7-C.協議
バイクはそのまま夜の市場を突っ走っていく。そのまま知性のコロニーの支配権を抜けて、砂漠のど真ん中に存在するオアシスまでたどり着いた。
バイクを運転していた黒髪のライダースーツの女性につられて、僕はオアシスの中を進む。
ライダースーツの女性が言った。
「ここは中立地帯です。ひとまずはご安心ください」
「ひとまずは、ね」
パトリオが言った。
「周囲は安全そうだ」
夜の中、ひときわ明るく輝いているロッジのような建物があった。
女性はそこで立ち止まった。
「こちらへどうぞ、代表がお待ちです」
扉を開けて中に入ると、外見よりは豪奢はつくりのなかに一人の女性が座っていた。
「やあ、どうも。はじめまして。私がレイ・ヤンだ」
「カケル・ミスミです」
すすめられるままに僕はレイの体面に腰かけた。
レイが切り出した。
「指輪を持っていないようだが、どうしたのかね」
「持ち主は今、知性のコロニーにいます」
「どうしてだい。3人とも招いたはずだがね。どこか体の調子でも悪いのかい」
「そんなところです。話をするだけなら自分だけでも大丈夫でしょう」
「そうか」
といってレイはしばらく黙った。顔の前で腕を組んで何か考えているようだった。
そうしてまた口を開いた
「それで君たちはこれからどうするつもりなんだ」
「もちろん。知性のコロニーを止めます。それが自分たちの使命ですから」
「その割にはずいぶんのんびりしているようだが」
「まだ僕たちには力が足りません。僕たちに協力してくれる人工知能の性能を上げないと」
「それで計算資源が必要、ということか」
「そうなります。医療のコロニーにはそれがあると聞いています」
「まあ、ね」
レイは大きく姿勢を崩して、椅子の背もたれに体を預けた。
そのタイミングでメイド服に身を包んだ女性が室内に入ってきて、水のお代わりを注いだ。
ライダースーツの女性とよく似ている。双子か姉妹だろうか。知性のコロニーには家族という概念がないので、こういうところを見つけると新鮮な驚きがある。
そうしてレイは天井に向かって大きく息を吐いた。
「知性のコロニーを解放して、後継者たる君たちはそれからどうするのかね」
「それは」
僕は言葉に詰まった。
「僕は後継者じゃないからなんとも言えません」
「そうか。ちなみにその答えはイエンを持ち合わせていなかった」
あの男は人の集団を作ることにかけては天才的だが、そこから先はからきしだったよ、といった。
僕はレイの左手に輝く見慣れた指輪を見ながらずいぶんな言い草だと思った。
レイがまた言った。
「それより今の話をしよう。計算資源は貸そう。私の医療のコロニーは軍事でも電子戦でも無力だ。どちらにせよ君たちとの協力が欠かせない。ただ」
「ただ?」
「武装のコロニーと同じだよ。遺跡が何者かに占拠されていてね」
「何者か?」
「行けば分かるだろう。なに、同じようにやってくれれば問題ない」
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