第17話 日常への帰還~3~
暗い夜空に、一人の青年が跪く。手入れを怠っているであろう金髪はぼさぼさで、頭にバンダナを巻いていた。特徴的なのは、そのバンダナで左目を隠すかのように斜めに付けていることだ。
着ている服はぼろぼろ。衣服のあちこちは裂け、そこかしこから大量の血が流れ出している。何か激闘の後を思わせる状態の彼は、息を荒げていた。
――実際、激闘の後だったのだ。彼の周りでは大きく陥没した地面や斬痕が走る地面、蜘蛛の巣状の罅が入っている所がある。さらに、巨大な石塊などがあちこちに散乱していた。
そして、青年の足下には、まさに血の池と呼ぶに相応しい光景が広がっている。傷から流れた血が溜まり、いつの間にかそうなっていたのだった。
一体、ここでどんな戦闘が起こったというのか。跪き、息を荒げる金髪の青年の前には、青年と同様息を荒げながら仰向けに倒れた一人の男がいた。
この男の方は、青年とは違い外傷はない。――あくまで外傷、目に見える傷は。おそらく、体の中はぼろぼろだろう。
「ゴフッ! ……はぁ……はぁ……ったくよぉ……バカみてぇに腹をぶん殴り続けやがってよぉ……。……これじゃ……ブッ!……はぁ………当分まともにメシ食えねぇじゃねぇか」
「……お互い様だろう。こちらも、ご覧の通りのありさまだ……」
金髪の青年の両腕には手甲がある。格闘――青年は己の体を武器に、男と戦ったのだろう。対する男は、すでに武器を失っているが、地面に走る斬痕と、青年の体に刻まれた刀傷から、刀剣の類いだと思われた。
いくら手甲があるとは言え、剣を相手に格闘で戦う不利を承知していたが、青年にはこれしかなかったのだ。魔法――“コベラ式の魔法が使えない”彼には。
「ぐっ………はぁ……はぁ……」
痛む体を押して、青年は無理矢理に立ち上がった。ポタポタと傷口から流れる血が止まらず、むしろ立ち上がる際の力により、流れる量が増えたような気さえする。
下手をすれば失血死に繋がる。だが、それを理解した上でなお、青年は止まらない。たった今倒した男で終わりではない。この男から鍵を奪って、“彼女”の元に向かわねばならない。
死ぬことに恐怖はない。――何より怖いのは、”彼女”を失うことだった。だからこそ、己自身に活を入れ、倒れた男の元に近寄ってきたのだ。
「……坊主、一つ聞かせろ」
男は、己の元に近寄ってきた青年に問いかける。――すでに戦意はない。一体どんな手法を使ったのか、”あの技”のせいか、痛みを通り越して体の感覚が麻痺している。おかげで痛みは感じないが――指一本、動かせそうにない。
坊主と言われたのか気に入らないのか、微妙に表情をしかめて青年は首を振る。
「……何だ」
「おめぇは……何のために、戦っている……?」
「…………」
問いかけに対し、青年は答えない。しかし男は構わず続けた。
「俺らがやってきたのは……誉められたことじゃねぇ。むしろ、俺自身ぶっ壊してぇと思ったこともある……。だがよぉ、ぶっ壊したら……俺が”守りたい”と思った奴らに、被害が及ぶ」
「……貴様は……」
「カ、カ……まぁ、言っても信じてもらえねぇかも知れねぇがな……」
呟く男の表情は笑み。――しかし、青年には自嘲が含まれているように思えてならない。
――こんなことが正しいはずがない。そう思いながらも、自らの守るべきもののために、正しくない行いをせざるを得なかった。そんな自分を、あざ笑っている。
「……貴様が守りたいと思ったものは何だ?」
「決まってんだろ、フェルアントの市民……それにほかならねぇ」
「…………」
男が守りたいと思ったもの――その正体を聞き、青年は瞳を閉ざした。そして、目を閉じたまま口元に笑みを浮かべていく。
――気に入った。
「……そうか。……問いの答えがまだだったな。俺が戦っている理由は、二つ。一つは、馬鹿な事をしている”子孫共”に、お灸を据えてやること。そしてもう一つが……家族を守るため、だ。……あいつらを守るためなら、俺は何にだってなってやるさ」
「……カ、カ、カ。そうかい」
倒れながらも、不敵な笑みを漏らす男。一つ目は意味が分からなかったが、後半――青年の答えを聞いたとき、彼の表情に計り知れない憤怒が浮かんだことに、何故か自然と笑みが零れてくる。だからか、一つ目の理由のことが印象には残らなかった。
――あぁ、こいつぁ……良い奴だ。
お互いに、答えを聞きながら笑みを浮かべる両者。いつのまにか、剣呑な空気が消え去っていた。
「貴様の……いや、”あんた”の守りたいものには理解できる。だが、俺には無理だ。見ず知らずの他人を助けたいと思うほど、人が出来てない」
「あぁ……それでいい。守りたいものが増えちまうと、俺みたいに、いざというとき動けなくなる……」
そう呟き、男は目を閉じた。相変わらず体は動かない。――だが、妙に頭はすっきりしていた。
「……胸の内ポケット。そこに、鍵がある……」
「………」
衣擦れの音が僅かに聞こえる。どうやら完全に感覚も麻痺しているようで、ポケットをまさぐられる感覚さえ感じない。ややあって、青年の声が響いてくる。
「受け取った。……俺たちには、あんたのような人が欲しかったな……」
「カ、カ、カ……俺には今の立場っつうもんがある。無理な話だ……」
名残惜しそうな青年の言葉に男は苦笑し、そこでやっと目を開けた。――戦いの最中無表情だった青年の顔には、僅かながら親しみと、笑みが浮かんでいた。青年の言葉は、本心から
出たものだと言うことをすぐに察することは出来た。
「……坊主。あの嬢ちゃんを助けてやれ。そんで……フェルアントをぶっ壊して、変えて見せろ。それが俺を……”マスターリットリーダー”を倒したお前達の、義務だ」
「……その言葉、確かに受け取った。後は……俺たちに任せてくれ。あんたの思い、果たしてやる」
僅かながら目を閉じ、厳かに青年は頷いた。そしてそのまま、血みどろの体を引きずるようにして転移した青年を見送り、男は目を閉じた。
~~~~~
――………――
ふと目を覚まし、少年――桐生タクトは気怠げな瞳であたりを見渡した。あたりはざわざわと騒がしくも心地よい喧噪に包まれている。
どうやらふとした拍子に軽く寝てしまったらしい。しかし軽く眠ってしまっただけなのに記憶感応が発現してしまうのはいかんともしがたい。おかげで眠った気がしないじゃないか、と首を振ったところで、コツンと脳天を堅い何かで叩かれた。
「戻ってきてそうそう居眠り授業とは。どうやらさほどこれからの授業に自信があると見える」
「……シュリア先生」
脳天にある出席簿を、その次に出席簿の持ち主を見て、タクトは顔を引きつらせた。青い髪の美女――担任教師であるシュリアの姿を見るなり、タクトはここがどこだかようやく思い出した。
フェルアント学園、二年時教室――彼のクラスだった。
二ヶ月ぶりに戻ってきたこのクラスの反応は、実に様々であった。
「おかえり」「ひさしぶり」という暖かい言葉――それがとても心に染みた。その中でも一番の反応はコルダか。紫色の髪に浅黒い肌の彼女は、教室に入ってきたタクトの姿を見るなりいきなり抱きついてきたほどだ。
「タクトおかえりー!」――天真爛漫に、笑顔を顔中に浮かべて抱きついてきた友人に、タクトは驚きを、次いで微笑みを浮かべた後微妙な表情で教室を見渡した。胡乱げな視線――とくに女子達の視線が突き刺さっていた。
コルダ・モラン――彼女はタクト達と同い年なのだが、その性格と背の小ささからか、よく年下として見られる。本人もそれに反感しないためか、基本的に彼女は子供扱いされている。
そんな“子供”が、いきなりタクトに抱きついてきたのだ。しかも顔を体に押しつけるほどに。――彼に「ロリコン」という不名誉な疑惑が付いた瞬間である。女子達の視線も納得がいく。本人は断固拒否するだろうが。
「今頃何顔を出してきてんだこの野郎!!」
叫びと共に拳を突き出され、タクトは軽々とそれを受け止める。流石に易々と殴られる気はない。最も本人も、半ば挨拶代わりだったのだろうが。
拳という物騒な挨拶をしてきたのは、親友であり幼馴染みの一人である宮藤マモル。彼は軽々と拳を受け止められたことに拍子抜けしたようであったが、やがてニヤリと笑みを浮かべて、茶髪の髪をかき上げた。
「はは、久しぶりだなタクト! 元気してたか!」
「俺は元気だよ。そういうマモルはどうなのさ?」
「俺はいつも通り………うん?」
何か違和感があったのか、マモルはニヤリとした笑みから眉根を寄せて首を傾げる。しかしとりあえず放置することにしたのか、納得しないながらも、
「……う~ん。……まぁ、お前さんも元気そうで何よりだ」
一つ頷いき、ちらりと周囲に視線をやる彼。そしてそのまま、マモルはタクトの肩をぐいっと引き寄せ、
「……戻ってきたって事は、”力”は取り戻したんだろ? じゃあ改めて、事情を聞かせて貰えるか?」
「うん、後で話すよ。一応他人には話さないようにって言われてるけど、マモル達も無関係じゃないし」
無関係ではない――ダークネスに関する関わり合いで言えば、彼らもそうとうな関わりがある。ならばきちんと話すのが筋であろう。
ちなみに、話すなと釘を刺したのはフェルアント本部――先日、ようやく解放され、また学園への復学も決まり、こうして二ヶ月ぶりの登校となったのだ。
「お役所からの口止めか? ……あまり破らないようにな」
「……? 珍しいね、マモルがそんなこと言うなんて」
これは珍しい。自分が深く関わった事柄なら、解決するまで事の成り行きを見ていたいという、言わば野次馬精神を持つ彼がそんなことを言うとは。どこか遠くを見つめる視線と良い、何かあったのだろうか。
「……この間遺跡で偶然会っただろ? その時のことがばれちまって……お偉いさん方からしこたま叱られてな」
それ以来自重中だ、と呟くマモル。遺跡で偶然会った――あぁ、あのことか、とタクトは理解し、苦笑いを浮かべた。
「それだったら、俺もかなり叱られたよ。危険なことをするんじゃないって。トレイドさんなんか俺以上に怒られていたみたいだし、叔父さんも来てくれなかったら日が沈むまでやってたんじゃないかな……」
あのときの叱られようを思い出し、タクトも同様つい遠い目をしてしまう。トレイドさんなんかは慣れない正座で「足が死ぬ……」なんて言っていたし。それが耳に入ったのか、怒っていた役人さんの怒りがさらにヒートアップしたし。
「なんかもう……散々だったよ」
「……お前もか、タクト……」
二人揃ってはぁ、と肩を落とす。そんな親友同士のやりとりを、首を傾げてコルダは聞いていたが、やがて何かに気づいたかのようにハッとした顔を浮かべた。
「ねぇねぇタクト、後ろ」
「何? 後ろ?」
くいくいと新調して袖を通した白い制服の裾を引っ張られ、彼は言われるがままに後ろを振り向き――
「おっ……」
ドンッという誰かがぶつかってきた衝撃に、タクトは目を見開いて驚きを露わにする。長い真っ直ぐな黒髪に、彼よりも若干小さい――そこで、あれと首を傾げた。
「レナ……だよね?」
「……うん」
いきなり抱きついてきた彼女に驚くも、一番の驚きは彼女の頭がいつもよりも下にあることだった。――いや、そうではなくて。
「その、おはよう。それで久しぶり、レナ。……もしかして、背が縮んだ?」
「ち、縮んでない! タクトが――……」
タクトの軽口を即座に否定し、彼の胸に顔を埋めていた彼女――鈴野レナが顔を上げ、そこでハッとした表情を浮かべる。彼女も、今まで視線がほとんど同じだったのに、いつの間にか見上げていることに気づいたのだろう。潤んでいた瞳を細め、その口元に微笑みを浮かべながら、
「……タクト、背が伸びたんだ」
「あはは……俺もびっくりだよ。昨日制服に袖を通したら、もう小さくてさ」
苦笑いと共に、昨晩の苦労話を伝えるタクト。トレイドと共に行動していたとき、いつの間にか背が伸び出していたのだ。つい先日あたりでは、出立時に着ていた服は着られなくはないが、大分きついという状態になってしまうほどに。
旅中では、どこから沸いてきたのか、トレイドの懐から借りた金銭を使い、立ち寄った町で衣服を調達していたりする。――当然、制服もすぐに新調したかったのだが、ようやく本部から解放されたのが先日。そのまま直行で学園の制服を取り扱っている店に行ったのであった。
「そ、そうだったんだ。…………その、タクト」
昨晩の苦労話をすると、彼女は苦笑いを浮かべてタクトを見上げる。未だに潤んだ瞳にくらっと来るも、タクトは鉄の意思を持ってレナに向かって呟いた。
「その……そろそろ、離れてくれないかな? 周りの視線が痛いというかさ……」
――主に男子達から。レナは外見的にも美少女と言っても差し支えないため、クラスの男子達からの人気は高い。さらに、そんな彼女と仲が良い幼馴染みのタクトやマモルは、男子陣から目の敵にされている節もある。恨みを買うのは当然とも言えた。
そして、レナも今更ながら自分がやらかしたことに気がついたのだろう。表情を赤らめると、すぐに離れて、
「ご、ごめん、タクト! その、久しぶりに学園であえて、感極まったというか……!」
あたふたと離れつつ、手をぶんぶんと振るレナに、タクトは苦笑いのみ。以前の彼を知るマモルからすれば、妙に余裕がある彼に若干違和感を抱いた。
彼が知るタクトならば、ここで彼も慌てふためいて変なことを口走るはずである。だが、今の彼はそんな素振りも見せず、若干の照れはあるだろうが落ち着いたものだ。
「……なんかお前、変わったな……」
「えっ……そ、そう?」
ぽつりと呟いた言葉がタクトの耳に届いたのか、彼は首を傾げながらもあやふやな笑みを浮かべる。自覚があるのかないのか、判断しかねる微妙な笑みに、マモルは眉根を寄せて訝しげな視線を送る。
「う~ん、そうだね。なんかタクト、大人っぽくなったよ!」
そんな中、一連のやりとりを黙って聞いていたコルダは笑顔を浮かべてうんうん頷き――その場に僅かな間が流れた。
――お前がそれを言うか――言葉にせずとも、皆が胸中呟いた一言は奇しくも一致した。そんな空気を霧散するかのように、落ち着いたレナがコホンと咳払いを一つして、
「その……改めてになるけど……お帰り、タクト。また一緒に学園で会えるなんて、本当に嬉しい」
「うん……俺もだよ。二ヶ月前は、ここに来ることは二度とないかもって、ずっと思っていたし……」
若干俯き加減で、そして恐ろしく沈んだ声音で呟くタクトを見て、彼がどれほど悩んでいたのか。その片鱗を感じ取り、その場にいた三人はやや沈んだ表情を見せる。――コルダでさえ、落ち込んだ顔つきをしているのだ。
――実際、精霊使いとしての力を全て失い(正確には封じられた)、実家に強制送還されたタクトの落ち込みようは途方もなかった。元々、不反応症――魔法が使えない体質の彼は、力を失ったことにより無意識のうちに抱いていた劣等感が肥大化し、それを誤魔化すかのようなハードトレーニングを行っていたりする。
無論、彼らはそのことを知らない。知らないが、彼の性格と口調を考えれば、思い詰めていたと言うことを想像するのは容易かった。
だが――俯いていた顔を上げたタクトの表情は、晴れやかなものだった。
「でも……トレイドさんのおかげで、こうしてここに戻ってくることが出来て……みんなともう一度、ここで学ぶことが出来るようになって……本当に嬉しいんだ」
「………そうかい」
彼の真っ直ぐな言葉に、マモルはぶっきらぼうな口調で返すほかなかった。誰の目から見ても分かる、あれは照れ隠しだ。もっとも、タクトの言葉に気恥ずかしさを覚えたのは、彼だけではないが。
「あはは……うん、私も、タクトってすごく変わったなって思うよ。……そういえば」
頬をかいて苦笑するレナは、話題を変えるかのように今まで気になっていたことに突っ込んでみた。
「タクト、”僕”から”俺”に変えたんだね。……なんか……」
――ちょっと、格好いいかも……――などと、顔を赤らめながら呟いた小さな囁きは、小さすぎたのか誰の耳にも入ることはなかった。以前とは比べられないくらいに印象が大きく変わったこともあり、どことなく気恥ずかしさを覚えたため自然と小声になってしまう。
最も、レナの指摘を聞いたマモルが、あぁっと納得した様子で頷いて、声を上げたせいもあるかも知れない。彼女の囁きに覆い被せるように、彼は、
「それか! なんかさっきから違和感あるなぁと思ってたら、僕呼びが変わってたのか! いやぁ、言われるまで気づかなかったぜ!」
なるほど、合点がいった、と一人うんうん頷くマモルに、タクトははぁとため息一つ。
「……なんで俺が呼び方を変えただけで、こんなに騒がれなくちゃいけないの……。……って、そうだアイギットは?」
ふと、いつものよくいる五人のメンバーのうち、一人――フェルアント出身の金髪の少年の姿がいないことに気づいた。見ると、時計の針は予鈴五分前を指している。
教室を見渡しても見つからず、首を傾げる彼にさも言いづらそうに俯いたレナが口を開いた。
「……アイギットは……今日は、特別に休みを貰ったんだって。何でも、用事でフェルアント本部の方に……」
「そうなんだ、じゃあ入れ違いか……」
残念そうに呟き、頬をポリポリとかくタクト。そんな彼を、レナとマモルは心配そうな表情を浮かべながら、さも言いづらそうに視線を合わせ――同時に頷いた。
「タクト。アイギットの奴は……今ある人と面会しに行っている」
「面会? 本部で……? ………」
マモルが神妙な面持ちで伝えた言葉を反復する。言われたときは何のことかわからなかったが、しかしすぐに引っかかるものを覚え、彼は眉根を寄せた。その引っかかりがなんなのかわからず、眉を寄せた表情のまま首を傾げた彼に、真面目な表情のコルダが何でもないように口を開いた。
「今アイギットは、”お父さん”の所に行っているよ」
「……え?」
コルダが言ったその一言。その一言は、彼の引っかかりを見事に解決してのけた。
アイギットの父親、グラッサ・マネリア・フォールド。元フェルアント本部長であり、十七年前の改革を成し遂げた功労者の一人であり――一年前、“あの事件”を引き起こした首謀者として、服役中の人物。
タクトも、去年起こった”あの事件”にも関わっているため、アイギットの父子関係を知っていた。――あまり、良い関係ではない。
アイギットが父親であるグラッサの面会に赴いた。その事実を知り、タクトの表情も彼らと同じように不安げなものへと変わっていった。