表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の担い手  作者: 天剣
1年時
8/261

第6話 授業風景 ~模擬戦1~

天剣でっす


ようやく、戦闘っと思いきや。


うう、相変わらず文を長く、そしてうまく書けない……。


(……なんでこうなったの?)


タクトは片手に刀ーー日本刀を持ち、目の前にいるシュリア先生を何ともいえない表情で眺めながらそう思った。

彼女は今、両手に似つかわしくない槍を持ち、タクトにその切っ先を向けている。


「どうした?あまり不抜けた顔をしていると気絶させるぞ」

「めちゃくちゃですよ」


その発言にため息を漏らしながらタクトは刀を両手で構えた。

正直、かなり嫌々である。

しかし引くわけにはいかず、彼は今、自分の担任に刃を向ける。


「桐生くーん、がんばって-!」

「応援してるよ-!」


と言った、女子生徒の力の入った声援や、


「がんばれ桐生~」

「負けたら地獄を見るぞ~」


男子生徒の不抜けた声援。それはまだ良い。ーーまだ、良心がある証拠だ、と。

その声援を送っている隣ではーー。


「桐生君、がんばらなくて良いんだよ!」

「と言うか負けて!!」

「ねぇねぇ、この服似合うと思う?」

「う~ん、それも良いけど、私的にはこっちかな?」


一部の女子生徒が、様々な服を眺めながらそう言っていた。

その様々な服ーー端的に言うと、女物だった。

フェルアント学園の女子制服やら、フリルのたくさんついた上着やらスカートやら。

それらをちらりと見やり、タクトはその服らをズタズタにしてやりたいと言う感情が吹き出す。

体が先ほどからぶるぶる震えているが、それすらも無理矢理押さえ込み。

ーー代わりに、刀を握る手に力を込める。

早く始めましょうーーそう言いたいのだが、その前に一つ聞きたいことーーと言うか頼みたいことがあった。


「…後生の頼みです、手加減してくれませんか?」

「断る。お前、さっきの言葉の意味、理解したか?」

「……うっ…」


切実に訴えた頼みも、即答で跳ね返され、その目に涙をにじませる。

自分でもかなり情けないと思いつつ、しかし恥を忍んで言ったのに、だ。即答だと、なかなかにくる物があった。

だが、タクトは気づいていないが、涙目になった彼は小動物のような愛くるしさがありーー


「ああ、泣いてる!」

「…かわいい…」


ーー今すぐにでも帰りたくなった。

隅の方で男としてのプライドをずたぼろにすることをほざいている奴らを無視、助けを求めるべく男子の方に目を向けるがーー。


『がんばれ』


声に出さずに、哀れみを視線に込めながらグッと親指を突き出す男子達。

それを見て、ああ、味方がいない、とあきらめた。まさに四面楚歌とはこのことか。


(ああ、もういい。やけくそだ!負けたら、その時はその時だ!)


もはや楽観的ーーと言うか自暴自棄になり、タクトはふうっとため息を一つ吐き。


「…お願いします!」


そう言って、シュリア先生に対し、刀を向けた。


 ~~~~~


タクトが戦うことになった数分前。

そこでは、こんなやりとりがあった。


「それでは授業を始める…と言っても、模擬戦だがな」


とりあえず、模擬戦の授業を選択したタクトは、予定表に書かれていた通り、第二アリーナと言うところにやって来た。

ちなみに、外に建てられていたため、先輩方に場所を聞かなければわからなかったであろう。

それはともかく、やって来たタクトは同じく模擬戦を選択した人たちと談笑しつつ待っていると、槍を片手にしたシュリア先生が現れ、そんなことを言ってのけた。


(いきなり模擬戦?)


本日はまだ一講義であり、とりあえずルール説明やら何やらだと思っていたが、どうやら甘かったようだ。

いきなりの模擬戦に、クラス内は一時騒然となったが、シュリア先生が槍の石突きをターンっと打ち付けると急に静かになった。

彼女は一つ頷くと、


「模擬戦は、文字道り擬似的に戦うと言うことだ。変に傷を負わぬよう、刀剣系の”証”を持つ奴は予め刃を潰しておくように」


それだけ言うと、今度は生徒達をまじまじと見つめる。


「ふむ……。……む」


どうやら他の生徒は目が合ったとたん剃らしていたようで顔を俯かせる人が多かった。

ここでみんなの方を見ていたタクトはそれを確認すると、いきなりやりたくないよな、と内心でため息をつき、顔を戻すーー途中で、シュリア先生と目があった。


「よし、桐生タクト……だったな。お前だ」


目が合ったことにより、模擬戦の相手に選ばれてしまった。


「え、僕ですか?」

「桐生タクトはお前しかいないだろ。……そういえばお前、試験の時高得点だったな。ちょうど良い」


確認の言葉を一蹴すると、今思い出したかのように呟いた。

それを聞いた生徒達が「本当か?」と言うように詰め寄る。だが、そのこと自体タクトにとって初耳である。

代わりにタクトの方が、


「それ、本当なんですか?」


と聞いてしまったほどだ。

タクトの問いかけに軽く頷くシュリア先生。ーーどうやら事実のようだ。

おおーと驚く暇もなく、無情にもシュリア先生は、


「と言うわけだから前へ出ろ」


それだけ言うと、アリーナに八つほどあるコートの内、一番近くにある所を陣取る。

仕方ない、と思いつつもタクトはシュリア先生の目の前へと歩み寄り。


ーーここで、彼女は爆弾発言をした。


そうだ、とまるで言い忘れていたことがあるというふうに一つ頷き、


「この模擬戦が、私が満足できるような戦いではなかったら、お前には女装をしてもらうからな」


(はい?)


一瞬、彼女が何を言ったのか理解できなかった。

しかし、一秒ずつたつにつれ、タクトは顔をしかめていきーーその代わりと言うべきか、周りの女子達が騒ぎ出した。


「う、うそ!女装!?誰が……って、結構いけるんじゃない!?」


一人の女子が、タクトの顔を見るなり、いきなり声を張り上げ、


「シュリア先生!女装用の道具って何処にあるんですか!?」

「ふむ、そこにある」


別の誰かがそう言うと、シュリア先生はやや離れた場所にあるそこーー服やら何やらがあるーーを指さした。すると、女子達がキャーキャーはしゃぎながらそこへと向かっていった。


「って、ちょっと待ってくださーい!!」


タクトはあらん限りの声を張り上げ、シュリア先生に講義する。


「なんで僕が女装しなきゃならないんですか!?」

「……少し落ち着け、桐生」


そう言うと、シュリア先生はこほんと咳払いをし、


「私はこう言ったはずだ。満足できるような戦い、と。つまり、”全力を出して戦え”、と言うことだ」


まるで謎かけのような言葉。そして、その言葉の意味をシュリア先生は語り出した。


「模擬戦”ごとき”で手を抜くような奴は、実戦でも手を抜く。”無意識のうちに”、な。それを防ぐためだ」


彼女の言葉を聞き、タクトは俯いた。ーーシュリア先生は間違ったことを言ってはいない。実戦で手を抜くというのは、すなわち死に値する。言葉道りそれを防ぐためなのだろう。

少しばかりジ-ンときたタクトは見少しばかり尊敬し、しかしシュリア先生は珍しく、悪戯っ子のような表情で、


「何、全力を出したら女装は勘弁してやる」

「その言葉、信じて良いんですよね!!」


俯き加減だった顔を持ち上げ、タクトはシュリア先生に詰め寄った。

女装ーー彼にとって、その言葉には多くのトラウマがある。

女っぽい。そんな理由で強制的に女装されたのは、未遂も含め、少なくとも三十回はあるのだから。

現金にもやる気を出したタクトに、シュリア先生は頷き、


「信じて良い、さ!」

「うあ!」


セリフの最後で彼女は手に持つ槍を横に薙ぐ。

その一撃をタクトは何とか避け、シュリア先生との距離を稼ぐ。

その動きを見て、シュリア先生はそのきれいな顔に凄惨な笑みを浮かべ、


「ほう、避けるか。中々やるじゃないか」

(もしかしてこの人、ただの戦闘狂!?)


その凄惨な笑みを見て、タクトはふと思った。そう思わせるほどの凄みのある笑みだった。

女装の件も、模擬戦では全力を出せって言葉も、すべて本気でやらせるため!?

だとしたら汚い!ものすごく汚い!

少しばかりジーンとなった、先ほどの気持ちを返せ!

勝手にそう結論づけ、彼はクッと表情を引き締める。


「ふむ、流石に入試でやったやつだな」


そう言いつつも、未だ凄惨な笑みを浮かべているシュリア先生に憤りを感じつつ。

タクトは、左腰に白い小さな魔方陣を作り出した。

するとそこから、なんと刀の柄が現れた。

彼はいきなり現れた柄を右手で握るなり、それを魔方陣から引き抜く。

引き抜かれたそれは、日本刀ーー白銀に輝く刀身の刀。

その刀をピッと構え、一つのことを思った。


(……なんでこうなったの?)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ