第6話 授業風景 ~模擬戦2~
……すいません、またくだらんミスを…(題名忘れ)←訂正済み
うう、気をつけます…
「さて、ルール説明だ。と言っても、ルールは簡単。相手に降参と言わせるか、コートの外に追い出せば良い」
そう言って、シュリア先生は槍を構えた。
模擬戦開始、の前に二人はそれぞれの証に魔力を注ぎ込み、刃を潰す。このように、証は魔力を注ぎ込むと、ある程度の形を変える事が出来る。
刃引きを終えた事をお互いが確認すると。
ーー先手は、シュリア先生がとった。
ダッと地面を駆け抜け、小手調べとばかりに槍が動き、低い位置からすくい上げるように振りきった。
タクトは、それをあっさりと防ぐ。
それを見たシュリア先生はほうっ、と感心する。
不意打ちの一撃をかわしたばかりか、今のも見事に防ぎきったのだ。
表情に、自然と笑みが浮かぶ。
「やはり」
そう呟き、あっさりと防がれた槍を引き戻すなり、その場で回転。今度は逆方向から振り下ろす。
「っ…!」
突然、攻撃のベクトルが変わった事に驚き、タクトは驚愕の表情を浮かべる。
(早い…!)
「そこそこ出来るようだな!」
尤も、驚いたのはその速度だが。
襲い掛かる槍を、刀を振るいさばいた。それだけでなく、今度は逆襲とばかりに返す一撃を叩きこむ。
が、彼女は槍を振るいあっさりとそれを弾き、ニッと再度笑みを浮かたシュリア先生は槍を突き出す。
突き出された槍を、タクトは右に一歩ズレることであっさりかわす。
さらに彼は前へ踏み込みーー。
「はぁっ!」
短い掛け声とともに斜め上へ振り上げる。
「…残念だな」
しかし、その一太刀は、シュリア先生はただ呟きとともに振るわれた証ーー槍によって防がれる。
斜めに立てた槍の柄と鍔ぜり合いになり、タクトと拮抗する。
「くっ…!」
呻き声をあげて、タクトは腕に力を込め刀を押す。
しかし、シュリア先生はたいした力を込めたようには見えないのに、いくら押しても全く動じない。
そればかりか、これみよがしにうっすらと人をくったような笑みを浮かべる。
それを見て、タクトは顔をしかめる。
このままではラチがあかない。
そう、このままでは!
「霊印流 壱之太刀ーー」
突如、タクトが呟いた言葉。
それを聞いて、シュリア先生は驚愕した。
「お前、それは……っ!」
何か言いかけ、しかしすぐにあることを思い出す。
今目の前にいる彼、桐生タクトは”彼の従弟”なのだ、と言うことを。ならば、彼と同じ”剣術”を使えても、なんらおかしくはない。
驚きに目を見張るシュリア先生をよそに、タクトの持つ刀の刀身が、半透明の何かーー魔力で覆われる。
そして彼はそのまま。
「”爪魔”!」
刀を、押し切った。
押し切った刀は、そのままシュリア先生を吹き飛ばし。
「くっ……!」
彼女は、吹き飛ばされながらも槍を地面に突き刺し、そのままガリガリと土の地面を削ながらスピードを緩める。
後一歩分、と言うぎりぎりの所で、コートの外に追いやられる事を防いだ。
「……っ」
そのまま、顔をしかめながらシュリア先生はキッとタクトを睨む。その視線を受け、しかし構わずタクトは追撃をかける。
その、次の瞬間ーー。
タクトが一歩踏み出した。それを見て、シュリア先生は目を見開く。
「しまっ……!」
彼女は、皆まで言うことが出来なかった。
霊印流 歩法、瞬歩ーー。
たった一歩。そう、たった一歩踏み出す。それだけで発動する、高速移動。
その速度は並ではなくーー。
次の瞬間、タクトは彼女の目の前にいた。
つまり、目で追うことが出来ない。それほどのスピードを持って、タクトはシュリア先生の目の前に移動したのだ。
しかも彼は、移動中にやってのけたのか、”攻撃の予備動作”を終わらせていた。
それが何を意味するかーー答えは、すぐに出た。
彼が現れる、と同時に。
タクトは刀を振るった。
シュリア先生は、タクトの一撃を受け止めた際、後一歩でコート外に出てしまう所まで追いやられた。
もしここで、彼が先程放った爪魔なら、確実に追いやることが出来たであろう。
しかし彼はーー。
「ーー詰めが甘い」
”魔力を纏わせていない”一太刀を、彼女は難なく受け止めーー。
「しまっ……!」
先程のお返しとばかりに、槍の一撃を喰らい彼は吹き飛んだ。
~~~~~
ふうっとため息をつき、彼女はタクトを吹き飛ばした方を見やる。
そこには、大の字に倒れたタクトがいた。ーー苦しそうに胸を上下させている。
まぁ、当然だ、と彼女は思った。何せ、お返しの一撃は彼の鳩尾にたたき込ませたのだから。それで動く奴はかなり頑丈である。
しかし、タクトはしばらく寝っ転がっていると、やがてその場で跳ね起き。地面に転がった証をひっつかみ、正面で構えた。
どうやら、見た目に反して頑丈な奴らしい。
そのことに、シュリアはふうっとため息をついた。
(まるで、あの人ね)
突如、彼女に宿る精霊が話しかけてきた。
(戦い方も、剣の太刀筋も、ほんとそっくり。そう思わない?)
(……たぶん、アイツとあの人から教わったんだろう。そうじゃなきゃ、あの年でここまでやる説明がつかない)
シュリアはそう返して、手に持つ槍を右手でだらりと持つ。
そして、残った左手を前に突き出し、一言呟いた。
「…来る!」
タクトは刀を握る手にさらに力を込める。
シュリアの呟きに反応して、彼女の左の手のひらに赤い魔方陣が展開される。
何が来る、だ? 彼女はタクトの言葉を聞いてそう思った。ーー何せ、これからやることは精霊使いにとっては、基本の戦い方なのだ。
思わず首をかしげてしまったが、すぐに邪念を追い払いーー。
「行け、炎竜」
その魔方陣から炎が生まれ、その炎が竜の形状を型どり、タクトに向かって一直線に突き進む。
「て、炎竜!?」
タクトが驚きの声を上げるが、すぐにハッとして、その場で飛び上がることによってシュリアが放った炎竜をかわす。
しかし彼女はタクトの取った回避行動より、彼が驚きの声を上げた方に感心した。
(やはり、知っていたか)
(そりゃ、彼の従弟だもん。…たぶん、何度か喰らっていると思うよ)
彼女の精霊ーースフィヤからの言葉に、シュリアは思わず頷きかけた。
それほど、彼の回避の仕方はうまかった。ーーかくゆう自分も数回喰らっているのだが。
その事実を思いだし、シュリアは顔をしかめる。
(手加減なしだったからな…)
その時の事を思いつつも、今は関係ないので放っておく。
炎竜をかわしたタクトは、重力に引かれて地面に着地する。
すると、彼はパッと地面を駆け出し、シュリアとの距離を詰める。もちろん、瞬歩を発動させて。
「く…!」
突如目の前に現れたタクトを見て、シュリアは歯がみする。しかしこのスピードは、彼との模擬戦で何度も見ていた。
故に、反応することは容易い。
槍を振るいタクトが放った刀を弾きーー。
「はぁ!」
「っ!」
掛け声とともに返す一撃で再度タクトを吹き飛ばした。
「っの!」
吹き飛ばされつつも、何とか体勢を整え、足から着地する。
チラッと後ろを見る。
そこには、先程のシュリアと同じ、後一歩と言うギリギリの状況が再現していた。
「くっ!」
うめき声を上げ、片足で一歩踏み出そう前を向いてーー。
竜の形をかたどった、炎の塊が目の前にあった。
驚愕に表情を固まらせーー。
直後、炎の龍がタクトを飲み込んだ。
~~~~~
目を回して気絶したタクトを見て、シュリアはやれやれとため息をついた。ーー実際、かなりまずい戦いになってしまったが、何とか教師の面目を保つことに成功した。
(相変わらずの、無茶する家族だな)
しかし内心の思いとは裏腹に、自然とその顔に笑みが浮かんでいく。
(やっぱり、あなたの従弟ですね)
心の中で、その”彼”に呼びかけた。
その後すぐに手をパンパンと叩き、今までの模擬戦を見て驚愕したままの生徒達に呼びかけた。
「さて、これで模擬戦は終了だ。……それから、女装の件だが……」
シュリアの言葉がそこに差し掛かったとき、周りの女子達が期待を込めた視線を送ってきた。
しかし、彼女はその視線を完全に無視し。
「本人が気絶したため、この件はなかったことに」
そう言うと、一部の女子達からブーイングの声が上がる。ーーが、たったの一睨みでそれらすべてを黙らせた。
元々、シュリアとしては無理矢理女装させようなどとは少しも思ってもいない。
ただ、色々試した結果、こういうふうにしたら相手が全力を尽くしてくるので、自分としてはとてもやりやすいのだ。
コホンっと一つ咳払いをし、
「さて、今度はそれぞれ二人ずつになって模擬戦開始だ。私が最初に言ったルール、それさえ守ってくれたらあとは何をしてもいい」
そう言った後、残りの生徒達を見比べ、
「では、始め!!」
鋭い声で、そう言い放った。
余談だが、タクトは心優しく、良心のある男子生徒数名に医療室にたたき込まれた。
模擬戦2、終了です。
これの後は、解説等、ですね、今のところ。
ああ、めんどくさい(オイ