夜の猫の郵便屋さん
掲載日:2026/07/08
夜の町がしんと静かになったころ、
一匹の黒猫が、そっと路地から顔を出した。
名前はクロ。
人間には見えない“夜だけの郵便屋さん”。
クロのカバンの中には、猫たちが書いた小さな手紙が入っている。
といっても、内容はとてもシンプル。
「今日のごはん、最高だった」
「お気に入りの窓辺、あったかかった」
「ひなたぼっこ、またしたい」
そんな“幸せのメモ”みたいな手紙ばかり。
クロは、石畳をコトコト歩きながら配達していく。
途中で、月明かりがちょうどいい場所を見つけて、
ふぅ、とひと休み。
夜風がやさしく毛を揺らして、
遠くで電車の音が小さく響く。
「あと少しで終わりだにゃ…」
そうつぶやいて、クロは最後の手紙を届ける。
配達が終わると、カバンはふわっと軽くなり、
クロのまぶたもゆっくり重くなる。
月が雲に隠れた瞬間、
クロはその場で丸くなり、静かに眠りに落ちた。
町も、猫も、夜も、全部がやさしく静まる時間。
寝物語




