表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の担い手  作者: 天剣
2年時
165/261

第19話 神剣の名~2~

久しぶりの更新となってしまい申し訳ありません……汗


いえ、現在リアルの関係でなかなか更新する時間がとれず……

リアルが忙しいのもありますが、いい加減ネット環境を整えようや、自分……(ストックはある)


また、活動報告でも上げる予定ですが、アルバスト伝説~双騎士~に関して少々お伝えすることが。こちらに関しては、勝手ですが非公開にすることにします。詳しくは活動報告にて。

月が辺りを照らす真夜中に、タクトは寮の自室で各先生方から課されたレポートの作成に取り組んでいるところだった。まだまだ期限はあるが、少しずつ減らしていこうという心づもりだ。


「――よし、と」


用紙一枚に最後まできっちりと書ききり、さらっと内容に目を通して精査する。誤字脱字等の問題がないことを確認し、タクトはその用紙を隣に置くと次の用紙を引っ張り出した。


「早いな、もう次に行くのか」


「レポート自体それほど苦手じゃないしね。集中すれば10分ぐらいで書き終わるよ」


タクトの頭の上に乗る紅い小鳥――彼の精霊であるコウは、すらすらとペンを走らせる主に感嘆した。苦手じゃない――というのは、裏を返せば得意でもないということだ。


タクトはペンを置き、レポート用紙に何を書こうかと別の資料に目を通して内容を考えている。大変だなぁ、と思いつつもコウは手伝うことはせず、ただタクトの頭上で座り込むだけ。


しかし心配にはなってくる。ここのところ、タクトはまとまった睡眠時間が取れていない。例の記憶感応もあるが、何より今まで講義を欠席していた分の遅れた響き、夜遅くまで予復習に励んでいるのだ。


当然、レナとアイギットが彼の予復習に協力してくれており、大変助かっている。現に先程まで、二人に勉強を見て貰っていた後なのだ。その勉強会が終わった直後にこのレポート作成である。


コウの首には、トレイドから貰った魔法石のネックレスがぶら下がっていた。これのおかげで長時間実体化していられるのだが、タクトからすれば頭の上に居座るのは止めて欲しい。意外と重いし、ずっと居座られると地味に疲れてくるのだ。


「……コウ、そろそろどいてよ」


「…………」


「コウ」


やや強めの口調で問いかけるも、頭の上に乗った精霊は身動き一つしない。若干眉根を寄せるも、ややあってため息をつき、


「……わかったよ、少し休憩する」


「休憩どころか、仮眠を取った方が良い。……どうせ明日にはまた、トレイドと共に憑依の修行だろう?」


「そうだけどさ……」


やっと頭の上から降りてくれたコウを見やり、タクトはふぅっとため息をついた。結局精霊憑依についてはまた後日ということで、多分明日辺りにトレイドから呼び出されることだろう。


幸い、明日の午後からは予定が空いているので、ゆっくりと修行を付けて貰えるだろう。――どちらかというと、トレイド側の都合によって解散されそうだが。


「…………」


「……なんだ、まだ悩み事か?」


ため息をついて黙り込んでしまったタクトを見て、コウはバサバサと翼をはためかせてその場に滞空しつつ彼の様子をうかがう。タクトはどこか儚げな笑みを浮かべて、


「……正直、今眠っても……眠れない気がするんだ……」


「………」


弱々しく告げる彼に、コウは絶句してしまう。椅子の背もたれに寄り掛かりながら、彼は上体を反らして天井を見上げた。


――気まずい沈黙が、辺りに流れる。滞空していたコウは、そっと机の上に降り立ち、タクトの顔を見上げた。あくまでもいつも通り――だが、彼との繋がりがあるコウには察することが出来た。


彼の精神的な疲労、記憶感応による不安、悩み――そして、何故“自分なのか”という疑問。それらの思いが、朧気に伝わってくる。


「…………――」


思い悩む主にかける言葉はなく、ただ黙り込むしか出来ないコウは、己に不甲斐なさを感じていた。彼と契約を交わしてからずっと共にいたというのに、彼の悩みを和らげることが出来ない。


部屋に満ちる沈黙。そんな中、タクトはふと目を見開いて部屋の窓を見やった。じっと目を細め、真っ暗な夜の闇を見つめている。


「……どうした、タクト」


「………」


彼は答えない。ただじっと外を見つめ――やがて椅子から立ち上がり、窓を開ける。突然の行動に驚くも、やがて彼は虚空に向かって呼びかけた。


「いるんだろう、クサナギ」


「なに……?」


虚空に向けた呼びかけに、コウは驚きを浮かべてタクトの肩に止まる。その視線の先、月明かりしか届かない暗闇の中に、銀色に輝く子人の姿があった。


「……あぁ、久しぶりだな、タクト。それにコウ」


窓の外で、宙に浮かびながらにこりと笑みを浮かべたクサナギに、タクトはほっと息をつく。


「全く……今まで連絡もしないでどこに………」


久しぶりの再会を喜び、同時に連絡一つ寄越さなかったことを非難しようと口を開いたタクトだが、その声は次第にフェードアウトしていく。


――どこか様子がおかしい。何が、どこかと言われれば答えられないが、しかしタクトは目の前にいるクサナギに、いつもと違う雰囲気を覚えていた。


「……クサナギ?」


「…………」


思わず呼びかけるものの、クサナギは何も答えない。フワフワと宙を浮かびながらこちらに近づき、窓から部屋の中へと入ってきた。窓をくぐり抜け、部屋を見渡したクサナギは一言感想を漏らす。


「……ここがお前の部屋か。……ずいぶんと狭いな」


「……まぁ、生徒数が多いからね……それよりクサナギ、どうしたのさ? なんか、いつもと様子がおかしいって言うか……」


「……そうか?」


タクトの問いかけに、肩に止まるコウが首を傾げる。どうやらコウは今のクサナギを見ても、様子がおかしいとは思わないらしい。――それが普通である。一見しても、クサナギにおかしさはない。


――俺の勘違いか……。若干納得がいかないが、そう結論づけるしかなさそうだ。首を傾げるタクトだが、そんな彼にクサナギは語りかけてきた。


「……タクト……ここで一つ、お前に昔話をしてやる」


「はい?」


唐突に語り出すと言った、昔話とやら。訳が分からないとばかりに表情を引きつらせるタクトだが、そんな主を無視してクサナギは一方的に語り出した。


「……昔、母に会いたいと願った者がいた。その者は、己に課せられた役割を果たそうとせず、ただただ会いたいと駄々をこねる、愚かな子供だった」


――もう十分に成人していたのだがな、とどこか自嘲を含む声音。タクトはクサナギの真意を測りかね、引きつった表情のまま黙って聞き入っている。だが――なぜか、心臓の高鳴りが押さえられなかった。


「………」


「故に、そいつは父に放り出された。それまで普通に過ごしていた場所から。その子供も、その場所に未練など欠片もない……だが義理は果たそうと、姉と兄の内、姉に会いに行こうとしたのだが、これまたそいつは日頃の行いが悪い奴だった」


「…………」


心臓の高鳴りがさらに高まった。どこかで聞いたような、知っているような話に、タクトは微かな震えを見せる。


「姉は弟が襲いかかってきたと早合点し、そのおかげで面倒な誓いを交わすことになった。最も誓いを交わした後は誤解も解け、そいつはしばらく姉の元に厄介になることになったが……日頃の行いというものは、なかなかに直らないものでな」


――少々粗相を起こして、今度は姉からも放り出された。そうクサナギが言ったときに、タクトは気づいた。クサナギは、遠い目をして――まるで、“当時あったことを思い出しながら”語っていたのだ。


そして、この昔話に、タクトは見当がつき始めていた。


「姉の元からも放り出されたそいつは、母に会う旅をすることにした。……その最中に、一人の女性に出会った……」



――『……何故俺がお前らの願いを聞かなきゃならねぇ? そんな義理は、何一つない』――


――『……確かにありません。ですが……どうかお願いです! 私はどうなっても構わない、ですがどうか……っ! どうか……私の、大切な人達だけは……っ!』



「ぁ……っ」


「タクト?」


ズキリ、と頭に鋭い痛みが走り、誰かの言葉が響いてくる。いきなり頭を押さえたタクトを、コウは不思議そうに見やる中、彼はようやく悟った。クサナギの昔語り、これは――


一方で、クサナギの語りは続いていく。狭い部屋の中心にふわりと浮かびながら、相変わらず遠い目をして――複雑な思いが積み重なった遠い過去を、浮かび上がってきた激情を、必死に押さえながら。


「……その気はまるでなかった。だが……大切な人達のためと必死に頼み込んでくるそいつに、”俺”はとうとう根負けし……彼女達がいた周辺を襲っていたとある大蛇を退治した」


「……”俺”? ……まさかクサナギ……お前……」


――いままで「そいつ」呼ばわりだったクサナギ。しかしここに来て、とうとうクサナギはボロを出した。つまり、今までの昔語りは――


コウの指摘を訂正せずに、クサナギは昔語りを続ける。――自らの、過去を。


「大蛇を倒すと、その腹から一振りの剣が出て来た。……その剣を掴んだ瞬間に、俺は蛇に”呪われた”んだ。……当時は呪いを受けたとは露も知らなかったがな」


自嘲気味に、しかし忌々しげに語るクサナギ。


「……今は、そのことを置いておこう。ともあれ、その大蛇を倒した後、俺はずいぶんと阿呆な事をしでかしてしまったんだ」


遠い目をして、遠い昔のことを思い浮かべながら。阿呆な事を、大失敗をしでかしたと語るクサナギ。だが、その表情、その瞳からは、そのことを悔いている様子はまるでない。むしろ――


「……我ながら馬鹿な事をしでかしたと思ったよ。”人になりたい”と願ったのは。そして――“人になった”のは……」


「――……ぇ……」


――今、何と言った?


目の前にいるクサナギは――いや、神剣に宿る神様は何と言った? 「人になりたいと願った」、「人になった」。タクトの両目は驚きに見開かれる。目の前の神様は、人になったと言い切ったのだ。それは、つまり――


「――”降神の儀”……今ではおそらく、そう呼ばれるだろうな。俺は、俺自身の神としての力、すなわち”理”を全てあるものに移して封印し、そして人となった」



『――お主、……本気か?』


『じゃなかったら、ここを追い出された俺は来ることは出来ないはず。それは、姉上が……いや、”アマテラス(天照)様”がよく知っていることなのでは?』



「――ぅっ……!」


またもや頭痛が走り、今度は声だけでなく映像も流れ込む。豪奢な着物に身を包んだ女性――顔にはもやが掛かり、よく分からないが、太陽、もしくは女神のごとき美しさを持っていることは何となく理解できた。


――顔も見ていないのに、だ。それだけ、その女性から滲み出る雰囲気は神掛かっていたのだ。


その女性に対し、恭しく片膝を突く一人の青年。青年の目の前には、見覚えのある無骨な長剣が鎮座していた。青年はその長剣を両手で持ち上げ、女性に向かって差し出した。



『……この剣に俺の……私の、全ての力を宿しております。どうかお納め下さい』


『……………本気、なのだな? 我が弟よ』



青年が差し出した剣を一目見て、その剣が文字通りの”神剣”になっているのを感じ取り、女性は確認の意を込めて問い返す。青年は当然とばかりに頷いた。



『これは私の……神との決別の誓いでもあります』



「…………っつ」


ズキリズキリと断続的に襲ってくる頭痛に、タクトの表情は歪む。痛みに歪んだその表情を見て、クサナギはやはりかと息を漏らす。


「その表情……どうやら、俺の記憶がお前にも流れたようだな」


「っ……うん……」


力なく頷くタクト。仮契約という繋がりを介して、クサナギの思いが、記憶が、心情が、一挙に流れ込む。


クサナギは――“彼”は、きっと人に憧れたのだ。それまで自分のやりたいようにやっていた彼は、自分のためではなく、自分の大切な人達のために、必死に何かをしようとする人に。



『人は弱く儚い。だからこそ偶像を作り、偶像に必死に頼み込む。それがただの土の塊でしかないと言うことから目を背け、偶像の神を作り上げて奉り、必死に自分たちの弱さから逃げている』


『あぁ、人はやはり弱く儚い。……だからこそ、時折見せる”人の強さ”は、目を見張る物がある。お前が、俺に張り手を喰らわしたときみたくな、クシナダ(櫛名田)』


『その強さだけは、我々神にはないものだ。……あぁ、そうか。俺は……』



――人以上の存在である彼が、人の持つ強さに憧れたのだ。そして、そのことを教えてくれた女性に、彼は心惹かれていたのだろう。


「人になった後は、大抵、史実の通りさ。何人と子供を産み、その子供達全員、神の力は持たなかったがな」


クックックと笑みを溢すクサナギ。だが、それはどうでも良いことだと、その場しのぎの話題の転換だということは、タクトには伝わっていた。


繋がりを介して伝わってくる、クサナギの思い。結局彼は、理解できなかったのだ。彼が憧れた、人の強さ――人の心は。神の感覚では、人の心を推し量ることは出来ても、理解することは出来なかったのだ。


それが――神と人の、決定的な違いであったのだ。そのことを口では一切におわせず、クサナギはため息をつき、纏う雰囲気を一変させた。


「その後は、比較的平和に過ごしたな。最終的に、俺は“人”として天寿を全うし、あの世へと旅立とうとしていた。だが、その時だ。忌々しい、“蛇”の呪いに気づいたのは」


呟き、クサナギは空中に浮かび上がったまま、徐々にその体を発光させていく。光に包まれたクサナギの姿は、一振りの剣へと変わっていた。――この剣は、先程のクサナギの記憶に出て来た剣だ。


『人として死した後、俺の魂は天上には戻らず、この剣に吸い寄せられた。あの蛇めが、人となった俺の魂を食い物にするために、そして恨みを晴らすために吸い寄せたのだろうな』


「…………」


『そんな顔をするな。蛇の恨みを買ったとはいえ、蛇の毒には犯されなかった。言ったろう? この剣には、俺の力を……理を移していた、とな? 不本意だったが、その力を使わせて貰った』


絶句したタクトにそう言い、剣と化したクサナギは独りでに持ち上がる。――まるで誰かがクサナギを握り、上段に構えたかのように。


『だがそのせいで……俺は再び、神の座に返り咲いた。元とは比べられないぐらいに、格は下がったがな』


どこか自嘲めいた、もしくは呆れ果てたような声音を漏らすクサナギ。今は剣の姿になっているため、表情が分からず声音からクサナギの心情を推し量るしかできないのだ。


『……桐生タクトよ。刀を抜け』


「………え?」


『これより、試しの儀を開始する。剣となった我を振るうに値するか否か、それを見極めん』


そんなクサナギが、無機質で感情を表さない声音で宣言したと同時に、持ち上げられていた剣が一息で振り落とされた。


「なっ!?」


「これは……っ!?」


縦一直線に振り下ろされた軌跡から光が走り――タクトとコウはそろってその光に飲み込まれる。



――そして、世界は変わる――



「………? ―――――っ」


光が薄れ、眩しさのあまり閉じていた瞳を明けた瞬間――タクトは目を見開いた。


一面見渡す限りの海――しかも大荒れであった。風と雨が容赦なく吹き荒れ、波は高い。気がつけば部屋着どころか、全身がずぶ濡れである。


おまけに足下が先程から不安定であり――下を見て、その理由を悟った。何と“海面の上に立っていた”のだ。


「う、うわぁっ!!?」


驚きと悲鳴が入り交じった声を出したタクト。このまま海の中に――しかもこれほど大荒れでは、いくら精霊使いとは言え――いや、待て。


「……立ってる?」


突然の出来事に高鳴る心臓を必死に押さえつけながら、タクトはまじまじと足下を見やる。波が高く不安定ながらも、確かに海面の上に立っていたのだ。このまま水の中に沈む気配もまるでない。そっと片足を上げて、次いでそっと下ろしてやる。――結果はかわらない。


「ここは……」


『――ダークネスと戦ったお前ならば、ここがどんなところなのか察しは付くだろう?』


「っ! クサナギッ!!?」


聞き覚えのある声が聞こえ、タクトはそちらを振り向いた。同時に、嘘のように吹き荒れていた嵐がぴたりと収まり、波も徐々に緩やかになっていく。


タクトの視線の先には、一人の男性がいた。上下共に白の、神主が着るような和服に身を包み込んだその男性。逆立ち、波打つ黒髪の美丈夫は、ただひたすらにタクトを見やっていた。


「……クサナギ……だよな?」


顔立ちは同じ。違いは髪と瞳の色と、身に纏う雰囲気か。しかしそれだけ、それだけで。家族同然に暮らしてきたタクトでさえ、目の前にいる男が誰なのかわからなかったほどに、別人と化していた。


『クサナギ……いや、”草薙の剣”は、俺の本当の名前ではない。あれは、この剣の二つ名の内の一つ』


すっと右手を伸ばすと、見覚えのある無骨な長剣が現れた。あれは、タクトが何度も見て、そして何度か振るった神剣である。――ふと、叔父から渡された歴史書に書かれていたことを思い出す。


目の前にいる男の言うとおり、クサナギ――草薙の剣には、二通りの名前がある。燃えさかる草原をなぎ払った、という逸話から来る“草薙の剣”という名前と。


ある神が倒した”八首の蛇”の頭上には、いつも雲がかかっていた。その蛇の尾から、件の剣が出て来たため、そこから名付けられた名。それは――


『もう一つは、天叢雲剣と呼ばれていたがな。だが、そちらも違う。どちらも、この剣の名前だからな。……俺の、本当の名は――』


男は草薙の剣を――天叢雲剣とも呼ばれる剣を構えつつ、どちらも違うとはっきり答えた。それもそのはず、草薙の剣も天叢雲剣も、どちらも”剣”としての名前だ。男の――“神”としての名前。


――タクトには、言われなくても分かってしまった。故郷である地球、日本に住んでいたら、誰しもが一度は耳にするであろう名前。


『イザナギ(伊弉諾)の鼻から生まれ落ちた子。三貴子が一柱……スサノオ(須佐之男)なり』


クサナギ改め、スサノオは自らの名前を告げると、構えていた神剣の切っ先を、真っ直ぐにタクトへと向けた。すでに海は静まりかえり、波一つ立っていない。一見は海だが、こうして立っていられることから状況的には平地と何ら変わらないだろう。


ここは、スサノオが造り上げた異界。神が、己の全力を振るえる場所。そんな場所にぽつんと立つタクトとコウは、ただ言葉を失いながら目の前にいるスサノオを見続けることしか出来ない。


何故こんな事をするのか――海の上で呆然と立ち尽くすタクトは、疑問を瞳に乗せて問いかける。だが、スサノオは何も答えず、異界を造り上げる直前にタクトに向けた言葉を、再度言う。


『刀を取れ、桐生タクト。――試しの儀は、すでに始まっている』


「………」


訳が分からず、ただ無言で立ち尽くすタクトに対し、スサノオは微かに目を瞑り――目を開いたと同時に、彼に向かって突進する。


――剣は主を見極めるために、主に剣を向けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ