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10-A.禁忌

僕たちがやっとのことで倒した異形たちがまるで掃除道具のようにあっさりと並んでいる。

巨大な試験管の中の異形たちは時折退屈そうに身体を動かしている。


こいつらは生きているのだ。すべて。


ざっと数えるだけでも30体は超えている。もしこれらがすべて今ここで解き放たれたら。

僕の体は無意識に震え始めていた。まるでほこりを払うように僕の体はまるめてそこらに捨てられてしまうだろう。


背後から声がした。


「やあ、見てしまったようだね」


振り向くとレイがそこに立っていた。

僕は先ほどまで自らが殺されかけた事実も忘れて、それを口にした。


「なんだよ、これ」

「見ての通りさ。君の立派な人工知能でもわからないかね」


レイは歩み出て、試験官の一つに触れて言った。


「ここは医療のコロニーだ。医療という言葉の意味は広くてね。君が簡単に想像できるような製薬も含まれるが、ここに使われているのは別の技術さ」


バイオテクノロジー。いや


「遺伝子操作、か」


レイは満足そうにうなづいた。


「そう。ここにいるのは私たちの技術の粋を集めて作られた最強の兵士たちさ。知性のコロニーはその持てる力をすべて使い、まさに殺人的な強さのロボットで攻撃してくる。なら私も同じようにするだけだ」


レイはポケットから端末を取り出し、何かを操作した。


「ほら、これで君の人工知能にもこの兵士たちの遺伝子情報が読み込めるようになったはずだ」


人工知能に口などないはずだが、僕は確かにパトリオが息をのむ声を聞いた。


『そんな』

『どうした』

『この兵士たちは人間だ』

『え』

『人間の遺伝子をもとに作られているんだ』


全体としては人型なのだからそれはそうだろう、という冷静な感想と自分と同じ人の遺伝子が書き換えられ、まったく別の生物となったことに対する根源的な嫌悪感が僕の中で一気にないまぜになり、目の前がゆがみ始めた。


「当然だろう。戦争で戦わせる兵士の作るのだから人間を使わない手はない。あいにく、武装のコロニーが生産できるのは人間用のそれしかないわけだからね。こちらも合わせざるを得ないのさ」


僕は彼らを殺している。


僕の心中を見透かしたようにレイは言った。


「なに、君は自分の命を守っただけだ。何も罪悪感を覚える必要はない」


なにより


「君は確かに彼を殺したが、だからといって彼がこの世界から完全に消えたわけではない」

「どういうことだ」


僕はさらなる違和感を覚え始めていた。


「別に彼のことを思いやってのことじゃない。だって非効率的だろう? 兵士がこうやって死ぬたびにまた兵士に適した人間の遺伝子を見つけ出し、改造し兵士を作り出すなんて」

「やめろ」


その言葉の続きを僕は完全に理解していた。


まったく瓜二つのメイドたち。

そもそもここにいるはずのないレイ・ヤン。


「ようやく気付いたようだね。さて、本題に戻ろうか」


レイは邪悪な笑みを浮かべて言った。

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