6-B.休息
銀の騎士は仰向けに大きく転がると、そのまま完全に沈黙した。
遺跡の内部はようやく静寂を取り戻した。
「計算資源の掌握が完了した」
パトリオが脳内で言った。
「それで、俺たちは本当に知性のコロニーと戦えるようになったのか」
「いや」
パトリオは幾分か声のトーンを落として
「やはり長年メンテナンスされていないことが祟っていた。本来の半分のスペックも出ていない。最適化することでもうすこし性能は上がるだろうが、正直同程度の計算資源をもうひとつは手に入れたいな」
僕はその内容をイエンに伝えた。
イエンは鷹揚にうなづくと
「なるほど。もうひとつの方は心当たりがある。そちらにも渡りをつけておこう」
「ありがとうございます。どうして私たちをそんなに信じてくれるんですか」
リンが申し訳なさそうに言った。
「信じるも何も今や君たちは強力な同士だ。人類はいくらいたところで、知性のコロニーとそのロボットたちの前では所詮烏合の衆だ。どうしても情報戦で劣ってしまうからね」
現にこちらは知性のコロニーの正確な地図すら持っていない状態だからね、とイエン。
「むしろこちらからお願いしたいくらいなのさ」
護衛が一人進み出て
「ま、こういう人なのさ。この人が来てコロニーは大きく変わった。それまでコロニーというにはただの人の寄せ集めにすぎなかったあの場所を一発の銃弾も撃たず人徳だけ治めたのさ」
「おいおいそれじゃあ俺が本当に何もできないみたいじゃないか」
「そりゃあそうでしょ。さっきの戦いだって一発も弾当ててなかったじゃないですか」
わははは、と三人は笑いあった。
僕はそれを見て全身の力が抜けるのを感じる。なんとかその場に座りこむ。
リンが近寄ってくる。
「大丈夫?」
「ああ、うん。ちょっと疲れただけ」
「それにしてもよかったね。最初はどうなることかと思ったけど、協力してくれるコロニーがいるなら何とかなる気がしてきた」
「ふん。俺は一人でもどうにかするつもりだったがな」
ランドが口をはさんだ。口ではそう言っているものの、表情は明るい。
パトリオが言った。
「武装のコロニーの協力は大きい。おそらく純粋な兵力でいえば、知性のコロニーと同等だろう」
「他に何が足りないっていうんだ」
「兵站だ。こちらは人間が戦うんだ。医療物資。食料。弾薬。必要なものはたくさんある」
「やっぱり戦争は避けられないのか」
「すでに宣戦布告は行われている。知性のコロニーがそれを取り下げない限り、それは避けられないことだ」
「......そうだよな」
スミコは恐らく大丈夫だろう。病院を戦場に駆り出すような愚行をマテニはさすがにしないはずだ。
別に優しさがあるわけではない。単に戦場で役に立たないからだ。
ただレンは。
知性のコロニーはきっとロボット兵力を使い切った後、人間の兵士を動員するだろう。
「実際に戦争を止めたければもっと迅速に行動しなければ」
そうだな、と言って僕は天井を見上げる。
ふと視界の隅を何かが動いた気がする。なんだったのかともう一度目を凝らしていると
小さくくぐもった、しかし確実に銃声がした。
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