第32話 日常、気づいた思い~2~
風菜と未花お手製の朝食を食べ終えた後、タクト達六人とカルア、シズクを含めた八人は広めの部屋へと移動した。というのも、目覚めたばかりのレナが話があると皆に伝え、神妙な面持ちになった風菜や未花が頷き、この部屋へ案内したのだ。
八人が座ってもなお広く感じる居室。タクトの記憶が確かなら、この部屋はアキラが地球支部所属の精霊使い達と会議をする際に使っていた部屋だ。中央にあるテーブルを囲むように座り、やや緊張している様子のレナを見やる。
――ここに来る前に、アヤカと心配そうな表情で何かを話していたようだが、彼女は来なかったみたいだ。確かに、アヤカはレナの姉であり、家族だ。レナの体のことをも、流石に知っているのだろう。
「……それじゃあ話すね。みんなに聞いて欲しいことがあるの」
周囲に沈黙が落ちる。だが臆せずに彼女は口を開いた。
「まず、心配かけてごめんなさい」
「あのなぁレナ、心配するのは当然だろ? それにお前がああなったのは、お前のせいじゃないだろうに」
頭を下げたレナに対し、マモルは肩をすくめて返した。――元を辿れば、レナに施された封印を解除し、危険な状態に追い込んだのは一人の少年だという。その少年のせいでレナは眠りについたのだ、彼女に非はない。
しかし、レナは首を振る。
「でもたくさん心配かけちゃったのは事実みたいだし。……それに、正直嬉しかったんだ」
「……嬉しかった?」
アイギットが目を瞬かせて問いかける。嬉しかった――心配されたことが、ということだろうか。タクトの予想を裏付けるように、レナはコクンと頷いた。
「……こう思うのはどうかなって思うんだけど……みんなに心配されているのがわかって、嬉しかったんだ」
俯き、恥ずかしそうに、しかしどこか泣きそうな、そんな様子で言葉を紡ぐレナに一同は押し黙る。しばしの間を置いて、彼女の言葉に耳を傾けた。
「もう風菜さんから話はある程度聞いていると思うけど……私は……“バケモノ”なんだ」
「お前、何言って――」
「――――」
レナの口から飛び出したバケモノという言葉。それにマモルは反応するも、隣に座ったフォーマに制される。フォーマは眼鏡の奥からレナを見つめ、無言で先を促した。
「フェル・ア・チルドレン……精霊の子供達。胎児の段階で実体化した精霊の細胞を移植されて生まれてきた、”精霊が混じった人間”」
「……人体実験、だよね」
確かめるように告げるレナの言葉に、シズクが恐る恐るといった様子で問いかけると、レナはコクンと頷き、思い詰めた様子で重い口を開く。――誰の目から見ても、その先はあまり口に出したくはない、というのが分かる様子で。
「でも昔は……幼い頃は、そういう風には思わなかったんだ。本当に幼すぎて、私がそうやって生まれてきたってことも分からなくて……。でも、あの日……あの事件が、私の”精霊の体”が思い出させてくれたんだ」
「あの日?」
――タクトはふと、分かったような気がした。無意識のうちにマモルの方へ視線を向けると、彼もこちらを見てきたのだ。どうやら彼も察したらしい。あの日が、いつのことを指すのかを。
「あの日……私と、マモルと、タクトが……精霊使いに襲われた、あの日」
――今はもうない、”あの日”に切り落とされた右耳が疼いた。
――あの日、今からおよそ九年前か。自分たち三人は行動を共にしていた。その時はまだ、精霊使いになっていたのはタクトのみであり、レナは精霊使いではなく、マモルに至っては精霊の事を知らない一般人だった時。
雨の中、幼馴染み三人が一緒にいたときに悲劇は起こったのだ。何の前触れもなく現れた、数人の精霊使い。
奴らは、タクトとマモルがレナから離れた瞬間を狙い、彼女を瞬く間に連れ去った。だが幸運の女神が微笑んだのか、マモルが何かを感じ取ったのかレナの方を見て、彼女が連れ去られようとする瞬間を目撃したのだ。
そのおかげで二人は気づけた。だがすぐに動けたのはタクトだけで、マモルは事態が分からず――いやわかってはいたのだが、信じられないとばかりに呆然としていたのであった。
それもそのはず、当時はまだ一般人であり、子供であった。その彼が、目の前でさらわれようとする場面を目撃してすぐに動けるはずがない。
結果として、タクトが一人で彼女を連れ去ろうとする何者かを止めようと走り出した。――当然恐怖はあった。だがアキラから剣術の簡単な手ほどきを受けていた彼は、恐怖に直面しても臆することはなかった。
だがその恐れに対して臆しない勇敢さが、悲劇を生むことになる。レナを連れ去ろうとする何者か達に詰め寄ったタクトだが、彼と契約を交わしたコウの警告に耳を疑ったのだ。
あのとき、コウは言った。「奴らは精霊使いだ」と。――地球にいるはずのない、いたとしてもそれは”身内”だ。レナを襲う理由がない。困惑するタクトに対し、相手側もタクトの正体に気づいたのだろう。
雨の中、人気はなかったとは言え、街中で”法陣を展開させた”精霊使いに目を丸くするタクトは、法陣から引き抜かれた長剣に反応するのが遅れた。突き出される長剣は、彼の顔をかすめて通り過ぎ――右耳を切り落とした。
痛みに絶叫を挙げて傷を押さえるタクトと、その光景に驚き、恐怖し、完全に腰を抜かしてしまったマモル。――マモルは意味が分からなかった。突然白い魔法陣のような物が浮かび上がったと思ったら、そこから古風な剣が出て来て。そしてその剣が親友の耳を切り落とした、一連の動きが。
信じられない、とばかりに首を振り、腰を抜かしたまま後ずさるマモルだが、さらに彼は驚愕の光景を目の当たりにする。――耳を切り落とされ、痛みに絶叫していたタクトが、呻き声を上げながらゆらりと立ち上がったと思いきや、彼も白い魔法陣を展開させた。
――この時、マモルは本当に意味が分からなかった。何故見たこともない人達がレナをさらおうとするのか。あの法陣は何なのか。そして――親友であるはずのタクトが、何故法陣を使っているのか。
展開させた法陣から、日本刀を引き抜いたタクトに、彼の耳を切り落とした男は後ずさる。当時は分からなかったが、今となっては何となく分かる。見た目十歳にも満たない少年が、耳を切り落とさた痛みに耐えながら戦おうとするその姿を見て戦慄したのだろう。
痛みに震え、剣先は揺らぎ、しかし友人であるレナを助けるために戦おうとする少年に、襲ってきた精霊使いは狼狽した。
その一方、精霊柄に腕を掴まれ、さらわれようとするレナも、タクトの様子を見ていた。血を流してもなお助けようとしてくれる彼に、感謝ではなく戸惑いを覚えてしまった。――なんで、痛い思いをしてまで助けようとしてくれるのか。
――その時か。レナの戸惑いを感じ取ったのか、彼女の腕を掴んだ精霊使いが口元に笑みを浮かべて、幼い彼女の耳元で囁く。
――『まるでお姫様だな、”バケモノ”』――
血を流してでもレナを助けようとするタクト。その構図は囚われの姫を助けようとするそれに見えなくもない。そのことに対する皮肉だろう。
それには、バケモノがお姫様になったことも含まれていた。いきなりバケモノと呼ばれ、困惑するレナだが、腕を掴んだ五十代頃の眼鏡をかけた男の顔を見た瞬間、頭痛が走った。
――契約を結び、しかし裏切られ。仮初めの肉体を与えられて実体化した、とある精霊の記憶――それが、走馬燈のように一気に流れ込む。
強引に実体化させられ、肉体の一部を移植させられて。結果、人と精霊が交ざり合った者が造られた。
どこか知らないはずの、けれど見たことがある、そんな不思議な感覚を抱かせる研究室のような部屋で“私達”は生まれた。
そうだ、私達は普通じゃない。私は他の子供達とは違って”見た目だけは”普通の人と同じだったけれど、中身は違っていた。私は生まれたときから精霊使いと同じ体、身体能力を有していた。――フェル・ア・チルドレン(精霊の子供達)なのだということを、レナは理解したのだった。
研究室で生まれた私達だが、私はすぐに研究室から連れ出された。――きっと救ってくれたのだ。今なら分かる。もしあの記憶通りの場所にいたら、私は実験動物のように扱われ、今以上に苦しい思いをしていたことだろう。
レナはその時に理解したのだ。自分の体のことを、そして今自分を襲ってきた者達が何者なのかを。体が震える――それはなにも、頭痛だけではない。
――またあの場所に、研究室に連れて行かれる。そんな漠然とした、しかし確信があった。体の震えは、恐怖からも来ていた。しかし彼女は襲撃者達に――エンプリッターを睨み付け、気丈に振る舞おうとする。
だが助けようと戦い、しかし容易く倒されるタクトを見て、レナの表情が変わっていく。何度倒されても、傷ついて血を流しても立ち上がってくる彼に、エンプリッター達も戸惑いを覚えたことだろう。
だが一番戸惑っていたのは、レナだった。――もういいと、もうやめてと、声に出したかった。でも、出せなかった。
――諦めを感じながらも、その実彼なら助けてくれるかも知れないという期待もあった。本当は助けて欲しかった――のかも知れない。この時の彼女の気持ちは、おそらく彼女自身も分からなかっただろう。
何度も何度も立ち上がる血まみれの少年に戸惑い、恐れを感じたエンプリッターは及び腰になっていく。――何故そうまでして助けようとしてくれるのか、レナには分からなかった。
最終的に、どうやって気づいたのかはわからないが(おそらく魔力反応を検知したのだろうが)、救援にやってきたアキラとセイヤの二人により、レナをさらおうと襲ってきたエンプリッターは捕縛された。
――これがレナにとって、自分の秘密を知る機会となり。マモルにとっては異世界のことを知る機会となった出来事だった。
――時折タクトやマモルが補足しながら、あのときのことを皆に説明していく。だがその時の三人の顔は優れなかった。タクトもマモルも、この一件の後風菜から何故襲われたのかを教えてくれたが、詳しくは聞かなかったらしい。
レナの体はフェル・ア・チルドレンと呼ばれるかなり異なっている体であり、元々魔力炉を持っていた。だから狙われた――母親からは、それだけしか聞かされなかった。もう少し詳しい説明を、と当時は思わないでもなかったが、しかし母親の深刻な眼差しから、深く聞くべきではないと思ったのだ。
それに、あの一件からしばらくの間、レナの様子がおかしかったこともある。だから聞かなかったのだが。
しかし、彼女の話を聞いてようやく――それこそ十年近く経過してやっとわかった。遅すぎたと思わないでもないが。それに、彼女が精霊と――キャベラと契約を交わす際、かなり悩んでいた理由もだ。
――思えば、何故精霊使いになろうと思ったのだろうか。彼女がキャベラと契約を交わしたのは、あの出来事があった後である。その時、自分の体にある秘密について知ったのならば、精霊使いになることを躊躇うはずだ。
だが彼女は精霊使いになっている。不思議だと思い内心首を傾げるも、彼女の口から語られる話に耳を傾ける。
「……この一件で、私はすごく悩んだし、怖かった。……多分、今も怖がっているんだ」
「今も、なの?」
あのときの話を語り終えたレナは、ぎゅっと胸の前で手を握りしめて俯き加減に呟く。そんな彼女に、シズクが尋ねてきた。彼女はレナが話している間、熱心に聞き入っていたためか、最初よりは大分距離が近いように見える。――無論、物理的にではなく、心情的に、であるが。
「うん。……怖かったんだ。……みんな私の体のことを知って、怖がるんじゃないかって。……バケモノって、言われるんじゃないかって」
俯き、今にも消え入りそうな声音で告げるレナに、一同は――特に友人達は目を見開いた。それが、彼女の悩みであり、恐怖だったのだろう。だが――
「レナ、俺達は――」
「うん、わかってる。……みんな、そんなことは言わないってわかっているんだ。でも……私は、信じられなかった」
俯き、本当に申し訳なさそうに口を開いたレナの言葉に、アイギットは開いた口を閉ざす。黙り込んだまま、彼女の言葉に耳を傾けて。
「……だから、みんなには謝りたいんだ。こんな大事なことを、今まで黙っていて。みんなのことを信じられなくて。……特にタクトやマモルには……二人には、あんな目に巻きこんでしまったのに……何も伝えなかった」
――本当に、ごめんなさい――頭を下げて謝罪してきた彼女に、友人達は顔を見合わせた。やがてコルダが首を傾げて口を開く。
「……あたし思うんだけど……みんな、一つ二つは秘密にしておきたいことはあると思うよ? あたしだってそうだし……レナにとって秘密にしておきたかったことが、体のことなんでしょ?」
「……でも……」
ちらりとタクトとマモルを見やるレナ。コルダが言っていることは正論ではある。人は誰しも、秘密にしておきたいことはある。だが事情を二人に話さなかったのは、レナの不義理だろう。客観的に見ると、彼女の存在が二人を危険な目に遭わせたのは事実なのだ。しかしとうの二人は肩をすくめたりして、
「ま、話して貰えなかったのはちょっとアレだったが……十年近く経ってようやく話してくれたんだ、別に良いさ。それに、俺は精霊使いになれて良かったと思っているぞ?」
「マモルと同じだよ。……俺も、秘密にしておきたいことがあるし、言いたくないこともある。………」
そう言っている。――しかしタクトの目線が妙に落ち着きをなくしていた。確かに彼も、仲間に言っていないことがあり、自分の発言でそのことを思い出していたりする。幸いにもタクトの内情はこの場所にいる全員にはわからず、そのまま流された。
「……昔なじみ達はそう言っているが。他の奴らはどうなのだ?」
「私はちょっと傷ついたかな~」
「お前は違うだろ。少し口を閉じろ」
カルアが場の空気を読み取り、アイギットやコルダ、フォーマに目線を向けた。だが彼の隣に座るシズクが、戯けた口調でそんなことを言い怒られている。――だが、彼女のおかげでやや空気は軽くなった。
彼女に呼応するように、コルダがにこやかな表情と声音で告げた。
「私も気にしてないかな~。……でもそう考えると、あたしもみんなに不義理していることがあるんだよねぇ……」
「……コルダの事情は、中々根深いからね……」
しかし告げた内容は、軽くはない。彼女もまた、秘密を抱えた人物でもあるのだ。だがその秘密の大半は、“理”を有する人格が握っており、“もう一人のコルダ”でなければ秘密の全容を知ることは出来ない。
――彼女も、自分の中に”もう一人いる”ことを知ってはいるが、理に関する記憶と力は全てそちらが持っているため、どうすることも出来ないらしい。当然というべきか、彼女の口からそれらのことが語られるのは難しいだろう。
「うん。だからレナも、あまり悩まなくて良いと思う……っというより、悩みすぎると、せっかくの黒髪が白くなるよ」
「う、うん」
コルダの忠告に苦笑いを浮かべて頷くレナは、その言葉に幾分か楽になったように感じた。タクトからも似たようなことを言われたが、やはり同性の友人から言われたほうが身に入りやすいのだろう。
悩むと白髪になるぞと言われた彼女は、長く伸びた黒髪を弄り出す。やはり女性であるためか、その辺は気になるのだろう。そんな彼女に、アイギットもまた肩をすくめて、
「言いたいことの大半は他の連中が言ったから、俺からは特に。タクト達と同じ気持ちさ。……ただ一言付け加えるなら、ありがとうだな。……俺達を思って、自分のトラウマを話してくれたからな」
「……アイギット」
「……よくがんばった。ありがとう」
やや感銘を受けた様子で金髪の少年を見やり、その視線が照れくさいのか、視線を逸らしがちになりつつも言葉少なげにそれだけを言う。
場の空気に頬を緩ませながら、フォーマは片手で眼鏡を押し上げた。――自分も、覚悟を決めるべきなのだろう。“末っ子”が決意して、秘密を話したのだから。
「……俺もだいたい同じと言うべきか。だが、おかげで以前から抱いていた疑問が解けたよ、レナ」
「……以前から思っていた疑問?」
首を傾げて問い返してくるレナに、フォーマは頷く。頷き、彼女の目をひたっと見つめて口を開いて伝える。――己の正体を。
「以前……というよりも、初めて顔を合わせたときから思っていた。何故僕は、君のことを覚えていたのだろうかって」
「え、覚えていた……? ……どこかであったことがある、ということですか?」
それは思いがけない言葉だったのだろう。きょとんとした表情でフォーマを見返すレナは、一体何を言っているのだろうとばかりに首を傾げて、
「ご、ごめんなさい、記憶にないというか……どういうことですか? フォーマ先輩」
「――No7。そしてNo4」
「……ぇ」
フォーマが言った数字に、彼女は小さく声を漏らした。――その言葉は、一同に首を傾げさせた。ただの数字――しかし、その数字の意味を、レナは知っている。
「……僕がNo4……”四人目の子供”だ」
「……おい、まさか……嘘でしょ!?」
四人目の子供――フォーマは今、そういった。先程のレナの話の流れから、その数字と言葉が何を意味するのか、何を表しているのかを一同は悟り。
「君が”七人目”だ、レナ」
「……せん、ぱい……も……?」
「…………」
レナは震える声音と口調で恐る恐る呟き。そして頷いた彼は、彼女を見据えて疑問を口にする。
「……僕もみんなには黙っていたけれど……僕もフェル・ア・チルドレンなんだ。……四人目として生み出された、”ぎりぎりで人の姿を保っている”サンプル」
「……あ」
そこまで言って、コルダが何かを思い出したように呟く。そうだ、確か学園が襲われたとき、生徒達の避難階が謎の少年に襲われたときに、その少年が言っていた言葉をようやく思い出したのだ。
――もっとも、その時は人格が変わっており、彼女が知らないのは無理もないことではあるのだが。
あのときの少年は言っていた。
『それでもいくつか、ちゃんと育つ物もあったんだよ。でも、生まれてみたら”人の姿をしていなかった”んだ。それでも”サンプル”として価値があったから、生まれてきた順番に番号を付けていったんだ』
――生まれた順番に番号を付けていった。ということはレナは七番目であり、フォーマは四番目、ということか。しかしぎりぎりで人の姿を保っていた、ということは、一体どういうことなのか。
フォーマは眼鏡を押し上げながら、信じられないとばかりに目を見開くレナを見据え、だがそらしがちになりつつも、
「……僕も幼かったから、あのときどういうことなのかはいまいち把握し切れていない部分もあったけど……でも”生まれたての赤ん坊だった”君とは違って、それなりに成長はしていた」
「………」
「初めて合ったときに感じた違和感が、やっとわかったよ、レナ。……僕もみんなに謝らないとだね」
そういって眼鏡を外す彼は、ぼんやりとした視界で、しかしすっきりとした気持ちでみんなを眺めた。――レナとは違い、彼は精霊使いと同じ身体能力は有してはいない。精霊と契約を交わした現在は同じだが――体に混じった精霊の部分が強く表面に出てしまったため、体の一部分が異形化してしまっている。
現在は昔であった恩人によって人の姿にしてもらっている。首から提げたペンダントを握りしめ、彼も口を開いたのだった。