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~くちづけ~
雪の降り始めた街を歩いていると、ビルが並ぶ路地の暗く狭い隙間に、
顔がぐしゃぐしゃになった女が立っていた。
彼は煙草をくわえながら、しばらく女を見ている。
女もこちらに気が付いた様子で話しかけてきた。
「わたし、醜いでしょう?
気持ち悪いでしょう?
わたし、このビルから飛び降りたら、
こんな顔になってしまったの・・・・・・」
彼はずっと女を見ている。
「あら、あなた、逃げないのね。
珍しい。
みんな、わたしを見ると逃げるのよ!」
しばらく響く女の笑い声。
それからまた女はおろおろとつぶやきだす。
「わたし、顔がもとに戻らないの・・・・・・。
いつまでも、きっとこの顔のままなんだわ。
醜いでしょ?気持ち悪いでしょ?怖いでしょう?」
彼は黙って女をかるく抱き寄せ、くちづけをした。
女の顔は飛び降りる前の愛らしいものになり、
そして消えていった。
さて、ずいぶん冷え込んできた。
酒場に早く行こう・・・・・・。
そうつぶやいて新しい煙草に火を点けて彼は立ち去った。




