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6話 突撃!竹井家!

 

「うますぎるっ! このパリパリの海苔の保存料たっぷりのコンビニおにぎり!」


 俺、竹井陽人は只今後ろおにぎりを食べている巨乳美人教師(カッター装備)こと桐ヶ谷七栄先生を連れて家に帰っていた。ついでに言っておくがこの先生はかなりのド貧乏なのでお金を持ってないことにより、彼女が持っているおにぎりは俺が買わされたものだ。しかも100円(税抜き)とかの一番安いやつとかじゃなくておにぎりの中で高めのやつを3つ買わされた。合計470円で増税のおかげで508円になりやがった。5%だったら500円以内で済んだのに。コンチクショウ! いや、それ以前に桐ヶ谷先生がおにぎり買いたいなんて言わなきゃこんな出費はなかったんだ。

 桐ヶ谷先生は道中にあるコンビニを見つけるとお腹を鳴らして涙目で何か買ってと言ったのだ。それを断ると、子供がおもちゃ売り場から離れなくなる時みたいにそこから動かなくなるのだ。ってか、この人本当に教師かよ。もはやこどもじゃん? もうこの人を先生と呼ぶのやめようかな。

 俺たちは夕焼けの住宅街を歩いていると、二階建ての一般的な一軒家にたどり着く。ここが俺の家だ。

 二階の一室に電気が点いている。そこは妹の夜月の部屋だ。どうやら夜月は既に帰っているらしい。


「ここが竹井くんの家なんだね?」

「まぁ、そうですけど」

「あぁ。今日会ったばかりの男子生徒に家に連れ込まれるなんて。こんなハレンチな展開」


 顔に手を当てながらそんなことをほざきやがるオッパイカッター教師。なんでこんな人が教師なんだよ。本当に教師免許持ってんのかよ。


「竹井くん。私を食べ物で家に釣ったあとにどうしようとしているのかな? この思春期少年め」

「桐ヶ谷せんせ……桐ヶ谷さんちょっと黙っててください」

「なんで言い換えちゃったのかな」

「胸に手をあてて今までのことをよく思い出してください」


 ったく。少しでも思い出してもらって先生と呼ぶに値しないことをしていると自覚してもらって反省して欲しいものだ。

 桐ヶ谷さんはその豊満な胸に手を置いて数秒すると


「……お腹空いたということかな」


 この人に反省を求めた俺が悪いのか? 呆れて俺は肩を落とす。


「大体、あんた。さっきおにぎり食い終わったでしょうが!」

「五日分の空腹は伊達じゃないのよ」


 そんなドヤ顔で言われてもなぁ。

 まぁいいや。そんなことよりもだ。俺は今、どうしようかと悩んでいる。それは俺の家にどうやってこの桐ヶ谷さんを入れるかだ。

 この時間だと家には母さんがいる。そんな家に成人女性、しかもウチの母親と面識のない女性を高校生の息子が連れて帰ってきたら母さんはどう思うだろうか。何かしらの誤解を受けて変な空気になって、息子がなにか良からぬ事をしてるんじゃないかしら?なんて思われる……と、思う。つまり決してプラスにはならないだろうということだ。

 それにウチには妹の夜月がいる。その夜月に誤解されて変な目で見られるなんてことも。ただでさえミニマム化の呪いで機嫌が悪いし昨日からは俺が裸を見ちゃってるからそれらが重なって俺を兄とは違うなにかを見る目で見てくるかもしれない。

 以上のことから桐ヶ谷さんを家に入れるのに躊躇っていた。

 なにか無いかななんて考えながら桐ヶ谷さんの方を見てみるとそこには姿がなくて


「お邪魔しまーす。桐ヶ谷七栄というものですがー。『突撃! となりのディナー』という番組のスタッフですけど」


 いつの間にか桐ヶ谷さんは我が家に突撃していた。

 って! ちょっと待てぃ!

 俺が桐ヶ谷さんに焦って駆け寄るとそこには既に俺の母さんが玄関で対応に入っていた。


「まぁ! あのヨネスケの有名番組!? きゃあ。私、若い頃見てたのよ~復活したの~!?」


 いつもぽわぽわした感じの母さんだが、今はすごくテンションが上がっていた。 


「あはは。お母さんそんなに興奮なさらないで。今日はここの辺りの主婦の普段の料理がいかほどなのかを番組のスタッフが下見に来たんです。もしよければあなたの家の晩御飯を食べさせてはいただけませんでしょうか。もし美味しかったらあのヨネスケが来るかもですよ」

「いいですよ~どうぞ~上がってください」


 よくもまぁ。そんな嘘が出てくるもんだ。そしてその嘘を信じてしまう俺の母……大丈夫か?


「か、母さんいいのかよ。あの人家に入れても?」

「あら。陽くんおかえり。大丈夫よ。そんなことよりヨネスケが来るかもしれないのよ。今から追加の買い物行ってくるから。陽くんはスタッフさんにおもてなしすること」

「は、はぁ…」


 そういって母さんは財布を持って買い物に出かけていった。

 そういえば『突撃! となりのディナー』っていう番組って普段どうりの食事を出さないで豪華なものを出すと番組で没になるって聞いたことあるんだが……


「ほら。どうしたの?竹井くんさっさと夕御飯」


 遠慮なくずかずかと家に入っていく桐ヶ谷さん。

 オイコラ。あんた、目的忘れてない?

 まぁなんにしても我が家への侵入は少々強引だけど完了したということで……いいのかな。


「あの、桐ヶ谷さんはリビングで待っててください。部屋から打出の小槌持ってきますから」

「ん~了解~適当にくつろぐよ」


 俺は桐ヶ谷さんをリビングに案内してから階段を上がっていく。

 ふと、俺が2階に行っている間に桐ヶ谷さんがウチの晩御飯をつまみ食い……というかすべて食べてしまうなんて光景が頭によぎる。いや、まさかそんなボケをかましてくるわけないよな。そう信じたい。信じたいんだけど少し急いで打出の小槌を取りに行こう。

 そういえば打出の小槌って夜月の部屋に置きっぱなしだった。それを思い出した俺は夜月の部屋の前で立ち止まる。


「本当にこれを振るだけでいいの?」


 部屋から聞き覚えのある声が聞こえた。しかしこれは夜月の声ではない。


「ん? あかねちゃん?」


 そう言いながら俺はゆっくり扉を開けると打出の小槌を持ったあかねちゃんがベッドに向かって振っていた。そのひと振りのあと、あかねちゃんは俺に気づいた。


「あ、お兄さん」

「いらっしゃい」


 ここで一つ疑問が生じた。それはここになぜあかねちゃんがいるのか?、ということではない。あかねちゃんがこの家に遊びに来ること自体はよくあることだからそこは疑問にする必要は無い。

 その疑問とは何故あかねちゃんが打出の小槌を持っているのかということ。

 その疑問もすぐに解決することになる。

 ベッドに何やら輝かしい光が放たれた。その光は座った人型を象っていて、だんだん大きくなっていくのがわかる。人型の光はある程度大きくなると光が消えて一人の黒髪ロングの女の子が出てくる。その生まれたままの女の子のことは俺は昔から知っている。


「は~よかった。ありがとう。あかね。あかねがいなかったらどうなってたことか……」


 あかねちゃんの視線の先が気になったのか女の子はその視線の先の俺の方を見てきた。

 妹と目が合った。


「兄貴……」

「よぉ。夜月……お、お兄ちゃんですよ~~あはは」

「おのれ……」


 夜月は声のトーンを落として表情が曇った。

 なんだろうデジャブかな。昨日から数えて3回目かぁなんて考えていると顔面に何かが飛んできた。それが白い枕だとわかったときにはもう避けることはできなかった。

 クリティカルヒット。ボーナスポイントゲットやったね。

 枕があたって俺は鼻を抑えながら二歩三歩と後退する。

 ベットには掛け布団に包まる夜月が殺気立って俺を睨みつけていた。


「兄貴!! おまえは何回私の裸を見る気!? 殺す!」

「ちょっ! 待て! 別に好きで見てるわけじゃ。ていうか俺が何回も好きで、故意で、覗き見ているみたいなことを言うんじゃねぇ!」

「そう言う割には鼻から血出すってどういうことよ!」


 そう言われて俺は初めて鼻から血が出ている事に気付く。手についた血にびっくりなんじゃこりゃー!

 まさか……俺が妹の裸体に興奮して……?いやいや、違うだろ。さっきの枕攻撃の打ちどころが悪かっただけだ。だって鼻痛いもん。

 ふと、あかねちゃんの方を見てみると


「そ、そんな……お兄さん……あぁ」


 かなり真剣な顔をして何かを考え込んでいる。そして膝をついて座り込んでしまった。

 や、やばいよ? な、なにか誤解される! 俺が妹の裸で興奮する変態だって勘違いされる!なんとかしないと。


「違うからね! あかねちゃん」

「あかね。あの人はバッチィからもう近づいちゃダメだからね」

「おい! 夜月! おまえが枕投げつけるからだろうが」

「なによ! バカ兄貴が部屋に入るからでしょうが!」

「どこぞのラノベみたいに裸になってるとは思わないだろうが! なんならさっきの光をずっとまとっておけよ!」

「はぁ? 何言ってんの? バカ兄貴のバカ!」

「バカバカってお前はバカしか言えねぇの?! バカ妹!」


 俺たちがにらみ合っているとあかねちゃんは俺の方を見て何かを呟いた。


「理解しました」

「え? あかねちゃん?」

「やっぱり貧乳は嫌ですよね」

「あれ? あかねちゃん? なにか誤解されてるなーと思ってたんだけどなにか違う方向に誤解されている気がする」

「あかねなんてあかねなんて……胸……ないですもんないですもん」

「いや、あかねちゃんはまだまだ希望あるからね。まだそんなに気にする必要なんてないと俺は思うよ?」

「どうせ男の子は胸ですよね。大きい方が好きですよね! 貧乳……というか、まな板なんて……」

「そんなことないよ! よ、世の中には小さい方が良いっていう人だっているんだから」

「少数意見なんていりません!」

「え、えーと俺は小さくても気にしないよ!」

「そんなこと言って、あかねよりも遥かに大きい夜月ちゃんの胸見て鼻血出してたじゃないですか!!」

「違うから! 枕ぶつけられたからだから!! ていうか何言ってもダメなのかこれ?!」


 今にも泣きそうなあかねちゃん。

 なんてこった。こんなことになるなんてどうすれば……。俺は夜月を一瞥する。

 おい。夜月! なんとかしてくれよおまえの友達だろ? 

 俺の視線に気づいたのか夜月は戸惑いの色を出したままあかねちゃんに話しかけようとする。


「あ、あかね。あのさ……」

「夜月ちゃんはいいよね。わたしと同い年だっていうのに胸がしっかりあるんだから」

「大丈夫だよ。牛乳毎日飲んで、あかねが努力してるの知ってるんだから」

「夜月ちゃん?」

「ん? どうしたのあかね?」


 あかねちゃんが一息つく。


「同情するならその胸くれ!!」


 その声に夜月が黙ってしまった。なんだかよくわからない気迫に押されて夜月は言葉を紡げなくなったようだ。

 その時、ドタドタと階段を駆け上がってくる音が聞こえた。


「竹井くーん! 台所に肉じゃがあったんだけどちょーと食べてもいい? ていうか食べちゃったんだけど」


 扉の方から聞こえてくる楽しそうな声に俺は振り向く。そこには肉じゃがを入っていたのであろう空の鍋とそれらをつまむための箸を装備した桐ヶ谷さんがいた。


「いやー。あんないい匂いのするリビングに置いてけぼりにするなんて拷問だよ。ちょっと食べようと思ってたけど我慢できなかったよ竹井くん。君のせいだからね。それで…………」


 ここで桐ヶ谷さんの言葉が止まった。

 それも仕方ないことだと思う。いくら俺の想像通りにつまみ食いを通り越すぐらいにつまみ食いをするというボケをかますような桐ヶ谷さんでも今の俺たちの状況を見れば言葉を失うだろう。


「やっぱり。お兄さんは大きい方がいいんですね……家に連れ込むぐらいですもんね。胸の大きい人を……うぅ…うぅ……」


 後方のあかねちゃんがそういって鼻をすすり始めている。もしかして泣いてるの?!


「ねぇ。なにこれ竹井くん」


 俺の後ろ……夜月の部屋内を桐ヶ谷さんは見ながら聞いてくる。

 んーなんだろうね?

 今は掛け布団を一枚羽織る裸の女の子と泣いてる女の子と鼻血出してる男が同じ部屋にいるという状況だ。その状況から分かることは端から見れば男が鼻血を出しながら女の子たちにいやらしいことをしようとしていると誤解されるだろうなってことだ。


「なぁ。竹井。私これでも教師だからさ。これは見逃せないわ」


 桐ヶ谷さん。いや桐ヶ谷先生が俺の肩を掴んで真剣な眼差しで俺の瞳を見つめる。

 やっぱり誤解されたよ。うわぁ先生の目が怖い。さっきの肉じゃが食って嬉しそうにしてた顔はどこいったんだよ。カッター持ってる時みたいに怖い。


「あとで補習よ」


 俺は夜月の部屋から桐ヶ谷先生に首根っこをつままれてつまみ出された。



 *****

 


 なにがショックって保健室で生徒にカッターを投げつけたり脅したりするような人に、俺が女の子達に手を出す変態だって思われたことだ。なんだこれ。悔しいよ。

 俺は自室でベットの隅に小さくなっていた。鼻血はそんなにひどくはなかったためすぐに止まった。

 トントンっという扉を叩く音が聞こえる。それに対して俺は「どうぞ」と返す。入ってきたのは桐ヶ谷先生だ。


「いやー災難だったな竹井くん。君の妹さんの夜月ちゃんに情事は聞いたよ……あ、間違えた。事情は聞いたよ」

「洒落にならない言い間違いしないでください。ていうかわざとでしょ」

「噛みまみた☆」

「……」

「噛みまみた☆」

「何度言ってもつっこみませんからね」


 どうやら誤解はとけているようだ。そのおかげなのか桐ヶ谷先生から桐ヶ谷さんに切り替わっている。


「でも陽人くん。いくら妹さんでも裸になっているんだから気遣って、すぐに外に出てあげるべきでしょ」

「あ、はい。それは反省します」

「鼻血大丈夫?」

「まぁなんとか」

「それにしても興奮で鼻血とか古いよ?」

「興奮じゃないから!」


 桐ヶ谷さんはベットに腰掛ける。しかも隣に。

 しばしの沈黙……

 うっ! なんだ! 男女が同じ部屋にしかも俺の部屋にいるってなんか意識してしまう! それも仕方ないよな。この人、かなり美人だもん。なんというか大人の色気もムンムンだ。しかも大きな胸。さっき、あかねちゃんには胸の大きさなんて気にしないなんて言ったけど、やっぱり男の性なのか見てしまう。


「あれあれ? 陽人くんもしかして、女の人と部屋で二人っきりだから意識しちゃってる?」

「なっ!」


 恥ずかしながら図星。でもここは必死に頭を振って否定する。


「違いますから!」

「その割には鼻から血が出てるけど?」

「これはまだ血が止まってなかっただけです!」

 

 俺はテッシュで鼻血を止める。桐ヶ谷さんは「ウブだねぇ」と楽しそうに笑う。


「さっきから気になってたんすけどなんで俺を下の名前で?」

「嫌?」

「いえ、別に……」


 ちょっと変人な桐ヶ谷さんだけど外見は巨乳美人先生なのだ。そんな人に名前で呼ばれたら多少なりとも照れてしまうんです。

 さっきから桐ヶ谷さんがめっちゃ見てくるんですけど……。ちょっとドキドキする。

 ここで夜月とあかねちゃんがノックしてから部屋に入ってきた。夜月は私服に着替えていた。あかねちゃんは落ち着いたようだ。


「そこの人は誰なの? 兄貴」


 夜月は俺を見ずに桐ヶ谷さんを注意深く見ながら聞く。

 

「えっとだな。俺の学校の先生で桐ヶ谷七栄先生。今日、ウチの学校に赴任してきた先生」

「よろしくねー」

「先程はどうも」

「はじめまして」


 夜月とあかねちゃんはそれぞれ会釈する。

 桐ヶ谷さんは立ち上がると二人をまじまじ見つめる。


「それにしてもなかなか可愛い娘たちよね。ところで夜月ちゃんの隣のちっちゃくて可愛い子の名前はまだ聞いてなかったね」

「星宮あかねです……あの、ちっちゃいって言わないでください」

「えーどうして? 可愛いじゃん」


 少々不機嫌気味なあかねちゃんにも気にせず桐ヶ谷さんはあかねちゃんの体を抱く。そんな突然のスキンシップに「や、やめて、ください」と戸惑いの表情のあかねちゃん。次第に顔が赤くなってきた。どうやら抱かれることによって押し付けられる大きな胸があたって、あかねちゃんが恥ずかしくなったらしい。……うらやましいな。


「で、なんで兄貴の先生がウチに来てるの?」


 あかねちゃんと桐ヶ谷さんの様子に少々気にかけながらも夜月がそう聞いてきた。


「桐ヶ谷さんは俺たちが持ってる打出の小槌が欲しいんだって。それでおまえの問題が解決したら譲るっていう約束したんだ。今日、この人が来たのはその打出の小槌を見たいから来たっていう訳」

「それと竹井家の夕御飯をいただきに来たよ~!」


 あかねちゃんを抱きながら叫ぶ桐ヶ谷さん。


「打出の小槌とウチの夕食。どっちが目的なの? あの人」


 夜月が俺の部屋の机に置かれている肉じゃがが入っていた鍋を見ながら言った。これは桐ヶ谷さんが食べたものだ。


「さ、さぁ?」


 正直な所俺にもわからない。

 きっと『打出の小槌が欲しい=お金が欲しい=食事がしたい』ということなんだろうけど……

 まぁそんなことよりも夜月のことだ。


「夜月。それでミニマム化はどうなった? って聞くまでもないか……」


 俺が夜月の部屋に入ったときに元のサイズに戻る夜月(裸)を見ているのだ。つまり今日では解決しなかったということだ。


「学校で小さくなったんだけど、あかねがいなかったらどうなっていたことか。あかねにはちゃんと事情を話してるからね」


 なるほど、あかねちゃんが打出の小槌で夜月を大きくしていた理由はそういうことか。


「学校で小さくなったのか?」

「うん。ネットには使用効果は12時間って書いてあったのに」

「個人差があるってことなのかね。それでえーとイケメン君の竜王寺くんと話したのか?」

「話したんだけど、あの人が本当に呪いをかけた人かはわからなかった」


 真剣な表情で考える夜月。

 ここであかねちゃんを愛でていた桐ヶ谷さんが挙手して発言し出す。ちなみにあかねちゃんは抱きつかれ過ぎて目を回して、されるがままになっている。


「そこで真剣な話をするのはいいんだけど、私に打出の小槌を見せてくれない?」

「……いいですよ」


 夜月は自室から持ってきた打出の小槌を桐ヶ谷さんに手渡す。

 桐ヶ谷さんはあかねちゃんを解放すると、打出の小槌を手にとってルーペのようなもので真剣な眼差しで覗き込む。しばしの観察のあと、ケータイの写真で撮影した。


「どうやら、本物みたいね。……夜月ちゃんが小さくなったんだよね?」


 桐ヶ谷さんは夜月を一瞥してから俺に確認をしてくる。俺は首肯で返す。


「証明できるものとかあるかな? 例えば写真とか」


 流石に写真なんて撮っていなかった。撮ろうとしてもきっと嫌だって言って撮らせてもらえないだろうし、撮ったら怒られるだろう。

 

「あかねがさっき撮りましたよ」

「えっ! いつの間に」

「ごめんね夜月ちゃん。可愛かったからついこっそりと」

「あ、あかね!」


 あかねちゃんがケータイの写真を見せてくれた。

 ナイス。ナイス。

枕の上にちょこんと乗った小さい夜月が写っていた。表情が少々不機嫌。

 桐ヶ谷さんはこれをふんふんと眺める。

 俺はこれを眺めているとある事に気づいた。それは今朝の夜月と写真の夜月は大きさが違うということ。明らかに大きさが違う。およそ三分の一くらいの大きさになっている。写真だから小さく見えるとかではないはずだ。

 気になった俺は夜月に聞いてみる。


「夜月、今朝より小さくなってないか?」

「うん。かなり小さくなった」

「たしか、三センチくらいしかなかったですよ。夜月ちゃん」


 あかねちゃんは夜月の小さい姿を思い出しているのかすこし頬を緩ませながらそう言った。

 どういうことだ? と、俺が首を傾げていると桐ヶ谷さんがわざとらしく咳払いをして、俺たちの注目を集めた。


「私が解説するよ。打出の小槌がなんなのか。夜月ちゃんに何が起こっているのかをね」


 桐ヶ谷先生は自信ありげに教師らしく豊満な胸を張って言った。 



さぁ打出の小槌とはなんなのか? 夜月になにが起こっているのかについて次は話を進めていきますよ!


次回もお楽しみに~。

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