8-C.暗中
奥の部屋はこれまた真っ暗だった。
それでも明らかに先ほどまでとは違う何かを感じる。
生物の息遣い。
僕はパトリオに語り掛ける。
『明かりはつくか』
『いや、またダメだ。糸口が見つからない。しばらくかかりそうだ』
『さすがにそれくらいはしてもらうか』
僕は扉を戻ってレイに声をかけようとする。
しかし
『扉が開かない』
『鍵がかかっているんじゃないのか』
『こちら側に鍵がない。外からかけるタイプみたいだ』
『そんな』
それじゃまるで
僕は扉を強くたたき、向こうのレイに叫ぶが全く反応はない。
この事態にはさすがのパトリオも混乱したようだった。
『どうなってる。ここをどうにかしてほしいのが向こうの望みだったはずだ』
『僕にもわからない。ただわかるのはレイに気付いてもらうまでは僕たちだけでどうにかする必要があるってことだ』
それに気が付いたのは全くの偶然だったか、それとも今までの経験値のなせる業か。ふと感じたその気配に僕はとっさに暗闇に向けて横っ飛びする。
つい数秒前まで自分がいた場所にとてつもなく大きな音ともに何かがぶつかった。
扉から漏れる逆光でわずかに何かが見えた。
『腕?』
『どうやらそのようだな』
ひたひたとした足音。もちろん僕のものではない。
『奴さんには足と腕があるんだってよ』
『言われなくてもわかってるよ』
うなり声。もう完全に勘で僕はまた左に動く。
右腕に走る焼けたような痛み。
僕は思わず声が漏れた。
『あまり声を上げるな。向こうはこちらの位置を完全に理解している』
『夜目が効くってことか』
おそらく生き物であることは間違いないだろう。
腕にたたきつけられた感触は爬虫類のような滑らかさとしなりを彷彿とさせた。
僕は腰元からゆっくりとナイフと拳銃を抜く。ともに去り際に武装のコロニーの護衛たちから護身用として渡されたものだ。今の状況を考えれば全く火力不足だが、彼らを責めることはできない。
まさか彼らも暗闇の中で正体不明の化け物と戦うなど考えているはずもない。
『しばらく耐えてくれ。レイのパソコンからこの部屋の設備をどうにかできるはずだ』
それはそうだろう。あの部屋がデータを収集し解析するための部屋だとしたら、ここはきっと実験室だ。
問題は何を研究しているか、だが。
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