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精霊の担い手  作者: 天剣
2年時
233/261

第33話 逃げる者、向かえる者~7~

アキラからの連絡を受けたカルアは、彼とギリの二人と合流した後、すぐにこの場所へとやってきた。どうやら転移してきた四人のエンプリッターは、その後すぐに動かなかったようだ。


それを見たアキラは、しばし考え込んだ後、「証は出すな。だが用心はしておけ」とだけ告げ、宣言通りに彼らの元へ赴こうとしていた。支部長のその姿に慌てるギリだが、彼も何かおかしいと言うことを感じ取っていたのか、こちらに目配せをしてくるだけである。


「……まあ、言われたとおりにするとしよう」


――カルアとしても、おかしいと感じてはいる。エンプリッター側からすれば、先の襲撃はこちらの主要施設に被害はなく、結果を見れば失敗である。そんな状況で追撃しても無意味だ。


例え追撃だとしてもたった四人しか居ないこの人数――一体何がしたいのだろうか。それにグレム・アーネン――エンプリッターでの重要な位置にいる人物も混じっている。


考えられるのは、目の前の人物の中に桐生アキラ並の実力者が混じっている可能性がある、もしくはそれに類似する”切り札”があるということ。もしくは――


「……停戦でも申し出に来たんですかね?」


「……俺も同じことを考えていた」


ギリは呟く。どことなく、そうであってほしいと言うようなニュアンスが混じっていた。だが、その考えはカルアの中にもあったのだ。だが可能性は低いだろう。もし停戦を結びに来るのだとしたら、それはこちらではなく、フェルアント本部に言うべきだろう。


――奴らが、こちらの参戦を阻止したいという思惑で停戦を申し出てくる可能性も、否定できないが。しかし二人の会話を黙って聞いていたカルアは、指を一つ立てた。こちらを振り向かず、前に居る四人の元へ向かいつつ、


「もしくは、エンプリッターの中で分裂したか、だ。……捕らえた奴らの話ではあるが、グレム・アーネンは話が分かる奴らしい」


アキラの言葉に、二人は顔を見合わせた。支部長の提案した分裂説――確証はないが、もしそれならある程度話のつじつまが合う。


「まぁ、実際の所わからん。……だから用心しておけ。いつでもこの場から離脱できるようにな」


首を振り、その後低い声で気を引き締めさせてくるアキラに、ギリは頷いて、


「了解です。……しかし、危なくなったら支部長も離脱して下さいよ。……てか、本当は俺等が支部長が離脱するまでの時間稼ぎをするんじゃないんですか?」


「それもそうだ。……あんたが帰らなかったら、未花さん、泣きますよ」


「…………」


部下二人の言葉に軽い驚きを表した後、一瞬悲しげに俯いた。その変化が気に掛かったが、アキラが軽く笑みを見せたことで霧散した。


「……あぁ、そうだな。アイツを泣かせないために、危なくなったら私も戻るとしよう」


何十年もの付き合いになるが、それでも妻には頭が上がらない。それは今も変わらなかった。苦笑するアキラを見て二人はほっと息を吐き出す。


アキラから言質を取り、一行はエンプリッターが居る場所へと歩き続ける。――どうやら向こうもこちらに用があるのか、逃げようともせず、そして警戒はしているが戦闘の意思は感じられなかった。


まだ確かなことは何も言えないが、アキラの言うとおりエンプリッター内で何かが起きている、という可能性は高まったと言えるだろう。カルアとギリの二人は互いに目配せし、ギリが肩をすくめる。どちらが向こうに声をかけるのか、無言で押し付け合いをしていたのだ。やがてカルアはため息をつき、やれやれと首を振って声を張り上げようと口を開きかけた。


「まて、私がやろう」


すっと手を伸ばしてカルアを止め、アキラは臆せずに一番前へと進む。――一方四人のエンプリッターのうち、二人がぐっと後ずさる。その仕草から、相手の方もアキラの実力を把握しているようであった。


「私はフェルアント地球支部支部長、桐生アキラだ。君達はエンプリッターで間違いないか」


「あぁ、間違いない。……エンプリッター本隊所属……”元”所属していたグレム・アーネンだ」


先頭にいた――後ずさらなかった二人のうちの一人が、アキラを真っ直ぐに見つめながら口を開く。グレム・アーネン――先程アキラが言っていた「話の分かる奴」の姿を見て、カルアは内心若いと思った。自分と同じぐらいか、少し上――だいたい二十代後半と言った所だろうか。


だが、気になったのはエンプリッターに”元所属していた”――過去形であり、今は違うといわんばかりの言葉。アキラの眉がぴくりと動く。


「……それは、今はエンプリッターではないということで良いのか?」


「あぁ。一言で言うのならば、エンプリッターの内部分裂だ。そして……元とは言え、そちらを襲った集団に属していた身で、図々しい願いなのは承知の上だが……我々を助けて欲しい」


「――何?」


ぽかんと口を開いたギリがぼやいた。驚きの度合いで言えば、カルアも、そして言葉に詰まったアキラも同じだったことだろう。


――もしかしたら、アキラはその可能性を思い描いたかも知れなかった。だがその可能性は低いと思っていたのか、それともここまで直球に言ってくるとは思わなかったのか。どちらかなのはわからないが、彼の意表を突いたことに変わりはなかった。


「ぐ、グレム様!? そこまで素直に……!」


それは味方も同じであった。向こうもここまで正直に話すとは思っていなかったのか、慌てた様子を見せている。だがグレムはそんなこと構わない、と言わんばかりに首を振り、アキラただ一人を見据えて、


「貴方の力をお借りしたい。桐生アキラ殿」


「……貴様は少し勘違いをしているようだな。私達が貴様等に協力する必要はない。いくら本隊から逃げてきたとしても、エンプリッターであることに変わりはないのだからな」


「確かにそうだ。我々はエンプリッターだ、そのことが変わることはない」


「ぐ、グレムさん!?」


しばしの沈黙の後、相手がアキラの発言を受け入れたとも取れる発言をしたためか、慌てた様子で後ろについている男がうろたえた声を発した。だが彼は諦めた様子を見せず、ただひたすらにアキラを見つめているのみだ。


「だが私は、今の組織のあり方に疑問を持っていた。……本当にこれで良いのかと。我々精霊使いには、世界を統べるよりも、もっと大事な使命があるのではないか、と」


「…………」


じっと見つめるその視線は、揺らぐことがない。アキラは視線を彼に向けたまま、微動だにせず――二人の男が、視線をまじ合わせながら真剣な表情を浮かべている光景に、その場は痛いほどの静寂が生まれている。


「エンプリッターを変えなければならない――私はそう感じ、老師と共に改革をしていこうとしていた。だが、ある人物がエンプリッターに現れたことにより、全てが変わってしまった」


「――一つずつ聞いていこう。貴様は……いや、貴様達はどのようにエンプリッターを変えていこうと思っていたのだ?」


アキラの瞳がすっと細まる。


「……老師が世界を旅していく中で分かったことがある。……異世界で生まれた精霊使いがどのような目に遭うか……地球支部支部長殿はご存じか?」


「知っているとも。私自身、地球という”異世界で生まれた精霊使い”だ。……少年時代は何度も苦しい思いを味わったとも」


――ちらりとギリは隣のカルアを見やった。無表情を浮かべているが、彼の出身もフェルアントではなく異世界――それも精霊や魔法文化がない異世界だ。ギリとしては想像しか出来ないが、群れの中に異端がいれば、迫害されるのが常だ。アキラの言葉もあり、あまり良い想像は出来なかった。


「――私もだ。老師に拾われるまで、淘汰されかけていた」


グレムが頷き、そこでやっとアキラとカルアが感応した。前者はこめかみをぴくりとさせただけだが、カルアについてははっとしてグレムを見やる。


「ならば話は早い。……老師は、そのような目に遭う子供達を見て救わなければと考えた。以前掲げた理想は間違っていた、理想を叶える正道は非道だった……そう悟った老師が、自らに課した贖罪がそれだ。その贖罪のために、間違った理想を掲げるエンプリッターを変えなければならないと――」


「――その老師は誰だ?――」


自らの過去を思い返しながら口を開くグレムに対し、アキラは低く、しかし微かに震える声音で問いかけた。意図的に低い声で問いかけたからか、痛いほど静寂な雰囲気に、微かなざわつきが生まれた。


「……シュワル・アーネン老師だ」


「――――」


「……何?」


グレムが口にした名前に、アキラとカルアが反応した。もっともアキラに関してはやはりか、と言わんばかりの沈黙であり、カルアの反応は純粋な驚きであった。一方、関係性が全く分からないギリはアーネン性に首を傾げながらもカルアにそっと問いかけた。


「シュワル・アーネンって?」


「……かつての”改革”の時、レジスタンスと何度も戦って顔を合わせたフェルアントの役人だ。……奴の養子か拾い子か……」


最後にぽつりと呟いた一言でギリも合点がいった。老師に拾われた、と言っていたグレムの性がシュワル・アーネンのそれと同じなのは、そのあたりの可能性が大きそうだ。


「…………」


アキラは押し黙っている。――頭の中に浮かび上がるのはかつての改革時の戦い。何度も顔を見合わせたため覚えてしまった。結局、お互い詳しい人となりを知るほど話したことはなかったが。


一体如何なる心境の変化があったのだろうか――もう十七年も前の事であり、アキラとしても当時の彼の顔を正確には思い出せなかった。ふぅっと息を吐き出し、気持ちを切り替えてグレムを見やる。


「シュワルが、そう思い至ったと?」


「あぁ。私自身、彼に救って貰った一人だ。そしてその考えを私に教えてくれた」


――良くも悪くも”シュワルの継者”ということか。グレムに目を向けながらそう思うアキラは、ふむと考え込んだ。シュワルが何を考え、何を感じ、何を彼に教えたのかはまだわからない。だが少なくとも、問答無用でグレム達を捕らえるという選択はない。


彼らが新たに掲げた理想――異世界で生まれた精霊使いを守る――そのことが本当なのか確かめる必要があるが、今のところは信じても良いのかも知れない。


とはいえ、地球支部内も”何かが潜んでいる”可能性があり、彼らを支部内に入れることで何かしらの問題が生じる可能性は十分にある。しかしフェルアント本部に彼らを預けるのは中々難しいところだろう。フェルアントの情勢を考えると、即座に彼らを処断する可能性も捨てきれない。


――難しいところだ。支部長として判断し、部下達に命令しなければならないが、その判断に迷う所である。


「お前達はどう思う?」


ちらり、と後ろに控える二人の従者――ギリとカルアに声をかける。ギリに関してはふむと頷いて、


「――少なくとも俺には、彼らが嘘をついているようには見えません。とはいえ、”嘘は言っていない”だけなのかも知れませんが。本当かどうかを証明しろ、と言っても、今の彼らでは証明のしようがないでしょう」


いつもの砕けた口調ではない、真剣みを帯びた口調で答え、ギリはちらりと彼らを見やる。男女一人ずつがギリのことを鋭い瞳で見ているが、グレムに窘められ、不承不承睨み付けるのをやめていた。


「ですが……私自身、少々思うところがあり。彼らの意思をくみ取っても良いのではないか、と愚考します」


「……は?」


彼の言葉に、エンプリッター側の一人――ギリを睨み付けていたうちの男の方がぽかんとした表情を浮かべる。何を言っているんだ、と言わんばかりの表情だ。アキラも口の端に笑みを浮かべながら、


「そうか。……カルアはどうだ?」


「右に同じく。ただ、彼らの思惑が違うところにあれば……その時は、矢を射ることにする」


――その的は、当然目の前に居る彼らだ、と口にはせず、その鋭い瞳が語っていた。部下二人は彼らに対して警戒は持ちつつも、信じても良いのではないか、というのが考えのようだった。


――思えば、アキラも含めて三人とも、異世界で生まれた精霊使いだ。幼少期の孤独感、疎外感は相当な物だったことだろう。アキラに関しては、妹や義父が精霊使いであったが、それでも周囲からの”異端者”としての雰囲気は強かった。


「……私も概ね同じ気持ちだ。……最後に一つ尋ねたい」


部下二人から、正面に控えているグレムに目を向ける。――彼自身、話がここまですんなりと進むとは思っていなかったのか、目を見開いて驚きを露わにさせている。そのため、アキラの問いかけに反応するのにやや間があった。


「あ、あぁ。何を聞きたいのだ?」


「先程、ある人物が現れたことでエンプリッターが変わってしまった、と言ったな。その現れた人物は何者だ?」


最後の問いかけとして聞かれたのは、やはり元凶についてだった。その話題になった瞬間、エンプリッター側の雰囲気が目に見えて変わっていく。怒りと嫌悪が入り交じった、複雑そうな物へと。


グレムの側に控えている終始静かだった――とはいえ無表情ではなく、この場の成り行きを心配そうに見ていた少年でさえ、瞳を伏せて言いたくなさそうな雰囲気を表している。だが、このままでは話が進まない。意を決して、というような雰囲気を出しながらグレムは口を開く。


「……ある人物について、恥ずかしいことだが名前はわからない。というよりも、おそらくエンプリッター内で知る者はいないだろう。彼は自身のことを何一つ語らなかったからな」


「――――」


「………? その人物、エンプリッター側は信用していたのか?」


――そんなことがあり得るのだろうか。話を聞いていたギリは疑問に思い首を傾げる。話を聞く限りでは、奴が現れたためにエンプリッターの内部が変わっていったというぐらいだから、それなりに信用は得られていたと思われる。だが何一つ己を語らずに、信用を得ることが出来たのだろうか。彼の問いかけに、グレムはこくりと頷いた。


「概ね信用されていた、と言っても良いだろう。……我々は奴のことを信用できなかったが」


「信用できなくて当たり前です。味方を捨て駒にするばかりか、呪術まで用いるような奴です」


「……呪術だと?」


先程から黙り込んで話を聞いていたアキラが、その言葉に反応する。――まさか――一瞬浮かんだ嫌な予想が、的中するような気がしてならなかった。


外れていてくれ――嫌な予感が外れることを願いながらアキラは口を開いた。


「……先日地球支部が襲撃されたのは、その少年の策の一つか」


「――裏付けるようなことは一言も言わなかったが、私はそうではないかと思っている。それに、各支部への襲撃も、フェルアント学園への襲撃も、おそらく彼の策だ」


「………」


「それと、こちらからも一つ良いか? 私はその人物について“少年”と言った覚えはないのだが……なぜ分かったのだ?」


「………」


アキラは答えない。――答える余裕がないのだ。これまで諦めていた遠い日の記憶が、最悪の形で牙をむき始めたことを肌で感じ始めた。


「……その少年に、心当たりがある」


「なっ……?」


「――彼は今どこに居る? 君達はどこから来た?」


――もし彼の推測が正しければ、地球支部の転移門の情報については解決するだろう。もっとも正しければ、そのことを上回る問題が現れることになるだろうが。そうなって欲しいような、成って欲しくないような、複雑な気持ちを抱きながらグレムの返答を待つ。


「……”スプリンティア”だ。今はそこに、あの少年もいるはずだ。……それに、エンプリッターの本隊もいる」


「っ!!?」


「スプリンティアだと!?」


彼らがもたらしてくれた情報に、地球支部側の精霊使い達は驚きを隠せない。――スプリンティア――フェルアントと同盟を結ぶ異世界の一つであり、その中では飛び抜けて科学力が高い異世界である。


フェルアントの技師達を何人か交流させ、向こうの技術を学んでこちらに生かすなど、世界間の交流も多い。その本質は”職人の世界”とも言うべきもので、技量が試される。


だが最近でのフェルアントの襲撃に使われた兵器を見るに、彼らがエンプリッター側と何らかの繋がりがあるのではないかと見られてきたが、その証拠がここにきて現れた。


それはフェルアント全体で見れば良いことなのだが――グレムから話を聞いたアキラは、眉根を寄せて苦い表情を浮かべた。


(……タイミングの悪い……)


――現フェルアント本部本部長から伝わってきた情報では、すでにスプリンティアへの調査を行うためにマスターリットを送る算段を付けているとのことだった。


本来ならばこちらも本部に情報を伝えるべきだが――今のアキラに、それは出来なかった。気にかかることが多すぎ、こちらでも直接調査を行いたいが、地球支部で行えることは少ない。権限のあるフェルアント本部ならばともかく、“支部”程度の権限で異世界への調査は憚れること請負だ。


本来ならば”スプリンティア支部”に命令し調査を行わせるのだが、この様子ではおそらくエンプリッター側についたか、すでに陥落しているかのどちらかだろう。もしくは――ともあれ、だからこそミカリエ本部長は暗部であるマスターリットを送る手はずを整えたのだろう。


――色々なことが絡み合ってきた。だが、地球支部はマスターリットのような超法規的な活動は行えない。地球内でならば多少の無茶は利くが、それが異世界になると流石に難しい。正当な手続きを行っても、スプリンティアへの調査は行えず、本部からの調査報告を待つしかない。つまり自分たちが今できることと言えば、このことを本部に伝え、そこで終わりとなる。


(……どうしたものか……)


本音を言えば、自分自ら調査を行いたいほどだ。何せ地球支部内に内通者がいる可能性がある、と思い調査を続けてきたのだ。結局内通者はいない可能性の方が高まってきたが、ここで他人に任せるような真似はしたくはなかった。


それに――気がかりなこともある。内心の葛藤を、ため息をついて宥めてアキラはグレム達を見やる。


「……色々と、詳しい話をしなければならないだろうな。だがまずは、君達の身の安全だ。フェルアント地球支部支部長の権限に置いて、君達の安全は保障しよう」


「……ありがとうございます」


アキラの言葉に、グレムはホッとした表情で頭を下げた。彼の後ろにいる二人も同様であったが、それまで一度も口を開かなかった最年少の少年が口を開く。


「――支部長さん。一つ、良いですか……?」


「? なにかね?」


今まで一度も話さなかったため、アキラやギリも、興味津々といった様子で少年を見やる。だが一方で、グレム――特に彼の後ろに控える女性は冷や汗を流しそうな表情で固まった。


「その……僕が言うのも何だとは思うんですが……その、迷いがあっても、自分がやるべきではないかと思ったら、やるべきだと思います」


「――――――」


「正しいか正しくないかで判断するのではなく……そうするのが、良いんじゃないかと思います……」


「お、お前こんな時に何言って――っ!」


案の定というべきか、女性は顔を真っ赤にさせて少年に声を荒げようとする。それに一瞬びくりとする彼に対して助け船を出すかのようにアキラは問いかけた。


「――少年、名前は?」


「あっ……ラルドって言います」


「――覚えておこう、ラルド君。……おかげで踏ん切りが付いた」


「……え?」


「あの、支部長……まさか……」


ラルドのことを興味深そうに見ていたギリとカルアだが、アキラが呟いたその一言に何を考えていたのかを察して、引きつった声音で確認しだした。それには一切答えず、代わりに微笑みを浮かべてグレム達を見やるのだった。


「君達の安全は保障する。……だが、色々と手伝って貰うことになるが、良いか?」


「……断れるわけがないだろう」


安全を保障する、ということは保護されると言うこと。そしてそれは、こちらが立場的に下と言うことになる。安全は保障した上で手伝って貰うという訳であるため、グレムとしても断ることは出来なかった。


やや表情をしかめて了承すると、アキラはこくりと頷いて言うのだった。


「では付いてきてくれ。……ようこそ、地球へ」




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