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精霊の担い手  作者: 天剣
1年時
23/261

第13話 早朝の訓練 ~2~

その人はいかにも遊び人、と言った感じの人だった。制服を思いっきり改造し、コート風の上着を着ていて、袖の部分には金の刺繍が入っている。燃えるような真っ赤な赤毛は軽くツンツンに立たせており、顔立ちとも相まってそれなりにかっこよく見えた。


「しかしまぁ、こんな早くから朝練か。物好きだな~お前も」


ーー少々性格に残念そうなところがあるが。軽薄笑いを浮かべ、へらへら笑う赤毛の彼にそんな感情を抱きーーすぐに首を振って追い出した。


「えぇっと……誰ですか?」

「おいおい忘れちゃったの? 入学式の時にホールの壇上で新入生に挨拶していたんだぞ」


入学式の時に壇上で挨拶したーーと言うことは生徒会長か。


(……あれ? 生徒会長、こんな人だっけ?)

(違うはずだぞ。会長は確か、眼鏡をかけた大人しそうな少年だったと思うが)


精霊と精霊使いにある特別な絆を使ってコウと話し込み、思わず目を細め、疑うような眼差しで彼を見たからだろう、彼は心底憤慨したと言う表情で、


「あ、疑っているな? もう一度言うけど、俺は正真正銘生徒会長だ!」

「新入生挨拶の時は違う人が挨拶してましたが」


両手を腰に当て、堂々と胸を張って答える彼に百パーセント猜疑心の籠もった目で彼を射貫く。すると彼はへんと鼻を鳴らし、


「その時は仕事でちょっと出られなかったんだ。彼はその時の代理。ちなみに、奴は副会長ぞ」

「なんかうさんくさいですね。どんな仕事だったんですか?」

「ふむ、ちょっと遠出して高いところで光合成してた!」

「人間は光合成しませんよ。……要するにサボりですね」


完全にあきれ果てた表情でため息をつき、タクトは刀を一度ビュンと振り、陣に納めた。

高いところと言うのは、どうせどこかの屋上だろう。肩に止まっているコウも、おそらく内心呆れているだろう。

あったことはないが、生徒会には心底同情する。こんな人が会長とは、世も末である。

ふと時計に目をやると、朝食の時間が迫ってきていた。タクトは慌てて生徒会の会長と名乗っている人に頭を下げ、その場を後にする。


「じゃあこれで失礼します。えっと……」

「あ、名乗ってなかったな。ギリだ。ギリ・マーク。以後お見知りを、桐生タクト君」

「え……」


軽い感じで名前を言われ、彼の言葉にタクトは足を止め立ちすくんだ。その表情は驚きに染まり、目を大きく開けている。自分は名乗った覚えはない。なのに何故、彼はーー。

鼻歌を歌いながらそそくさとその場を後にするギリの背中を見ながら、タクトはそのまま彼の背中を見続けた。


 ~~~~~


部屋に戻り、備え付けのシャワー室でかいた汗を流しつつ、タクトは先程の彼のことを思っていたが。途中でやめた。

せっかくの休日、このまま変な考え事をして過ごしたくはない。さっさと頭を切り換えることにする。

シャワー室から上がり、ぬれた髪をタオルで注意しながら拭き、私服に着替えて部屋を出る。目指すはエネルギー補充、朝食を取るために食堂へ向かう。


「……そう言えばマモル、起きてるかな?」


ふと心配に思ったので、寄り道してマモルの部屋に行こうかなと思ったが、いらない心配だった。


「……それ!」

「うぁ!?」


突然後ろから背中を思い切り叩かれ、彼は前によろめいた。体勢を何とか整え、叩いた人物、マモルに目をやった。


「おはようさん!!」


片手を上げ、めちゃくちゃ清々しい笑顔で朝の挨拶をするマモルにタクトはキッと睨め付け、


「いきなり何するんだよ、痛いだろ!」

「お、ワリィ。でも、朝の挨拶はしてくんねぇの?」


両手の指先をツンツンと合わせつつ、捨てられた子犬のような目をするマモル。自分より背の高い彼がやると、正直、気持ち悪い。

げんなりとして、タクトはため息をつき、とりあえず挨拶をする。


「……おはよう」

「何だよ、朝っぱらからテンション低いな~。ほら、さっさと食堂へ行こうぜ」


ため息をつき、マモルに促されるままにタクトは食堂へと足を向けた。

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