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第2章 おまじない

膝をついて手のひらを合わせ、呪文を唱えるシルキーの指先には青白い小さな光が漂っている。

足の甲に指先を近づけると、漂っていた光は指先に集まり爪状に形成される。


―本で読んだ通りだ。

 これで相手の魔法をかたどったモチーフを描く。

 フロライト家は風。

 羽のようなモチーフが、本には書かれていた。


魔力を込め、指でなぞる。

相手の魔力を吸わないように触れる方法は、別の本で読んだ。

昔の悪魔には触れて魔力を吸うタイプが多かったらしく、多くの著書が残っていた。

…その本の多くは、魔法使いに触れて凄惨な最期を迎えた悪魔も多くいた事も教えてくれた。


「始めるよ」

相手の魔力を吸わないように。

自分の指先に全神経を集中させて。


彼女の足の甲に光る爪を当てると、同じように発光した。

モチーフの形に動かしていくと、光はその甲に吸収され形を残す。

時折ミルクはくすぐったそうにしているので、ズレないようにして描く。


「できた」

指先の光は大気中に融けるように消えていった。

ほんのり滲み出た汗を腕でぬぐいながら、ミルクににこっと微笑む。

「これで強くなれるの?」

その目は不安と期待が入り混じったような、でも、シルキーに信頼を寄せるような願いの目をしていた。

「強くなれるかは、ミルク次第」

シルキーは人差し指をミルクの頬にそっと、一本当てた。

「でも、そのお守りがある。俺が見守ってるから。大丈夫、一人じゃないから。」

ミルクはほんのり、頬を赤らめた。

「うん…ありがと、なんだか気持ちがあったかいよ」

二人に暖かで、親密な空気が流れる。

それも束の間、発光体がシルキーの周囲に現れ始め、体を覆い始めた。

「いけない、戻されてしまう」

次々と体を覆っていく発光体は、手と足を覆った。

「俺、このまま戻るんだ。往復の魔法だから、時間が来ると勝手にね…」


「頑張ってね、俺もまた来れるように…長くミルクに会えるように修行を積むよ」


パチン!と音を立ててシルキーは消えた。

ミルクはその一瞬に寂しさを感じた。

「シルキー……」

そして、足の甲を見つめる。

「夢じゃない…あたし、友達ができて、あたし、お守りもそばにあるなんて」

ミルクは両手で胸を抑え、微笑んだ。

そして飛び跳ねたり、くるりとその場で回転したり、じたばたとせわしなくはしゃいだ。

「友達!友達できたのね!魔法使いとかそんなのに関係ない友達なんて嬉しい!!」





―ブラッドリー城 大広間―


突如現れた発光体が、人の形に集合する。

「…っは…」

膝を付いて、幾分疲れたような形相でシルキーは戻ってきた。

「シルキー!どうしたっ!!」

慌てて階段を駆け下りてきたのは、兄のマリスだった。

駆け寄ってシルキーの肩に手を掛ける。

「お前、移動魔法なんか使って…」

慌てふためくマリスに手のひらをかざし、シルキーは立ち上がった。

「出来たんだ。出来たんだよ、最高の呪詛だよ…!!」

彼の全身には、恍惚の鳥肌が立っていた。



―彼は帰りの魔力をほんの少し「人差し指」で触れて調達していた。

その瞬間、快楽にも似た、体を熱くするような、強大な魔力が彼の体を突き抜けていった。

やはり、伝承は本当だったのだ。

シルキーは、興奮のあまり息を荒げた。


「ああ、最高だ…!!もっと欲しい、もっと…!!」

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