第17話 歴史の狭間で ~2~
更新するまで時間がかかり、申し訳ありませんでした(土下座
最低週一更新をしたかったのですが……。……あれ、そう言えばタグのところに不定期更新という言葉が(殴
「やっぱし地球出身ですか。そう言えば、何度かあそこに来ていたのを見た覚えがあります」
コウの首をギュウーッと締め、冷や汗を流しながらタクトはそう尋ねた。
「はい、あそこは支部ですから。色々と用事で」
おそらくその時に見かけたのだろう。やっと思い出した。と言う事は、義理の従兄であるセイヤとも、その時に知り合ったか。
「あの時に何度か見かけましたが、やはり可愛いですね桐生君。とてもあの人の従弟とは思えませんよ」
「それはどうも。と言うか、男に可愛いって褒め言葉じゃないですよ」
内心複雑な思いでそう言い、苦笑いを浮かべながらコウを離す。ケホケホと息を吐き、コウは首を左右に振った。
(何をするんだ!?)
(当たり前だろう! もう少し言い方を考えてよ!)
冷や汗を流しただろう、とコウに文句を言い、それが効いたのかむう……と唸りながら沈黙し、まるで逃げるかのようにタクトの中へ戻っていく。と、ちょうどその時を見計らったかのようにチャイムがなり始めた。
「あ、チャイムがなりましたね。席について下さい」
「……というか、僕以外来ていませんよ?」
「大丈夫ですよ。このクラスの生徒は、皆さん時間ぎりぎりで来るので」
ニッコリと笑いながらそう言う西村。しかし、それはそれで問題ではなかろうか。タクトが疑問に思っていると。
『遅れました!!』
数人の生徒達ーーおそらく歴史学科の、だろう。彼らは教室に雪崩の如く入り込むと、そのまま流れるような動きでそれぞれ席に着いた。
「………」
いかにも慣れているような動きとその光景に、顔を引きつらせながら見たすタクトは、すさまじい不安が募るのであった。
「えーっと……桐生君も座った方が良いのでは?」
「……そうします」
突っ込む気力もないのか、タクトはふうっとため息をつきながら席に着いた。周りを見渡し、人数を確認してみる。合計十人もいない、自分も入れ九人。その内二人はクラスで見かけたことがある顔だが、残りの四人は見たことがない顔で、残りの一人はどこかで見た気がする女子生徒であった。そしてもう一人。
(何で、あの人が……?)
そこにいたのは、生徒会会長と名乗っていたギリ・マーク。あの赤毛はそうそう見忘れるはずがない。と、タクトはそこで、
(そう言えば、僕のこと何で知っているのかな?)
以前浮かんだ疑問が再び浮かんだが、その質問は後にしようと心に決める。偶然同じ授業に出ることになったのだ。質問しようと思えばいつでも出来る。
ーーと言うか、何で先輩達がいるんだ?
遅播きながらもその事実に気づき、不思議に思って見ていると、
「まず、今日は新入生がいるので自己紹介からですね。私の名前は西村アヤカと言います」
そう言ってぺこりと頭を下げる西村。すると男子生徒ーーあのギリであるーーが、
「俺達も自己紹介すんの-?」
と、うすら笑いを浮かべながら敬語も付けずにそう言い放った。恐ろしくフレンドリーな態度に、思わず同じ一年達は唖然とする。西村はそれに対し、
「いえいえ、今日は授業を進めますよ。……授業が潰れると思ったら大間違いです♪」
「ギクッ……いやいや、そんなこと考えているわけないじゃないですか」
うっほんのちょっとだけ怯み、すぐさま何もなかったかのようにそう答えた。しかし、目線を反らしながら答えたので、全く説得力がない。すると隣に座っている、どこかで見た気がすると言った女子生徒がそれをジト目で見つめながら肘でこづく。ボソボソと何かを言い、彼は何かを諦めたように両手を挙げ、降参の意を示した。
「さて、この歴史学科、新入生達は先輩方がいるので、多少不思議に思っているので説明しときます」
その二人のやりとりが終わるのを待って、西村はそう切り出した。
「まず、この学科には他学年と共に歴史の授業を行います。つまり、向こう3年間は似たような内容となるわけですね」
ーー……はい?
それが、その言葉を聞いたタクトの一番最初に浮かんだ言葉であった。
向こう3年間は同じ内容の授業。それはつまり、やることがないと言う事だろうか。しかし、少し考え、彼はもしかしたら、と思った。
学園では、大量の科目があり、それにはもちろん、人気のある科目と不人気の科目がある。そしてこの歴史学科は後者に当たる。
理由は、他の学科の方が人気だからである。
少し前に言った、元来精霊使いは戦士であると言う言葉、その言葉に関連している。せっかく精霊使いになったのだから、バンバン魔術を使いたいと言うのが人情であり、また、役割でもある。
精霊使いというのは、各地から寄せられる情報を頼りに危険な物、生物を回収、駆除していく、言わば市民の安全を守る警察のような役割を持っているのだ。
そのため他の学科ーー体育会系のような学科が、人気を誇っているのだ。もちろん、歴史の中には知っておかなければならない物があるが、それはもう常識のような物なので大した意味はない。
そのため、この歴史学科を選ぶというのは、よほどそれが好きか、タクトのように病を持っている者、それらに分けられる。
(いや、タクト。まだいるだろう?)
(え?)
そこまで考えたタクトは、頭に響くコウの声を聞いて問い返す。あっちを向け、と言う言葉が聞こえ、それに習ってそちらの方を見やると。
「…………ぐぅ……」
(……大物なのかな?)
(ただたんの馬鹿だろう)
授業中にもかかわらず、机に俯せになって爆睡している生徒会長を見て、タクトはあきれ果ててそのような事を思った。それをコウがぴしゃりと言いのける。
まぁ、コウが言いたいことはわかった。授業のやる気がないものーーつまりサボりの人間がここに来るわけだ。しかし、そのことはあまり広まっていないのか、それともギリだけがひどく不真面目なのか、サボる人間はあまりいないようだ。
(あの人が生徒会長……世も末だね……)
西村が手に持つ板ーー出席簿か。それで叩く様子を見て、頭が少しばかり痛くなってきたが、それを無視して授業を受けることにした。
ああ、今じゃ珍しいな(出席簿で頭を叩くこと)、等とどうでも良いことを考えながら。