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精霊の担い手  作者: 天剣
1年時
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第28話 対決と対話~1~

どうも、天剣です。お久しぶりです。


タクト

「ホントにそうだよ。2週間近く放置していたしね」


も、申し訳ない。お詫びと言っては何ですが、女装し、巫女服を着たタクト君写真を……


????

「くれっ!!」


お前はまだ出てくんじゃないっ!!

昼食を終えた彼らは、この家にある隠し道場に来ていた。この大きさの家である、それぐらいあってもおかしくはない。


ちなみに昼食は、風菜と未花の二人が、腕によりをかけて作ったらしく、かなりの美味となっていた。彼女らの話に寄れば、レナとコルダの二人も、十分手伝っていたらしい。


それはともかく、道場に来たタクトとマモル、レナ、アイギット、コルダの五人は、腹ごなしもかねて試合形式で模擬戦をやってみることにしたのだ。


本当は、タクトの従兄であるセイヤや、その父であるアキラとも戦ってみたかったのだが、二人は大事な話があるとかで辞退してしまった。代わりに、ある人物を寄越すとの事だったが……。


「……嫌な予感が当たってしまったよ」


「あのなぁ……」


ため息をつき、タクトはうなだれる。道場に入った瞬間、目にした人物に。どうやら、もう既に来ていたらしい。


「わざわざ俺がこうして、お前らの模擬戦を見に来たって言うのに、何がそんなに気に入らないんだよ!」


「……俺達としては、お前が来たー、って言う時点でもう嫌なんだよ」


マモルの言葉に、その人物ーー白い衣を纏った、長い銀髪の男がため息をつく。だが、それ以前に、一番の特徴がある。


「すごい嫌われようだな。それより、そこでぼーっとしてる二人。どうしたんだ?」


男は、”ふわふわと浮きながら”、その二人。つまりアイギットとコルダに近寄る。そして、全長”三十から四十センチ”ぐらいのその”小人”に、振るえる指を突きつける。


「え、えぇっと、この……人? 誰?」


「失礼な、私はれっきとした人だ!」


「……いや、かなり小さくて、ふわふわ浮いている人を目の当たりにしたら、この反応が当たり前だと思うよ?」


首を傾げつつ問いかけるアイギットに、小人は怒りを露わにさせ憤慨する。が、その大きさのせいか、あまり怖くない。むしろ、愛嬌があるぐらいだ。


ほのぼのと癒やされつつ、レナがそう苦笑混じりにそう述べる。小人は、それもそうか、と一つ頷いた。


「ふむ、確かにこの姿だと驚くのも無理はない。私は精霊みたいなものでな。……そう言えば、自己紹介がまだだったな。私の名前はクサナギ。そう読んで貰いたい」


そう言って、ぺこりとお辞儀をしてみせる。しかし、名前を聞いてアイギットとコルダは顔を見合わせた。タクト達から、要注意人物として教えられていた人である。だがーー。


イメージと、随分違うような……。


それが、二人の思ったことだった。彼ら曰く、やれ女風呂を覗いた、やれ着替えを覗いた等と言われていたため、ずっとそう言うイメージがあったのだが、今のクサナギからはそのイメージは全く見えない。むしろ、人当たりの良い人物だろう。


これは一体どう言うことだろう? アイギットは横目でタクトを見やるが、彼はうーんと悩むように頬をポリポリとかくと、クサナギに声をかける。


「ねぇクサナギ。元気ないけど、どうしたの? いつもなら、平気でスキンシップをするのに」


スキンシップ。その一言に、レナがぴくりと動きを止め、ジッとクサナギの方を見やる。彼から目を離さず、彼の一挙一動に注目する。


だが、クサナギはそんなことにお構いなしに肩をすくめーーその動きだけで、レナが一歩下がったのが目に映ったーーすくめ、諦めたような乾いた笑みを浮かべた。


「ふ……。風菜殿から、そう言う行為を行った瞬間、我が愛酒をたたき割ると言われたのだ。……自制するしかあるまい」


と、涙を見せつつ口に出す。どうやら、風菜が先手を打っておいてくれたらしい。これで、桐生家にいる間は、彼からはセクハラされないことになる。ありがとう。そうレナは心の中で風菜に感謝する。


それを受け、マモルはいい気味だ、とばかりに鼻を鳴らす。


「日頃の行いだな。少しは反省しとけ」


「ーーだが、やめるとは誰も言っていない」


「は? お前何をーー」


言っている? とは、言えなかった。クサナギは、凄まじいスピードで動き、彼らの視界から消える。そのことに驚き、目を見開く彼らに、背後から悲鳴が上がった。


「きゃぁ!? ちょ、ちょっとぉぉ!?」


「ふみ、良い形のヒップだな。これならーー」


後ろから視線を感じたコルダは、背後を振り向くと、彼女のおしりをジッと観察してるクサナギと目があい、悲鳴を上げたのだ。仰け反るようにしてコルダは離れ、クサナギはふむふむと何度か頷いている。その表情には、感じの悪いにやけ顔が浮かんでいる。


確かに、これなら大丈夫だろう。何せ、近くで見ていただけで、触っていないのだから。ーーセクハラまがいの行為には違いないが。


「……タクト。こいつ、ぶっ飛ばしちゃって良いかな?」


「うん、良いよ、もう、スキにやっちゃって。あ、少し手伝おうか?」


頬を赤くし、目元に若干の涙を浮かべているコルダは、タクトにそう聞いてきた。


彼は頷く。それも、即答でだ。そして、笑顔のまま証を引き抜いて見せる。


コルダも笑顔を浮かべ、それに迷うことなく頷く。ーー数秒後、道場に悲鳴が響き渡った。




「よし、それでは気を取り直して、マモルとアイギット。両者前へ」


心なしかボロボロになっているクサナギが、そう合図する。それに合わせ、マモルとアイギットの二人は一歩前へ出て、それぞれ証を構える。


マモルは銃の証を、アイギットはレイピアの証を。


ようやく、昼食後の腹ごなしーーつまり模擬戦の開始である。先程対戦相手を決め、その結果この二人となったのだ。


前へ出る二人。互いに睨み合ったまま動かず、ジッと相手の動きを観察している。一方、審判であるクサナギは、先程から何かをぶつぶつと唱え、手を前に出している。そこにあるのは、半透明の魔法陣。魔力そのものを使った魔術を使うらしい。


それも当然か、とタクトは苦笑を浮かべる。何せ、彼が今唱えている魔術は、建物を保護する、言わば結界みたいなもので、これを使わなければ、我が家は修練のたびに修復をしなくてはならなくなる。ひどいときは、新築になるだろう。


半透明の魔法陣は回りながら、クサナギの詠唱が終わるのを待っている。そして、それが終わるのを待っているのは、法陣だけではなかった。


ようやく呪文を唱え終わり、法陣が輝き出す。それと同時に、建物を覆うように何かが広がっていく。完全に覆われたのを確認すると、クサナギは一つ頷いて、手を上げた。


「ーー始めっ!」


その一言で、ようやくマモルとアイギットは動き出す。二丁銃を構えたマモルは、そのまま銃口をアイギットに向け、引き金を容赦なく引いていく。


ダンダンッと時間差を置いて放たれた銃弾は、アイギットが展開させた青い法陣によって防がれる。


「甘いね」


ニヤッと笑いながら呟き、そして法陣から杭状の氷塊を作り出す。生み出された氷塊は、そのままマモルへと飛んでいく。


だが、マモルもそれが飛んで来るのを待っているような事はしない。銃弾を放ち、氷塊を迎撃する。小さな弾丸が、捻りを上げながら氷塊に激突。当然、弾丸の方が弾かれる。


「………」


「な……!?」


しかし、口元に笑みを貼り付けたままのマモルは、法陣を展開させ、氷塊を”受け止めた”。その結果に、アイギットは驚愕の表情を浮かべる。


当然である。何せ、この氷塊は法陣ごと貫くほどの貫通力を持ち合わせているのだ。かつてタクトがアイギットと戦ったさい、放たれた氷塊を瞬歩で躱していたのはこんな特性があったからである。


「何をした!?」


法陣ごと貫く、と言う自信があったのだが、マモルはたやすく受け止め、その自信をぶちこわしてしまったのだ。叫ぶ彼に、マモルはニヤニヤと笑いながら、その質問に答えた。


「そう起こるな。さっき俺が放った銃弾、こいつで氷塊の先端を壊して貰ったぜ」


「何だと……?」


それを聞いて、今度は逆に驚き、感嘆の声を上げた。確かに、先端を壊してしまえば、貫通力は格段に下がる。先端が尖っていないものを、何度打ち付けても、突き刺さらないのと同じである。


だが、本当に驚くべきなのは、その先端に銃弾を当てたマモルの腕前だろう。指先でくるくる銃を回している彼を見て、アイギットはそう確信する。一つ頷くと、レイピアを振るい、いくつもの青い法陣を展開させた。


「なら、この量はどうだ?」


そう言う彼の周りには、いくつもの氷塊が並んでいる。その数、およそ数十。それを見て、そういや魔力量多いんだよな、とマモルはため息をついた。


「一発が効かなきゃ、今度は量で勝負か。ま、妥当だな」


「……なんか生意気だな」


やれやれ、とばかりに肩をすくめ、その動作にアイギットは少しばかり腹が立つ。顔をしかめ、彼はレイピアの切っ先をマモルに突きつける。その動作に合わせ、周囲に浮かんでいる氷塊が、マモル目掛けて一直線に突き進む。


自身に向かってくる氷塊。それを目の当たりしにたマモルは一言呟き、それと同時に茶色の魔法陣が、足下に展開された。


茶ーーそれはコベラ式にとって、”土”を表す色。マモルは口元に笑みを浮かべ、相手を睨みつける。


「悪いな、生意気でよ。わびと言っちゃあ何だか、受け取ってくれ」


「何!?」


そう言うなり、彼の足下から土砂が噴き出し、それが彼を守るように包み込む。その光景に驚いたのは、対戦相手であるアイギットだった。


驚きとは裏腹に、放った氷塊は迷うことなく突き進み、土の壁に衝突する。氷塊は壁の表面に突き刺さりーー止まった。だが、後から来る氷塊に、突き刺さったそれらは砕かれる。


突き刺さっては砕かれ、突き刺さっては砕かれーーそんなことを繰り返し、結局ほとんどの氷塊が自分たち同士でぶつかり合い、自滅した。残ったのは、最後の方に放った数本のみ。アイギットは、その結果に舌打ちを一つ放った。


「ちっ、数が仇になったか……。だけど、数本ぐらいは……」


「全然通ってないぜ」


「……やっぱしか」


土壁を突き抜けただろう。そう思ったが、聞こえてきた声に、その考えは捨てることにした。だが、半ば自分でも予想していたのだろう、あまり落胆の色はない。


土壁が、まるで水に溶けたかのように形を失い、地面の法陣に吸い込まれる。壁がなくなり、隠れていたマモルが顔を出すと、彼はニヤリと笑みを浮かべた。


「だがまぁ、お前の言うとおり、数本ぐらいは先端が飛び出してたぜ。正直、肝を冷やした……」


「……そうか。それが聞けて、ありがたいっ!」


「ってうわっ!?」


マモルの言葉に、アイギットも笑みを浮かべ、彼との距離を一気に狭めた。そして、手に持つ証を彼に向かって、勢いよく突き出す。そのいきなりの行動に、マモルは慌てて後退、何とかその一撃を避ける。


不意打ちに近い形で突きだしたその一撃を、あっけなく躱されたことに表情をしかめるが、アイギットはそのまま流れるような形でレイピアを振るう。その斬撃に、マモルは法陣を展開させ何とか防ぐ。


魔術同士の戦いはほぼ均衡。なら、証を使った近接戦闘ならどうかーー。そう思い、アイギットは距離を詰めたのだ。証の形状から言うと、彼の方が格段に有利である。それ故に、マモルは接近戦を苦手としているのだ。


「いくぞっ……!」


「……っちぃ!」


そして、彼らは精霊使い。魔力を自然物に変え、それを操る力を持っている。つまり、接近戦だろうと、魔術を遠慮無く使ってくるーー。


アイギットが呪文を唱え、レイピアの刀身に冷気がまとわりつく。属性変化改式、それによって水から冷気へと変え、冷気を纏ったレイピアは、マモルが展開させた法陣に叩きつけられた。ーー彼は全く意図していないが、それは霊印流の壱之太刀、爪魔と似た攻撃である。違うのは、纏っているのが魔力ではないく、冷気であることか。


元々爪魔は、多少魔力の扱いに慣れたものなら、誰でも出来るほどのものなのだ。それは爪魔だけに限らず、飛刃にも言えることだが。


アイギットの一撃に、苦しげに表情を歪めるマモル。法陣が軋むような音を立てたとき、彼は全力で魔力をそれに注ぎ込み、強化する。どうにかこの場を離脱して、距離を離したいが、それを彼が許してくれそうもない。


「……っのぉ!」


「なっ!?」


苦肉の策として、注ぎ込んだ魔力を破裂させ、法陣を自ら破壊。その時に発生した衝撃波が、アイギットの剣撃を僅かに鈍らせ、狂わせる。そのスキにマモルはその場を離脱、距離を取る。


振り下ろされたレイピアの切っ先は、マモルの体を掠めた。だが、躱したことに変わりはない。彼はジャキッと銃口をアイギットに向け、銃口の先に黄色の法陣を展開。法陣の中心部分で、バチバチと帯電するそれを彼は見やり、驚愕の表情を浮かべる。慌てて後退するも、もう遅い。


雷弾らいだんっ!!」


引き金を引き、銃口から弾丸が放たれた。その弾丸は、法陣を突き抜け、雷を纏う。ーーマモルの必殺の一撃である雷弾は、アイギットに向かって一直線に進み。


「くそっ!」


回避することは出来ず、苦し紛れに法陣を展開させた。法陣と雷弾がぶつかり合い、拮抗する。しかし、


「っ……駄目か……っ!?」


法陣が軋むような音を立てた。それは、法陣が破壊される寸前の証拠。くっと表情を歪めると、アイギットは呪文を唱えた。


(間に合うかーー!!)


ーーやがて、法陣が破壊され、アイギットは銃撃と雷、双方の痛みを右肩に味わい、悲鳴を上げた。


「ぐ、がぁぁぁああっ!!?」


幸い、銃撃の方は人を殺さないように貫通力を無くしてあるので、血が出るような怪我はない。ーーそのかわり、鉄の鉛玉をぶつけられる痛みと、大差ないものが来るが。まぁ死ぬよりはマシである。


どちらかというと、ヒドイのは雷の方。ピンポイントで当たったというのに、全身が痺れている。それだけ、高威力と言う事なのだろうか。


「うっ……くぅ……」


全身を襲う痺れに耐えながらも、そのようなうめき声が聞こえた。そのことに、アイギットはうっすらと笑みを浮かべる。そして、視線を前へと向けーーそこには、”膝を突いたマモル”の姿があった。


「て……めぇ……」


腹部を押さえながら、彼はアイギットを睨みつけている。彼の足下には、”氷塊”が一つ、転がっていた。


法陣が破壊される寸前。アイギットがぎりぎりで唱えた呪文、それは属性変化改式のものだった。それによって造り上げた氷塊は、迷うことなくマモルに向かっていき、技を放った直後で動けない彼に当たったのだ。


アイギットはニヤリと笑みを浮かべ、しかし彼も膝を突いた。今まで、やせ我慢でたっていたのだ。だが、そのやせ我慢が功を奏した。


「お前、言っていたよな……? ケンカは、最後まで立っていた奴の勝ちだってよ……」


「…は、言ったな」


その言葉に、マモルも笑みを浮かべーーぐらりと倒れた。そして呟き、認めた。


「……俺の、……負けだ……」


ーー己の、敗北を。

????→クサナギ

「ほほう……これは、良いものだ」(写真を眺めつつ)


タクト

「……作者さん。何とかして、アレ」


天剣

「無理」(即答)


タクト

(泣)


クサナギ

「ちなみに女装して巫女服を着たタクトだが……髪の毛は艶のあるロングの黒髪。この写真だとポニーテールにしているね。そして、それなりに大きいおぱーい。巫女服からでもわかる線の細さ。まさに、絶世の美少女だね。眼福ものだよ、眼福もの」(ルンルン)


天剣

「おまわりさん、こっちです」

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