第2話 門出
うーん……。
これ、下書きするってできないですかね~?
精霊ーーそれは人々の師となった存在であり、また、人々に宿るものでもある。
彼らを宿した者は、宿した証として体に証印が浮かび上がる。
それ故、証印を持つ者は精霊使いと呼ばれている。
精霊使いの端くれたるタクトも、左の手のひらに証印を宿していた。
そして、タクトは今ーー。
教室の席に悠々と座っていた。
結局、フェルアント学園の入学式にはギリギリで間に合い、学園の校長先生のありがたい長話を聞き終えていた。
時に彼は思う。ーー何故、こういう時の校長の話は長いのだろうか、と。
式は全てつつがなく終了し、教室に入ってきた、と言うわけである。
「なんかさー。…どこの校長も、話って長いのかな?」
「校長先生みんながみんな長い訳じゃないと思うよ」
机の上でだべっているタクトの呟きにレナが答えた。
と、そこでマモルが何故か哀愁漂う表情でため息をついた。
「まぁ…あいつよりはマシだろ…」
「あぁ……うん…」
マモルのその言葉に、タクトは重々しく頷いた。
あいつというのは、彼らの中学時代の校長である。ーーつい一ヶ月前の卒業式でも、えらい目に遭った。
レナはそんな二人を見て乾いた笑みを上げた。その時。
いきなり教室の扉がガラッと開いた。
何事かと、クラス中の生徒がそちらを向いた。
入ってきた人物ーー女性だーーを見て、レナは二人に話しかけた。
「先生かな?」
「多分」
「…二人とも、席に着いた方がいいよ」
元から座っているタクトはそう二人に告げ、そのまま二人が席に着くのを目で追った。
女性教師(多分)は教室をぐるりと見渡し、未だ立っている生徒に一喝した。
「さっさと座れ!!」
すさまじいまでに迫力ある、良く通る声だった。
実際、タクトはあんな声で怒られたくないな、等と情けないことを思った。
それほどまでに、体に直接響く声だった。
そんな声で怒鳴られた生徒達は、一瞬だけ硬直、しかしすぐに席に着いた。
「よし、席に着いたな。これからホームルームを始める」
席に着いたと言うよりも、着かされた感があるのだが、流石にそこに突っ込む者はいない。
女性教師は実にてきぱきとした動きで自己紹介を始めた。
「本日から一年間、このクラスの担任であり、反抗期まっただ中にいるお前達の世話をすることになったシュリア・ローファだ」
それを聞いて、何という男前な、と思った。
しかし、言動とは裏腹に、シュリアはとても見栄えのする美人であった。
ウェーブのかかった、青い髪を背中の中程にまで伸ばし、背もそれなりに高い。
スタイルも抜群であり、切れ長の目が気の強さを予想させ、一言で形容するならば女王様、と言ったところか。
クラスの者ーー特に女子達からはその男前な台詞か、その美貌故かあこがれと賞賛の眼差しを向けていたが、その視線に気づいていないのか、はたまた無視をしているのかは分からないが、シュリアは話し始めた。
「反抗したいのならしてもいいさ。だが、やるとしたら最後までやり通せよ?」
そう言って、クラス内をぐるりと一睨みした。
その視線と、その言葉だけで、逆らう気なんて起きはしませんよ。
シュリアの言葉を聞いたタクトは、内心苦笑しながら思った。ーー内心苦笑する程度ですむその精神力を見習いたい。
(てかここ、あの先生の独裁になるんじゃないか?)
(…それはないと思う……多分)
彼の思いに精霊コウは、そんな事はないと言い切れない様子だった。
シュリアはついでとばかりにあたりを見渡した。
「それからもう一つある。ここは集団での共同の場所であり、それ故ルールも必ずある。そのルールも守れよ?何せ、式が始まる一分前に来た奴もいるからな」
(う……。すいませんでした……)
ポーカーフェイスを繕いながらも、汗ジトになって心の中で頭を下げた。
ふと、自分と同じく一分前に来た奴に視線を向ける。
レナはーー顔を俯かせている。おそらく、自分と同じように悪いことをしたなと言う良心の呵責を感じているのだろう。あいつは真面目だから。
一方親友であるマモルは、「誰だそいつ」とでも言いたそうな表情であたりを観察している。
(てかお前もだよ!?)
そう突っ込んだ後、タクトは誰にも見つからないようそっとため息をついた。
感想、アドバイスお待ちしております!