第14話 お出かけ
一週間ぶり……。一週間ぶりですよ、更新。
遅れてすいませんでした……
食堂につき、朝食を取ったタクト達は(二人とも和食)、レナとコルダが座って談笑している席を見つけた。どうやらあの二人、とても仲良くなったみたいだ。ちなみに、彼女らは洋食である。
彼女らに近づき、マモルが「よっ」と声をかける。
「おはようさん。昨日は良く眠れたか?」
「あ、フジ~。おはよう~。私はちょっと眠いかな~」
「だから俺はマモルって……。まぁいいや」
諦めたふうに息を吐いた彼に、タクトは苦笑いを浮かべて彼の背中を叩いた。
「まぁ気を落とすな? あだ名の一つや二つ、気にすることはないよ」
「そーそー。あだ名があった方が親しみを持ちやすいんだから」
「コルダ、もしかして狙ってやってる?」
朗らかに笑う彼女を見て、レナも苦笑いを浮かべながらそう指摘する。コルダはニッコリと笑い、
「うん。まぁフジはフジだし。そっちの方が言い慣れたから諦めてね♪」
ガクッと頭たれたマモルを見て、三人は笑い声を上げた。笑っている三人を恨めしそうに睨み、マモルはへんっと鼻を鳴らす。
「お前らな……そう言えば、今日の休日何かやるのか?」
と、急に何かを思い出したのかハッとした表情で三人に問いかけた。
「いや、特にないよ。あまりにも暇だったらどこかに出かけようかと思っているけど」
「う~ん、あたしもないかな。コルダは?」
「私は……うん、ないや。タクト、どこか行くんなら私も行っていい?」
箸を動かしながらご飯を食べるタクトの「どこか行く」発言に、コルダが食いついた。レナも、
「だったら、後で街の方に行かない? あそこ、色々ありそうだから面白そうだし」
と、彼女も行く気満々である。
タクトは二人の返事を聞き、じゃあ行くかなと頷きかけーー肝心の話題を振った男が完全スルーされていることに気づいた。不機嫌そうに顔を歪ませるマモルに彼は恐る恐る声をかけた。
「えっと、マモル? 何だったらマモルも……」
「行くに決まっているだろ! てか俺もどこか行こうって誘おうを思ってたんだぞ!」
(拗ねてる……)
付き合いの長い二人は彼の叫びを聞いてそう思い、何となく情けなく思った。この男、いい年扱いてどこか幼稚なところがあるのだ。そうなったら適当に流しておれば良い。
「はいはい、わかったから。とにかく今はご飯を食べようよ」
「タクトお前……」
よって例の如く適当に流しておいたが、当のマモルからジロッと睨まれた。声音も、不快感丸出しである。
それをスルーして、タクトは涼しい顔で食事を続けている。レナはその光景に慣れっこなのだが、コルダの方はそうでもない。今にも喧嘩になりそうな雰囲気をかもし出しているマモルを見て、おろおろする。
「コルダ、大丈夫だよ。ああ見えても、喧嘩とかにはならないから」
「んーそうかな~。フジ、不細工な顔やめて、とりあえずご飯食べよ!」
「おい!」
大爆笑。タクトとレナは彼女の発言を聞いて、大きく笑い出した。幸い、食堂はがやがやと騒がしいので注目を集めることはなかった。
コルダの脳天気も、ここまで来れば精神年齢はいくつなのかと思いたくなる。笑っている二人をマモルはジロッと睨んだ。
「何が面白いんだよ!」
「い、いや、だって……」
「そ、そうだよ、ね……?」
よほど面白かったのか、二人とも息も切れ切れにそう呟いた。
「ね~、ご飯食べないの?」
コルダの発言。こうなった非は彼女にあるのに、全くの無関心。その自由人度に、ホントに精神年齢はいくつなのかと再びタクトは思った。
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その後、四人は待ち合わせにしておいた寮の前に集合し、そのまま街へ出かけることとなった。
フェルアント首都、リアルト。行き交う人々はとても多く、あたりは喧噪に包まれている。様々な世界との交流を持つフェルアントは、それぞれの世界の特産品を輸出入しており、リアルトにはそれが多く出回っている。だが、それは精霊のことを一般的に知っている世界に限ってである。つまりは、三人の故郷である地球産のものは出回っていない。
「ねぇ、三人の故郷の……地球だっけ?そこって確か、精霊文化ないんだよね?」
街に繰り出し、リアルトのメインストリートを歩いているときにコルダが聞いてきた。
「うん、そうだけど?」
「じゃあさ、どうして三人は精霊と契約を結ぶことが出来たの?」
彼女の疑問に、タクトはため息をついて苦笑をする。
「アキラって名前に、聞き覚えはない?」
「?それはもちろんあるけど……」
彼女の問いに朗らかに答えながら頭をかき始める。
「桐生|アキラ(彰)って言うんだけど。僕、その人の甥っ子なんだ」
タクトの答えに、コルダは目をぱちくりさせて硬直した。目を何度も瞬かせ、必死に彼の言葉を飲み込もうとする。
「桐生……ア、アキラって……。じょ、冗談、だよね……?」
「コルダ、大変遺憾ながら、本当だ」
「何が遺憾なんだよ……」
ふうっと再度ため息をつき、タクトはそう呟いた。マモルとのやりとりを聞き、コルダはようやくいつもの笑顔を見せた。ーー若干、引きつってはいるが。
桐生アキラーー。いや、アキラの方か。少なくとも、このフェルアントでその名を知らぬ者はいない。
十五年前、フェルアントで起こった改革。その功労者であり、そして数少ないランク一位(最上級)の一人である。
当時フェルアントでは非人道的な研究を行っていたことがあり、また、政府もそれを黙認していた。研究についての詳細は省くが、それによって多くの命が奪われてしまい、それを変えようと立ち上がった一人が彼なのだ。
政府や当時のランク一位、そしてフェルアントの持つ最強部隊とうたわれた軍勢とも立ち向かい、見事勝利。フェルアントそのものを変えることが出来たのだ。
彼の強さは”異常”とも呼べる物があり、同じランク一位でも頭一つ飛び抜けた実力を持っている。また、今現在彼はフェルアント地球支部の支部長を務めている。
以上のことを話しーーとは言え彼女も知っている事柄を多く含んでいるがーー話し、これでわかったでしょ、とばかりに言った。
「簡単に言うと、僕は血筋で、マモルと……後レナも僕が精霊を使っているのを見てね。偶然、二人とも素質があったから、それで」
そう言って何となくレナに目配せする。すると彼女はにこっと笑いわかったとばかりに頷いた。
「……タクトって……ボンボンだったんだ……」
コルダの呟きに、タクトはあははは……と乾いた笑い声をあげ、
「あまり、触れ回らないように。僕も、親の七光りなんて言われたくないしね」
「ふ~ん、大変なんだね、タクトも」
「それにコイツは病を患ってるしな。おかげで色々大変だよっっぐっ!」
マモルがケタケタ笑いながらいい、その隣にいるレナが彼の足を踏みつけた。足を押さえ悶絶する彼には目もくれず、コルダはえっと驚きの声を上げ、
「タクトって、病気なの!?」
「病気って言えば病気だけど……。でも大丈夫だよ。大した物じゃないし」
(……十分大したものだと思うがな)
自分の中にいるコウがやれやれ、とばかりにため息をついたのを感じ取り、うっと痛いところを突かれたと思った。
確かに不反応症候群は厄介極まりない病気だが、今まで何とかやってこれたのだ。もう慣れたので、と言うか、術式を使ったことがないので何が厄介なのかいまいちピンとこない。それに、
『……やはり、あいつの子だな』
自分がそれになったと聞いたときの、叔父の言葉がひどく心に残っている。