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8-B.探求

部屋の中は研究室だった。真っ白で清潔な部屋。壁の一面は本棚で満たされている。デスクには雑然と資料が散らばっており、パソコンのモニタとキーボードが水面に浮かぶ小島のように辛うじて覗いていた。

部屋の主が僕に声をかけた。女性だった。


「やあ。思ったより早かったね」

「レイ、さんですか」

「いかにも」


どうやら僕よりも先にここにたどり着いていたらしい。彼女は僕が出発したとき、まだあのオアシスにいたと思うが、おそらく途中で抜かされたようだった。それとも僕が知らないだけでこの計算資源の塔に別の入り口があるのだろうか。


パトリオがささやくように脳内で言った。

「目の前のパソコンにこの施設の見取り図があったから確認したが、ここには入り口が一つしかない。つまり、お前が通ってきたそれだ」

「じゃあどこかで抜かされたんだな。かなり飛ばしてここに来たんだろう」


僕が車の移動になれていないということで運転手はゆっくり運転してくれていたのだった。


「いや、そんなレベルじゃない。PCの起動ログを読んだが、俺たちが移動する前から目の前のこいつはここにいることになる」

「なんだって。単にパソコンをつけっぱなしにしていただけじゃないのか。設定によっては自動で電源をつけることだってできる。そっちを考えるのが自然だ。まさか瞬間移動したってわけじゃないだろう」

「それはそうだが」


頭の中で会話していた僕に向けて、レイは少し不審そうな目を向けてきた。僕は取り繕うように言った。


「髪型、変えたんですね」


先ほどオアシスで会ったときは肩までの髪をそのまま垂らしていたが、今は後ろで一本に縛っている。

僕はその時確かに違和感を覚えたのだけど、それがなんなのかわからなかった。何かとても単純なことを見落としている気がする。


僕の言葉にレイは大きく笑った。


「なるほど。そういうことか。ああ、いや。なんでもない。まあ、そうだな。そういうことにしておこう」

「どういうことですか」

「気にしないでくれ。大丈夫。ここで君がすべきことは変わらないよ」

「はあ」


これ以上この話題を続けるのは無駄な気がしてきた。

僕は話題を変えることにした。


「それで、この施設は何か占拠されているということでしたが」

「そうだな。普段ここではいろいろな研究を行っているんだが、この奥の部屋にそいつがいてね、困っているんだ。このままおちおち実験もできやしない」


その割にはレイは余裕がありそうな表情をしている。

僕は脳内でパトリオに言った。


「どう思う?」

「この先の部屋はまたネットワークが遮断されている。様子をうかがうことはできない。今のところは進むしかないだろうな」

「......そうなるよね」


僕はレイに向き直って


「それで、奥にいるのはどんなやつなんです」


レイはんーとうなって


「説明は難しくてね。ま、直接見てもらうのが早いだろう。約束通りどうにかしてくれれば計算資源の使用権限を渡そう」

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