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11-B.賭け

「理解してもらえるかと思ったがね」


レイは心底残念そうにそうこぼした。


僕はといえばあまりの驚きで少し動けなくなっていた。もちろんレイにではない。

まだリンといた時間は短い。その中で得た数少ない知見の一つに控えめでおとなしい性格であるものがあった。いついかなるときも人の後ろにいて、優しく気を遣っているというイメージ。それにはおそらくパトリオも同意してくれるだろう。

そして僕の真横で口を開けてぽかんとしているランドもそうだろう。


リンのこの口上は一世一代のものである、ということを僕たちは言葉を交わさずとも理解しあっていた。


レイが言う。


「知性のコロニーの繰り出すロボットと違って、私たち人間はあまりにも脆いし、弱い。これは理解してくれるね」


リンは黙っている。レイはそれを肯定と受け取ったのか続ける。


「私たちをロボットより強くすることはできない。そこにいる彼のような例外はいるが、例外は例外だ。私たちみんながそうなれるわけではないし、ならなくてもいい」


だから


「こう考えるんだ。死んでしまってもいいとね」


リンが口を開いた。


「だからクローンを作る、と?」

「そうだ。私たちが弱いまま知性のコロニーに勝つには弱いことを受け入れ、戦いの前提に盛り込む必要があるのさ。そうしてこれは知性のコロニーに打倒した後にも役立つ」

「私たちと同じ考えの誰かがコロニーをともに運営してくれるってことですか」

「そうだ。時に、君たちは知性のコロニーを倒したあと、どうするつもりなんだね」


またこの質問だ。僕はランドの顔を見た。普段の奴には似合わないほど歯噛みしている。

おそらくこの場で何かを即座に言い返したいのだろう。


しかし、奴はまだ答えを見つけていない。

部外者の僕もまた、それを考えないようにしていた。関係ないことと目をそらして。


「意地悪なことを聞いてしまったね。君たちはまだ子どもだ。そこまで考える必要はないよ。そういうのは大人の仕事というものだ。知性のコロニーは君たちが運営するといい。そうして、私たちと同じようにクローンで分業すれば、多少大変でも大丈夫さ。クローンはいい。まさに以心伝心だ。何かを伝えるまでもない。私が望むものをちょうど、彼女も望んでくれる」


レイのクローンも同じように頷いている。彼女も同じように思っているようだった。


「本当にそう思っているのですか」


リンはまた震える声で言った。

レイが少しいらついたように


「君もくどいな。そうだと言っているだろう」

「クローン同士は以心伝心で自分が望むものをちょうど望む。あなたはそれを心から信じられていないはずです」

「ふさげるな」


怒鳴ったのはクローンの方だった。先ほどまで僕の喉をかすった果物ナイフを今度はリンに突きつける。飛び出そうとしたランドを僕は制止する。


彼女は何かに気付いているのだ。この中で彼女だけが。

この完璧な社会の欠点を。

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