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9-B.反攻

明かりがついて、僕はようやくその姿を拝むことができた。

人型の異形。まさにそう評すべきだ。体躯は僕よりふた回りは大きい。全身は緑色の皮膚に覆われている。腕が人間より明らかに多い。どうやらわき腹からもそれが伸びているようだった。

何よりの特徴は頭がないことだった。人間でいえば本来頭があるべき位置が全くの空白となっている。


あまりの見た目にまじまじと観察してしまったが、今はそんなことをしている場合ではない。

異形がこぶしを振り上げる。僕の顔面に向けて落ちてくるそれをすんでのところで首を振って躱す。

振り下ろされた腕に向けてナイフを突き立てる。その傷口から体表と同じ緑色の液体があふれ出す。

鼓膜が破れそうな音量で絶叫する異形。空いている腕で僕の腹に一撃入れると、飛ぶように距離をとる。


これで銃弾一発。ナイフ一撃。並の人間ならとうに絶命しているはずだが、目の前の異形はまだ倒れる気配はない。僕はそのタフさにくらくらしながらゆっくりと立ち上がる。


脳内でパトリオの声。

『監視カメラの視界もとれた。ここからはいつものように支援できるぞ』


僕は返事の代わりに武器を構える。

今度はこちらから仕掛ける番だ。突っ込む。

見れば奴の腕は左右に二本ずつ計四本ある。普通の人間と思って戦うと痛い目を見るだろう。

異形は二本の腕を思い切り振り上げる。今の僕にはその様子がはっきりと見える。

だから繰り出される拳、そのすれすれのところでスライディングの要領で躱すことできた。

背後をとる。射撃。異形のうめき声。


間違いなく効いている。しかし決定打ではない。

僕はパトリオに尋ねる。


『奴の急所はわかるか。そろそろ勝負を決めないとこちらもまずい』


先ほど殴られた腹がじんじんと痛みを持ち始めている。


『頭部がない。だから首周辺を狙うのは得策じゃない。それでも急所はある。さっきお前が腕を刺したとき、血が出ただろう。おそらく奴も普通の人間と同じように腕に太い血管が通っている』


僕は異形の腕を見る。確かに先ほど刺したところからは緑色の血がどくどくと流れ続けている。


『狙うならそこだ。本来は心臓を狙うべきだろうが、さすがに内臓の位置までは俺でもつかめない』

『腕は動くんだぜ。そこを狙うってか』

『ああ。それしかない』

『言ってくれるぜ』


時間がない。僕は動き始めた。


脳内でパトリオに頼む。

『腕の動きを予測してくれ』

『わかっている』


すぐさまに視界に四本の腕の次の動きが点線の形で現れる。

あとはそこにナイフを重ねるだけでいい。

ナイフで腕全体をなぞるようにして、一気にすれ違う。手ごたえあり。


まだだ。すれちがってそのまま思い切り壁を蹴って空中へ。

意趣返しだ。


異形は三本の腕を思い切り伸ばしている。僕はそのうちの一本に抱き着く形でとりつく。

人間であれば太い血管が見えやすくなっているであろう、手首のあたりを深く切りつける。

至近距離の射撃でけん制。異形から飛び降りる。


異形の動きは明らかに鈍っている。もう少し。

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