第40話 それぞれが、前へ進むために~1~
「――ルフィン……」
――風菜の自室にて、母から父の名前を聞き、その名前をぽつりと呟いた。その名前の響きから、地球の日本出身ではないことは察せられた。
「ルフィンは、幼い頃にご両親から捨てられたそうよ。……子供とは思えなくて気味が悪いって。……あの人は前世の記憶を強く受け継いだの」
「………」
少しだけ瞳を伏せて、重い口を開いた風菜の言葉に、タクトも思わず瞳を伏せてしまった。記憶感応によって、初代精霊王の記憶を垣間見た彼ならば分かる。初代もまた、“自然の声が聞こえる”ということが原因で、周囲から不気味がられていた。
それに加えて、前世の記憶を持っているからこそ行える大人びた言動――それが周囲から疎まれる原因となったのだろう。――図らずも、”転生”した精霊王は同じ目に遭ったと言うことになる。
「……ルフィン、は……本当に過去を変えようとしているの?」
父の名を呼ぶときに、僅かに言い淀んだ彼を複雑そうな瞳で見やる風菜だが、車いすの上で拳を握りしめ、おそらくそうでしょうねと肯定する。
「……あれ以来、会ったことはないけれども……伝え聞いた話からだと、彼ならやりそうねって思ったから」
風菜は首を傾げて口を開いた。――今にも泣き出しそうなほど、悲しげな笑顔を浮かべて。母のそんな表情を見てタクトは目を見開き、拳を握りしめた。
「……どうしようもない人なんだね」
「そうね……でも凄く義理堅い人なのよ。一度交わした約束は、何が何でも守る……そのためには、多分、ルフィンはこれしかないって思って行動しているのよ」
タクトのうちに宿った怒りに、風菜は気づき、苦笑する。タクトの”どうしようもない人”という評価に頷きつつも、
「あの日交わした”約束”を果たすため……そのために、きっと……過去をやり直すつもりなのよ」
「……約束?」
遠くを見るように口を開いた風菜に対し、タクトは首を傾げて問いかける。風菜とルフィンの間で交わした約束に関しては、息子であるタクトは全く知らない。だが風菜の自室に入る前に、二人の間で交わした”約束”を耳にしていた。
『えぇ……いつか、家族四人でお花見をしよう……そう約束したの』
「……………」
まさか――タクトは瞳を瞬かせて母親を凝視する。風菜は息子の瞳を見て、先程の話を思い出したのだと悟り、微笑を浮かべて頷いた。
「……まさか本当に……花見のためだけに……?」
「えぇ。でも、ただの花見じゃないわ。……少なくとも、ルフィンや私には、別の意味も込められているの」
「別の意味……?」
きょとんとした顔で問い返すタクトに、風菜はえぇと頷いた。それは、二人の家庭環境が関係していたのだ。
「私は幼い頃に両親を亡くし……ルフィンは、両親に捨てられた。そんな私達が、家族になって……でも、そうだからこそ、家族としてやっていけるか、不安で、心配で……」
――お互いに“親”と接していた時間があまりにも短く、いざ自分が親になった際どうすれば良いのか分からなかった。だから――
「だから、目標として、そう約束したんだ。家族四人だけで、楽しくお花見をしようって。……結局、テルトは攫われて……ルフィンもいなくなって……叶わなくなったけれど」
「…………」
そう呟きながら風菜はタクトを見やった。――家族四人でという理想に対し、この場にいるのは家族二人という現実。その現実が、約束を反故にしてしまったと風菜に突きつけて来るみたいだった。
「それに……ルフィンは今まで、苦しい人生を送ってきたのよ。……前世の記憶を引き継いだ苦しみ、ご両親に捨てられた悲しみ……私達と一緒に戦ってくれた、けれどだからこそ負わせてしまった痛み……」
ぎゅっと胸の前で手を握りしめた風菜は、ルフィンの当時を思い返すかのように瞳を閉じて呟いていく。やがて母親はタクトを見上げて、だけどね、と、
「そんな苦しい人生を送ってきても……ちゃんと、あの人に”幸せだ”って言わせたかったの。幸せだったって、そう実感して欲しかった」
ルフィンの人生は、とても”平穏”や”幸福”とは言えないほど苛烈なものだった。だが風菜はルフィンに、平穏の安らぎを、幸福の優しさを味わって欲しかったのだ。――あなたの人生は、ちゃんと幸福だったんだよと、そう伝えたくて。
母の気持ちを、タクトがどこまで察したのかはわからない。少なくとも、全てを察した訳ではなさそうだった。彼は瞳を伏せ、言いづらそうにしながらも、ポツリと呟く。
「……俺とテルトの……その、運命も知っていて、なの?」
「うん。……”あのときとは違う、今度は俺が兄弟喧嘩を止める”って張り切っていたわ」
かつてルフィンが口に出していた言葉が容易に蘇る。あの頃は、ルフィンの言葉に大きな安心感を覚えていたが、時が経つにつれ、その安心感は薄らいでしまった。ルフィンのいないところで、色々な情報を耳にしてしまったと言うこともある。
タクトはかつて口に出していたというその言葉を聞いて、何とも言えない微妙な表情を浮かべた。
「……兄弟喧嘩、か……。でも、案外そんなものなのかもね……」
文字通り、自分の人生の終着点ともなり得るものを兄弟喧嘩というあたり、ルフィンの人となりが朧気ながら見えてくる。
(……止める、か。……なら――)
その先を思わず口に出してしまいそうになったが、タクトはそこで頭を振り、自分自身を戒めるかのように続く言葉をかき消した。
(……ううん。ここから先は……自分でやるしかないんだ。例え未来が決まっているとしても……運命に抗うことは出来る!)
ふぅ、と息を吐き出し決意を新たに固めたタクトは、母親へと向き直り、彼女を真っ直ぐに見つめて、
「ルフィンの目的はわかったよ。その動機も……けれど、母さんや叔父さん達とは違って、俺にとっては”会ったこともない他人”でしかない」
「…………そう」
父親のことを、あくまでも他人と言い張る息子を見て、風菜は表情を強ばらせ、悲しげに顔を俯かせる。暗に父親のことを認めないと言う彼を叱ることなど、風菜には出来なかった。――母がいた、叔父がいた、叔母もいた――けれども、父親はいなかった。決して口には出さなかったが、そのことに不満を抱かなかったはずがない。
なのに今頃になって、“この時期に”父親のことを話されたとなれば、困惑するのも無理はない。急な話を、容易に受け入れることなど出来はしない。
息子が父のことを認めないと言うのは、悲しいし寂しい。だがそれは仕方のないことなのだ。こうなるのであれば、以前から少しは父親のことを話しておくべきだったか。
――十七年も息子と共にいるのに、一番大事なことを今まで話していなかったと、今更ながらに後悔してしまうが、もう遅い。諦めが含まれたため息をつく風菜は、続くタクトの言葉に耳を疑った。
「……だから、叶うなら……少しは、話してみようと思う」
「……ぇ……」
息子の言葉に目を見開き、風菜は彼を見上げた。タクトはどこか照れたように目線を背けながら、
「……ルフィンにも事情があるって事はわかった。けれそれと、今まで約束を反故にし続けたことは別問題だよ。だから……その、拳を振るうことになるかも知れないけれど……」
「………ふふ」
頬をポリポリとかきつつ、反対の手で握りしめた拳に視線を向けるタクトを呆然と見やった後、風菜は小さく笑みを溢した。――その仕草と、ルフィンのことを父と言おうとしない態度は、まるで反抗期の息子のように見えて。
――やっぱり、タクトは良い子なんだね――
嬉しげに、そして少し寂しげな笑みを溢して、風菜はタクトに告げた。
「うん、そうして良いよ。私も、あの人には色々と言いたいことがあるから。……親子揃って、ぶらぶらしているお父さんに言ってあげようね」
「今まで溜まっている鬱憤、全部ぶちまけようよ、母さん」
それまでずっと沈んだ表情を浮かべていたタクトが、ここに来てようやく、うっすらと笑みを見せてくれた。
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「…………」
風菜の自室のドアの前で、一人佇むレナは安堵の息を吐き出した。タクトと風菜が部屋に入っていったのを見て不思議に思い、ずっと聞き耳を立てていたのだ。聞こえてくる声に耳を澄ますと、彼が背負ってしまった”運命”と、今まで聞いたことがなかったタクトの”父親”に関するものであった。
タクトが背負った運命について、レナは思うところがある。――言い伝え通り、タクトが弟さんと戦って、相打ちになる。それが決定事項のように語られていることがずっと疑問に思っていた。
溢れてくる話し声に耳を澄ますと、まるで初めからそうなるように定められていた、そういう風に聞こえてしまう。それこそ、風菜が聞いたという「この世の理によって定められている」という言葉が、まさにぴったりな表現だ。
理というのは、概念や常識、物理法則など、世界によって定められたルールの総称とも言える。彼らの死が、”世界によって定められている”というのならば、彼らが助かる道はないのかもしれない。
「……タクト……」
けれど彼は、そんな状況においても、前へ歩き出そうとしていた。幼馴染みの名前を呟き、心配そうに胸の前で手を握りしめる。
しかも彼が抱えてしまった問題は、それだけではなく、父親の件もある。過去へ戻り、全てをやり直そうとする父。風菜と交わした約束を守る、ただそれだけのために、タクトの父は今も行動をしているのだそうだ。
――フェルアント学園にいた時に、とある噂を聞いたことがあった。各支部に所属する精霊使いが、時折何者かの襲撃を受け、ひどく衰弱した状態で発見されたということが何件かあったらしい。
今思うと、それらがルフィンの仕業だったのだろう。彼らを襲い、神器である”夢現書”に力を吸収させるために。そして夢現書に溜めた力を使って、願いを叶える――つまり”過去に戻る”のだろう。
夢を現にする――夢現書とは、良く言ったものである。
(……タクトは、どう思っているんだろう?)
父親の過去に戻るという願いに対し、彼は肯定的なのか、それとも否定的なのか。レナ自身としては、それが”ズル”だと分かってはいるものの、どうしても否定することは出来なかった。
自分も、もしフェル・ア・チルドレンでなければ――そう思うことは、これまでに何度もあった。その願いを叶える機会が与えられれば、もしかしたら――
『――やめておけ』
「っ!」
突然背後から声をかけられ、レナはびくりとして後ろを振り返った。するとそこには、宙に浮かぶ銀色の子人――スサノオがいた。例によって和服に身を包んでいるスサノオは、レナの反応を見て首を傾げるものの、風菜の自室を見て、
『今はタクトと風菜が話している。出来れば、邪魔はしない方が良い』
「あ、う、うん……そうだね……」
――やめておけ、というのはそっちに対してか。レナはそっと息を吐き出した。あまりのタイミングの良さに、彼女は一瞬考えを読まれたのかと思ったのだ。
『…ふむ。所でレナよ』
安堵するレナを長めながら、スサノオは相づちを打ちながらなぜか頷いた。その頷きに嫌な予感を覚えた彼女は飛び退くようにスサノオから距離を取った。だが遅い。
『―油断大敵だぞ』
「きゃあっ!」
小さな体と宙に浮かんでいる、という特製を利用して、彼女の視界から外れるや否や瞬く間に背後を取り、彼女が吐いていたスカートの裾を捲り上げた。俗に言うスカートめくりである。今時の子供ですら行わないであろう行動だ。
当然レナはスカートの裾を押さえつける。きっと後ろを振り返り、素知らぬ顔でフワフワと浮かぶスサノオを睨み付けた。
「な、何するのよこの変態!」
『何もしていない。風が吹いたのではないか』
「……何色?」
『オーソドックスな白というのは良いものだぐえっ』
素知らぬ顔をしながらそんなことをほざいたスサノオに対し、レナは容赦なく右足で蹴り飛ばした。吹き飛ばされ、手近な壁に叩き付けられたスサノオは潰れた蛙のような叫びを上げた。
「この変態! アキラさんに言いつけてやる!」
顔を真っ赤にさせた彼女は、ずるずると床に倒れ込んだスサノオを睨み付けながら罵る。一方罵られたスサノオは目を回しながら彼女を見上げて、
『まぁ落ちつくが良い。そう毎度毎度奴を呼び出していたらきりがないぞ』
「そうさせているのはあなたでしょ!?」
少しは回復したのか、再び宙に浮かび上がったスサノオはやれやれとばかりに肩をすくめるが、レナは即座に突っ込みを入れる。なんだかんだ言って、スサノオは以前の主である風菜はもちろん、アキラや未花にさえ頭が上がらないのだ。
『そう大声を出すな。私もつい桜の木の下のことを大声で言ってしまいかねない』
「……え、何のこと?」
桜の木の下、という言葉に目元をぴくりとさせたレナは、にっこりと優しげな笑顔を浮かべて首を傾げる。――しかし目は笑っておらず、逆に彼女の怒りを如実に表していた。そればかりか、彼女の背後に阿修羅が立っているように感じられたのだ。
『………何でもない。そう、何でもないのだ……』
その迫力に飲まれ、スサノオは口を閉ざす。触らぬ神に祟りなし、と言うではないか。神(自分)が言うと説得力があるだろ?
「声に出ているよ、マザコン神様」
『お主言っていいことと悪いいことがあるだろうが!!』
流石にその呼び方だけは嫌なのか、普段とはやや異なる口調で抗議するスサノオであった。――神話では、母のいる世界に行きたいと泣き叫んでいるエピソードがあるため、マザコンという評価を覆すのは難しいだろう。
『……コホン。それでレナ、お前に少し用があってきたんだが』
「話逸らそうとしてる?」
『用があってきたんだが!』
咳払いをして話題を変えようとするスサノオに対し、レナはジトッとした目つきで指摘する。決して認めようとしないスサノオに対し、諦めにも似た感情を抱いた彼女はため息をつきつつ、先を促した。
『――確認になるが、本当に良いんだな? 正直、おすすめはしない。奴の心配事を確実に増やすことになるからな』
「………」
言われた言葉に瞳を瞬かせて、顔を俯かせる。どうやら用があったことは事実なようだ。スプリンティアの一件が終わった後、レナはスサノオに頼み込んだことがある。本人は乗り気ではなく、また主であるタクトの心配事が増えると否定的ですらあった。
けれどタクトの力になるには、彼と共に戦うためには、これが必要なことだと彼女は思っている。彼女の戦闘力は、武術で言えば彼には到底及ばず、“魔法”で言えば彼女の方が遙かに上手である。
タクトの実力が遙かに上がり、総合的な戦力で言えば二人の間には大きな溝がある。とは言え、部分的に見ればまだレナが勝っている点もあるのだ。なら彼との戦力差を埋めるには、その勝っている点をさらに伸ばすのが良いだろう。
つまり魔法――魔術の腕を上げる。その方法として、彼女はスサノオにあることを頼んでいたのだ。
「……あたしは大丈夫。だから……」
自身の胸の前で手を重ね、彼女はそっと瞳を閉ざした。――自分はもう大丈夫。彼と同じで、”過去”に向き合うことにしたのだから。
「だから、お願い。あたしの中にある、”もう一つの魔力炉”の封印を解いて欲しいの」
彼女の、フェル・ア・チルドレンとしての力を使うことを。
『………その危険性は、以前も説明したな? 魔力炉は、生命力を消費して魔力を精製している。炉が二つあれば、多くの魔力を精製出来るが、それに比例して生命力の消費も多くなる』
瞳を細め、忠告するかのような口調で告げるスサノオに対し、彼女はこくりと頷いた。生命力を使って魔力を生成する以上、魔力消費が多ければ当然消耗し、動けなくなるほどの疲労さえ感じることがある。下手をすれば、自身の命に関わる事態になることだってあるのだ。
その炉を、フェル・ア・チルドレンである彼女は“二つ”宿している。片方は封印しており、今も魔力炉は一つだけしか動いていない。だがその封印を解き、魔力炉が二つも動いてしまえば、スサノオの言うとおり生命力の消費も激しくなる。
魔力炉が二つならば、魔力生成量も生命力の消費量も二倍になる――という単純なものではない。二つの魔力炉が互いに干渉し合い、生成量も消費量も二倍以上に跳ね上がるのだ。
そうなれば当然生命力の消費が激しくなり、最悪死に至る可能性もある。現に数週間前、彼女はそれで苦しんでいたのだ。意識を失った状態で、生と死の狭間を彷徨っていた。
――そして、その問題を解決するために、タクトが奔走したことも記憶に新しい。
「折角タクトが助けてくれたのに、その行いを無駄にしてしまうかも知れない。……そのことに、申し訳ないと思う気持ちは確かにあります」
瞳を伏せて、本当にすまなさそうな声音で告げるレナ。だけど、と彼女は伏せていた顔を上げてスサノオを見やった。――その瞳は真っ直ぐで、逆にスサノオが一瞬呆然としたほどである。
「けれど、この力が彼の助けになるのなら……躊躇ってなんか、いられない……!」
『…………』
彼女の真っ直ぐな瞳に、スサノオは押し黙り、しかしすぐにふっと笑みを浮かべた。そして心底嬉しそうな顔で、ぽつりと呟く。
『……果報者だな、主は』
友人達から思われ、幼馴染みの少女からは慕われ、仲間達からは気にかけられ――これで果報者でなかったら、一体何だというのだろうか。
かつてのルフィンも似たようなものだった。気がつけば、自然と周囲に人が集まり、力を貸し、手助けをしてくれる。だが、当然違うところもある。――それは協力者達の心持ちだ。
ルフィンの場合は、彼が持つ力を”信用”し、力を貸す人物が多かったように思える。彼がするのならば、そうなる可能性が高い――そういった打算的な意味合いも含まれていただろう。
だが彼は違う。タクトの場合、彼の人柄を”信頼”し、力を貸してくれる人物が多い。父親とは逆に、分が悪くても、彼のためならば――そう言うように、自ら進んで協力してくれる者がいる。
信用と信頼――ただ信じるだけの信用と、信じて頼る信頼――本当の意味で人望があるのはタクトの方なのだろう。現に大昔も「王」よりも「王の剣」のほうが人望があったと聞いている。
――まぁ、「王」も「王の杖」も、あまりにも人間離れした能力故に、どこか人から避けられていて、唯一接しやすかったのが「王の剣」のみだった可能性も捨てきれないが。
『……わかった。だが私も、今の主に心配事を増やすような真似はしたくはない。保険をかけさせて貰うぞ』
「保険って?」
レナの覚悟をくみ取ったスサノオは彼女の頼みに対し、ため息をつきながらも了承する。だがやはり、タクトのことを考えると彼女の頼みをそのまま聞くというわけにはいかないのだ。だからこそ保険をかける。首を傾げて問い返す彼女に、スサノオは真剣な表情で頷き、
『お前が自滅しないようにする保険だ。……ここが風菜の部屋の近くで良かったな』
「……」
ちらりと風菜の自室を見やるスサノオの視線を追って、レナは何となく嫌な予感を覚えるのだった。これから大変なことになるだろうな、とそんな予感を覚えて。