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精霊の担い手  作者: 天剣
1年時
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第31話 反撃、闇を切り裂いて~1~

「シャァァ!」


初めて聞く、黒騎士の地声。鉄と鉄を擦り合わせたかのような、不快な叫びと共に上段から剣が振り落ちて来る。タクトは目を大きく開かせ、


「う、くぅ……」


アイギットを抱き起こすと、その剣先から逃れるように後方へ瞬歩を発動。二人分の重量を持ったままの瞬歩は足に負担が掛かるが、この際そんなことは言っていられなかった。


全てを切り裂くという、文字通りの力を宿しているアニュラスから何とか逃れ、大きく距離をとったタクトは、抱き抱えたままのアイギットの体重を今更のように感じ、地面にそっと横たえる。


その時になってようやく追い付いてきたマモルとレナも、アイギットを一瞥し、無事を確かめると、


「悪い……やられちまった……」


「仕方ねぇよ馬鹿、往生してろ」


黒騎士に視線を向け、マモルは唸り声とともに証を取り出す。その銃口を黒騎士へとビシリと定め、表情を歪めて囁いた。


「今のあいつは、明らかに化け物だ」


言葉を向けた相手は、全身から黒い魔力にも似たオーラを吹き出し、それが触手のように固まっていく。怪しく動く触手は、昆虫の足のように六本に増え、嫌悪感を催した。


「…黙って聞いていたら、随分と失礼なことを言うな、お前達は」


ちっ、と舌打ちを放ち、黒騎士は剣を地面に突き立てる。横たわり、浅く呼吸を繰り返しているアイギットに治癒魔法を施していたレナの、驚きを含んだ呟きが響いた。


「喋れた……んですね」


「んぁ? は、まぁな」


鼻を鳴らし、突き刺した剣の柄に片手を乗せ、杖がわりに寄り掛かる。


「最初は話すどころか、自分の意志で動くことすら出来なかったんだがな」


ぼやくように言い、黒騎士は続けた。


「だが、この”ダークネス”とやら、どうやら俺のモチベーションに左右されるようだ……」


ダークネス? いきなり出て来た固有名詞らしき物に首を傾げかけるが、すぐにあの黒いオーラの事だと察しがついた。”漆黒”と呼ばれるそれを表すのには、ある意味相応しい。


「俺が憎めば憎むほど……怒れば怒るほど……ダークネスは俺と同調し、その力を高めていく」


「………っ」


堪え難い何かを孕んだその静かな勢いに、皆気圧されたように後ずさる。だが、黒騎士はそれに構わず、開いている左拳を強く握り締めた。


それと同期するかのように、黒騎士から立ち上るダークネスが一際黒く輝き出した。先ほどの、外魔を生み出していたあの黒い石と同じ、暗闇の中でも黒く輝き出す存在。


「っ!?」


外魔を生み出していた、あの黒い石の事を思ったからではないだろうが、ポケットに入れたままだったそれが、急に光りを取り戻した。


「……タクト?」


最も近くにいたアイギットがそのことに気づき、不審の声をあげる。彼はあの時、封印したその場にいなかったため、タクトが持っているという事を知らなかったのだ。そのため、彼がポケットから石を取り出した瞬間、驚きの声をあげた。


「な、何でお前がそれを……っ!?」


「さっき封印したんだ……。でも、確かに封印したはずなのに……!」


黒く輝く石を見て、タクトは目を見開く。ポータルを使って封印した時は、その力をなくしていた石。今はそれから溢れ出る力が確かに感じられ、彼らは困惑する。


「どういうことだ?」


「……それが、ダークネスの力だ」


マモルの呟きに、黒騎士は静かな声音で答えた。ハッと彼の方を向いた一同の視線が集まり、黒騎士の赤い瞳が爛々と輝いている。


「憎しみ、怒り……そういった人の負の感情によって左右される……それと共に、もう一つある力が宿っている」


強く握り締めていた左拳を開き直し、突き刺し杖がわりにしていたアニュラスの柄頭にそっと乗せた。その瞬間、黒騎士を中心として何かが広がり、タクト達を包んですり抜けて行く。


「………?」


感触としては、まるで震動ーー空気を震わす波のようなもの。衝撃らしい衝撃波全く感じず、体を通り抜けた波はこの洞窟全体に広がっていった。


「え……?」


途端、困惑の表情で呟きを漏らすレナ。彼女が今までアイギットに施していた治癒魔法が、何の前触れもなくいきなり”消滅”してしまったのだから、無理はない。何が起こったのかはわからなかったが、ともかく、再度治癒魔法を発動させようとしたところで、異常に気付いた。


”魔力が、全く使えない”と言うことに。


魔力がなくなってしまったわけではない。それを生み出す機関である魔力炉は、何の障害もなく普通に働いている。なのに、魔法を発動させるために魔力を放出させた瞬間、何かの干渉を受け、消えてしまうのだ。だがその際、眉をひそめるような感触があったが。


「……どういうことっ?」


僅かに震える手をじっと見つめ、レナは小さく呟いた。その声音には、隠しようのない震えが宿っている。そんな状態のレナを見やり、しばし逡巡しながらもタクトはそっと彼女の肩に手を置くと、すがるような目で見つめ返された。


頷き、安心させるように微笑んだ後、彼は口を開いた。


「……これが、あなたの能力なの?」


「……え?」


その一言に、レナは目を大きく見開く。その言い方は、黒騎士の能力がわかったかのような物言いであり、マモルとアイギットも同様に驚きを露わにさせている。ーーただ一人、黒騎士だけが無言を貫いているが。


「ど、どういう……」


「さっき黒騎士が放った、波のような振動……。多分、それにはきっと、”魔力を硬化させて消滅”させる力があるんだよ」


タクトの推測を聞き、レナはハッとした。治癒魔法をかけようとした時、魔力が消えたと言ったが、そのとき確かに、ほんの一瞬だけ。それこそ、気付かないような短い時間の内に、魔力が”固まった”印象を受けたのだ。言われてみれば、それが彼女が感じた違和感の正体であった。


そこから先は、魔力が消えたと言うことからも納得できる。硬化させたーー結晶化させた魔力をそのまま砕いたのだろう。そうすれば魔力は消え、発動中、もしくは発動させようとしていた魔法は全てが無効化される。


全ての術における基本で、”魔力がなければ魔法は発動しない”のだから。


レナは知らないが、マモルは脳裏に蘇ったことがあった。数時間前、森の中で戦闘をしたとき、封印の鎖が”固まり”、その力が失ったことを。タクトが黒騎士に殺されかけたとき、ガルが言いかけた言葉を。


『無理だ……! そうしたいのは山々だが、ヤツの周りには特殊な”結界”が広がっている……!!』


『気付かんのか? ヤツの周りにはーー』


(……このことが言いたかったのか、ガル……)


状況が状況故に、マモルも深くは聞かなかったのだが、それが裏目に出た形であった。あの時聞いていれば、事前に対策を打つことが出来たはずである。内心の苛立ちを舌打ちにして吐き出すマモルに気付かず、両者の会話は続く。


「……ほう、たいした物だな。流石は桐生の血を引く者」


「僕はたいしたことないよ。ただ、魔力制御に関しては、自信があるんだ」


「ククク、だからわかった訳か。それもそうか、てめぇ、不反応だったもんなぁ」


黒騎士の称賛に、彼は首を振る。それはある意味、自虐が含まれていたのかも知れない。しかし、黒騎士はそうとは知らず、さらに口を開く。


「不反応持ちのてめぇが、あの家に生まれて災難だったなぁ。周りは全員化け物だらけ、その中で唯一あきらかな凡人以下。さぞかし、自分を呪ったことだろう」


「あんたなぁ……!」


突きつけつつも、僅かに下がっていた銃口を、その一言によって再び持ち上げる。マモルの顔には、友を侮辱されたことによる明確な怒りが浮かび、今にも引き金を引きかねない様子であった。だが、タクトは彼に向かって首を振り、銃を下ろさせる。ーーその瞳には、微かな同情の念があった。


「……それは、あなたもじゃない?」


黒騎士に向かって、言葉を放った。その声音には、怒りは含まれていない。だが代わりに、黒騎士の心に怒りを宿させた。突き立てたアニュラスの柄を握りしめ、鉄と鉄をこすり合わせたかのような不快な声音が響く。


「……いちいち癪に障るガキだ……!!」


突然、アニュラスを引き抜き、ブンッと振るう。幸い、剣腹を向けて振るったためか、それは斬撃とは見なされなかったようで、アニュラスの能力は発動しなかった。代わりに、ダークネスの力が強まったようである。


黒騎士から立ち上る黒いオーラは、その漆黒の深みを増していくと共に、六つだった触手が一気に倍の十二へと増大した。足が多い系の虫が苦手なレナと、得意ではないマモルの肌に戦慄が走り、鳥肌がたつ。無論、タクトやアイギットとて、愉快な気分にはなれなかった。


生理的嫌悪を催す黒騎士が一歩踏み出すと、タクトの手に握られていた黒い小石ーーダークネスのかけらが、黒騎士へと飛来していき、吸い込まれる。


「俺を怒らしたこと、後悔しろよぉ……ガキ共ッ!!」


怒りに満ちた叫びを上げ、十二の触手と一振りの剣、計十三のそれらが牙をむいた。その中で、1番気をつけなければならないのは、一振りの剣の方だろう。


「タクトッ!!」


「っ!?」


怒らせたからだろうか、黒騎士が真っ先に向かってきたのはタクトの方であった。彼は背後を向いたまま、今だに動けないアイギットと、その傍らにいるレナに声をかける。


「レナ、アイギットをつれて離れるんだッ!!」


叫ぶなり、自らに向かって振るわれた長剣を、身をひねって強引にかわす。しかし、その斬撃の延長上までも切り裂けるアニュラスだ。剣先からは逃れたが、延長上からそれることが叶わず私服の端を切り取られてしまった。宙を飛ぶ切れ端、それに目が行ったレナは思わず目を見開き、声を上げた。


「タクトッ!?」


「レナ、早く下がるんだ!! タクトなら、しばらくは保てるはずだ……!!」


逆にアイギットは、冷静な声音で彼女の袖を引っぱり、気をそらそうとする。この状態では、動けない自分たちのせいで、タクトの動きを制限してしまいかねない。


「ヤツが展開させた”力場”のせいで……俺もお前も、この場では足手まといなんだよ……。ここは、アイツの言うとおり……」


「……っ」


その言葉で、彼女は苦虫を潰したような表情を浮かべた。確かに、黒騎士が展開させた力場ーー魔力硬化結界、とでも言うのだろうか。それの中にいる間、術による戦闘を基本としている自分たちには手も足も出ない。


彼の言うとおり、早くこの場から抜け出してアイギットの治癒に専念するのが1番良いのだろう。しかし、そうとわかっていてもはやり納得できない部分というのがありーー。


「さっさと行け!」


「っ!?」


突如発砲音が耳元で鳴り響き、彼女は耳を押さえてうずくまる。耳に鳴り響くキーンとした感覚が消えるなり、すぐさま発砲した張本人であるマモルをキッと睨み付けた。


「な、何するのよッ!!」


「お前はさっさと結界の外に行け。ここは俺とタクトのバカで何とか押さえておくからよ」


レナの厳しい視線をものともせず、マモルはどこ吹く風とばかりにはねのけ、黒騎士に視線を向ける。彼の険しい表情と共に、その口から言葉が発せられる。


「安心しろ。タクトのバカは、俺が守ってやるよ。……俺の名前にかけてな」


にやり、と笑みを浮かべ、彼は手に持った二丁銃の銃口から、時間差を付けて銃弾を放った。視線の先には、何とか自分たちを黒騎士から引き離し、相手の攻撃を回避しまくっているタクトの姿がある。


マモルが放った弾丸は、黒騎士の鎧にあたり、しかしその強度を貫けなかったためか、あっさりと弾き返された。だが、当たった瞬間、ヤツの気をそらすことは出来たのか、僅かに攻撃の矛先がぶれた。


「っ!? はぁぁっ!!」


その瞬間を、タクトも見逃さない。計十三の攻撃の僅かな隙間を狙い、日本刀型の証を突きだした。彼も結界の影響を受けているためか、霊印流の太刀はまるっきり使っていない。にもかかわらず、突きだした刀は正確に黒い鎧の隙間を貫いた。


「っちぃ……!!」


鎧を通り抜け、鎧の中身にまでそれが届いたのだろうか、痛みに呻くような声を上げ、黒騎士はアニュラスを思いっきり振り上げる。だが、振り上げたその瞬間に、再びマモルの銃撃が頭部を覆うヘイムに直撃する。


「……ここは大丈夫だ、さっさと行け。そのバカの治療を頼んだぞ」


「……マモル。……うん」


いつの間にか一歩前にいたのだろうか、彼は背中を向けたまま、こちらを一瞥せずにタクトの援護に励んでいる。


タクトと比べると、その肩幅や身長はよほどがっちりとしていて、いつも以上に頼もしく思えた。それでもレナは、ほんの一瞬迷うような素振りを見せたが、すぐに首を振って追い払った。すぐさま頷き、アイギットに肩を貸して立たせてやる。


「……マモル、2回な」


「……?」


結界の外へと出ようと足を動かした途端、いきなりアイギットが振り返り、彼に向かって謎の数字を呟いた。それが何なのかわからず、マモルはちらりと彼に視線を向けたが、すぐに黒騎士へと視線を戻した。聞いていないわけではなく、ただ黒騎士から視線を離せないだけなのだろう。そのことを理解しているからか、アイギットは口元をつり上げながら、


「俺をバカって言った回数だ。……後で、覚えとけよ」


「………」


返事はない。銃を微かに持ち上げたのが、それに対する返答だった。




「あぁぁぁあぁぁぁぁああ………!!」


「……っつ!」


タクトの頬をかすめ、そこから僅かに鮮血が飛び散る。走る痛みにこらえ、彼は右手側から襲いかかる黒い触手を、刀を振り上げながら弾き返した。


そこから流れるように振りおろし、触手の軌道を何とかそらすが、それが精一杯である。たまらず後方へと瞬歩を使いーーしかし、その速度は先ほどより遙かに遅いのがたたり、タクトの細身の体が”七つ”の触手によって切り裂かれた。


早々に後方へと退避したのが幸いだったのか、切り傷はどれも浅い。彼は表情をしかめ、自身を貫かんとばかりに長く伸びた触手全てに視線をやる。


レナ達が魔力硬化結界と呼んでいる、ダークネスが生み出した特殊な結界の中にいるため、魔力は全て使えない。それは、精霊使いにとってーーいや、魔力を扱う者なら誰しも不利になる状況であった。


魔力を自然物に変化させることを信条とするコベラ式の魔法も、その源となる魔力が使えなくなってしまっては意味がない。この状況下では、魔力を使わずに自分の体で切り抜けなければならない。


その点では、このメンバーではタクトが1番だろう。彼はコベラ式の魔法はほとんどが扱えず、他者が術の修練に励む時間を全て剣術や霊印流の修練に費やしてきたのだ。先ほど黒騎士が、不反応だと言うことを言ってきたが、しかし逆に言えばそのおかげで今タクトは黒騎士相手に時間を稼ぐ事が出来るわけである。


「ちょっ……!!」


黒き斬撃のごとく、自らに向かって迫り来る十二の触手。それら全てが長く伸び、タクトの間合いの外から攻め立てる。彼は、刀の峰に手を当て、迫り来る触手を相次いで受け流しているが、時折流しきれず、その身が浅く切り裂かれる。


タクトの視線を見ればわかるが、彼の注意は別の方へ向いているために、どうしても触手への対応が遅れがちになってしまうのだ。それでも大半を受け流しているのは、日頃の修練のたまものだろうか。


ともかく、彼が視線を向けているのは、黒騎士が手に持つ古ぼけた長剣ーーアニュラス・ブレードである。あれが振るわれれば、一撃でタクトを葬ることが出来るはずのそれを、黒騎士は振るわないでいる。


ーーと、思いきや、黒騎士は”再び”アニュラスを持ち上げた。その構え方から、横殴りの一閃、そう思ったのはタクト”と”。


「…ぐっ!!」


「へ、懲りないヤツだな」


マモルである。当然の銃声と共に、黒騎士のヘイムに銃弾が衝突。その衝撃で黒騎士は体をぐらりと揺らしーー再び、タクトは無謀とも取れる突撃を敢行した。黒騎士が体勢を崩したために、触手の動きが全て止まったため、その隙を取ったのだ。


「はぁぁ!!」


一気に間合いにまで踏み込むと、タクトは横殴りに刀を振り抜く。シャランッと軽く風切り音を立て、黒騎士の鎧に横一文字の傷を付けた。しかし、その傷は限りなく浅く、タクトの傷口を合わせても”元”が取れていない。


「クソッ……!」


悪態をつきつつ、後方へ瞬歩。一瞬、黒騎士の赤い双眼がマモルの方へ向いたが、彼はその視線から逃げるようにして走り出し、立ち位置を変え始めていた。


アニュラスを振るわない、のではなく、”振るわせない”のであった。何とかそれだけは妨害して阻止しているが、それも時間の問題だろうか。あの様子から察するに、頭に血が上っている黒騎士が、マモルへと標的を変えるのも遅いことではないだろう。


体に負った浅い切り傷を見て、そっとため息。せめて壱之太刀、爪魔が使えればーー。唇を噛むタクトだが、そうは問屋が卸してくれなかった。言わずもがな、結界の効力である。


魔力が使えないこの状況では、魔力をそのまま扱う霊印流は、相性が悪すぎた。基本の太刀である爪魔や飛刃、瞬牙、爪破、残刃などと、その全てが扱えなくなってしまう。


唯一使えるかも知れないのは、やや特殊である六之太刀、天牙だが、この太刀には破壊力は全くない。


特殊な呼吸法によって体内に取り入れた自然魔力を、体内の魔力と結合させた二重魔力。それを生成する技能であるこの太刀は、破壊力がない代わりにある特殊な効果をもたらす。


(いや、待って……)


何かを思いついたのか、目をやや見開き、タクトは結界の影響下でいつもより遅い瞬歩を使い、もう一度黒騎士との距離を取る。


以前から気にはなっていたのだが、黒騎士が放つあの魔力にも似た、黒いオーラ。アレは一体何なのだろうか。


その自問に対し、タクトはおそらく、と自答する。あの黒いオーラは……多分魔力。本来透明色であるそれに、何かが混ざってあんな黒色に変色してしまっているのだろう。魔力制御に秀でているタクトは、幾度の衝突でそこまで読み取っていた。


要するに、何かが混ざった、その違和感を除けば、あれは魔力なのだろう。ならば……。


「天牙が……通じる?」


ぽつりと呟いたその一言。自分でも信じ切れず、確証は全くないのだが、状況打破にはこれにかけるしかないと目元を険しくさせる。手に握る刀を握りしめ、彼は呼吸を変え始めたーー。

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