってるから逃げずに来てね?」
「ええ?交際の申し込みか?」
「たーこ、堂本先輩は男だよ~~~」
供の一人が横槍を入れる
「ええ?? 男と交際する趣味は持ってないが?」
「アホと会話するのって疲れるわぁ~。確かに伝えたからね~。逃げるなよ?」
勝ち誇った表情が見てとれる。強力なバックなのだろう。
とメッセンジャーを務めて教室から出ていく。
案の定昼休みに手を打ってきたか。
「あっ。あの。堂本先輩って空手のインターハイで好成績残した先輩だから
先生に相談した方がいいよ!」
姫が心配して助言してくれる。
「姫は、郁美の事を先生に相談しなかったんだろう?」
無言でうつむく。
「命まで取られないだろうから行ってみるよ。」
「行かない方がいい。私の事に巻き込んで、こんな事しか言えないけど、行かないで。」
「姫は、心配症だなぁ~大丈夫大丈夫。俺って逃げ足だけはオリンピック級だから」
ぷぷっとお互いに笑い声が漏れる。
「ねね~姫って止めてよ。」
照れた顔が可愛い。
「んじゃ~何か字名付けていい?」
「別にいいけど。」
「んじゃ~ ・・・・・・・・・
・・・・・・チョロ子!」
「何それ?却下!!」
姫がカバンから”ぷっ○ょっ” てお菓子を取り出した。
「ぷっちょ!! 」
「ええっ?デブみたいじゃん。昔の私だけど。。」
「ちょじょん!! チョロ美! ぷちょ子!」
「まともなの一つもないし!」
二人の笑い声が教室にこだました。
4時限目を告げるチャイムが鳴り昼休みが近づくが、同時に二人の距離も急接近した。
そんな中、二人で授業は聞かずにメモ紙でやり取りする。
#趣味はなに?# 姫からメモがくる。
#萌えキャラの鑑賞!# 質問の下に書き足して返す。
#え~まんまじゃん!# またメモが戻ってくる。
#好みのタイプは? #
#太目の爆乳!! #
#z&W%&$#U&'U&YJ# 意味の無い内容の交換が続く。
これが学生か。めちゃ楽しいぞ。
俺の高校時代なんて汗臭い毎日で強くなる事が全てだったが。
そんな事を繰り返してると、昼休みを告げるチャイムが鳴った。
どちらとも無く、席から立たない。
姫にしてみれば、自分のできる事を模索するのに懸命で動かないのだろうか。
先に沈黙を破ったのは姫だった。
「ねね?弁当?」
姫が沈黙を破る様に口を開く。
「いや、購買部あればパンか何かにする。」
「学食あるから、そこで一緒に食べようよ。メンチカツ定食は絶品だよ。」
「おぉ。まじ?いいねぇ~ 俺みたいなの良ければ是非!」
「もぅ~~ずっと一人だから、こちらからお願いします。私、お弁当なの。」
クスっと笑う。この言葉には、虐めを受け入れて一人で孤立してるにも
関わらず強い意志で耐えて来た事を物語っている。
学食まで案内してもらい、自動販売機でメンチカツ定食を勧められ購入し
券とメンチカツ定食を引換て、空いてる席に座る。
と、周りから人が去っていく。学年レベルでの虐めの黙認の証拠である。
そして、何かあったのだろう。巻き込まれたく無いので距離を取る行動のようだ。
まるで汚い物から避けるようにそそくさと逃げる様な仕草が滑稽で笑える。
俺たちを中心に、人が居なくなった。
「ささ、食べよう。これがお勧めのメンチカツか。」
口に運ぶ。美味い。美少女の顔を間地かに見ながらだと、更に美味しさも倍増する。
「どう?美味しいでしょ?」
「姫と食べると何でも旨いと思うが。」
心の声が思わず口にでた。
「あ~。よいしょしても何も出ないぞ?」
「それは残念!」
二人して笑う。姫も楽しそうだ。
そんな二人を邪魔する様に、三人組が食堂に入って来た。
「おい!昼休みに堂本先輩が呼んでるって伝えたよな?
何してんだ!」
「ん?何してんだって?これがサッカーの練習してる様に見えるのか?
餌くらいゆっくり食わせろ。食ったら行ってやるよ。」
郁美が近くのヤカンを手に取り近づいてくる。
ベタだが、お茶を俺にぶっかけたりしないよな?
と、ぶっかけるつもりのようだ。
座ってる俺の頭の上に向けてヤカンの注ぎ口が向く。
とっさに、持ってた箸で口を向こうに向ける。
じょぼじょぼ・・・・
「おいおい。服が濡れたら代えが無いんだが?」
しぶきがかかる。
それはいいとして・・・一口しか食べてないメンチカツに掛かってる。
「・・・俺の餌にお茶が掛かってるんだが。当然弁償してくれるのだろう?」
「きゃはは、い~ざま~」 供の女子が笑う。
俺は立ち上がりヤカンと取り上げる。
「堂本先輩をまたせんなよ!」
捨て台詞一つで、食堂を出てこうとする。
「待て、俺のメンチカツ買って来い。そして濡れたメンチカツはお前が食べろ。」
ギャラリーが増えてきた。野次馬根性?ってか凡人に限ってトラブルは大好きの様だ。
「はぁ~?意味わかんない~」
そう言いながらも食堂から出ようと出口に向かっている。
「ざけんな。 何でも思い通りになると思うなよ!」
と言うと同時に、出口のドアを目掛けて椅子を投げた。
椅子は三人の前に着地する。三人は目を白黒させて歩みを止める。
「聞こえなかったか?俺のメンチカツだ。そして、お前がお茶をぶっかけた
このメンチカツはお前が食うんだ。
さっきも言ったよな?自分の行動に責任持てと。」
郁美と供は走って食堂から逃げた。逃げ足の速い奴め。
その無駄なエネルギーを違う事に使って欲しいと思ってしまう。
周りのギャラーが騒ぎ出す。
「君、思い切った事するね。でもスカッとしたよ」
ギャラリーの一人が馴れ馴れしく話しかけてくるが無視。
「見ない顔だけど、転入生?一つ忠告するけど、
もう彼女らには関わらない方がいいと思うよ。」
「ご親切にありがとう。が、そうやって困ってる奴にも関せず、
虐めにも関せず、
見て見ぬ振りを決め込む情けない男になりたくなくてね。」
ギャラリーAは、何かぶつくさ言いながら去って行った。
人の親切を・・・ぶつくさぶつくさ言っていた。
親切?そんなん知らん。
親切心があるなら、姫の虐めに対して親切心を求めたい。
濡れたメンチカツを見ながらそう思ってると郁美が男を連れて食堂に戻って来た。