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5-B.尋問

後ろ手に手錠をつけられた僕たちは行政府の一室に連れ込まれた。

豪奢な見た目に反して、その部屋の内装は地味なものだった。

おそらく僕たちのような怪しいやつらを取り調べるためにしつらえられたのだろう。


僕たち三人は立ったまま、部屋の中央に並んでいる。

デバイスは外されなかった。というより外せなかった。

なにせ持ち主であるはずの僕たちにもそれはできないからだ。

それを疑って必死にデバイスを外そうとしたが、今では肩で息を切りながら僕たちのことを半ば哀れな目で見ている。

目の前のこの男にはこのデバイスが首輪に見えるのだろう。

そうしてそれはそれほど間違ってはいない。


「さて」


衛兵の中でもひときわ装備の上等な男がこれまた上等な椅子に座ったまま、僕たちに嘗め回すような視線を向けて言った。


「お前たちは知性のコロニーからのスパイだな」


それにしてはデバイスを隠さないほどお粗末なものだったが、と男は鼻で笑った。


「俺たちは知性のコロニーの暴走を止めるために行動している。ここに別の目的でやってきたのだ」


レンが叫んだ。


「ほう。知性のコロニーの住人はコロニーを治める人工知能に絶対忠誠を誓っていると聞いているがね」

「私たちは違います。私たちは知性のコロニーの創設者の子孫です。私たちのDNA情報だけがマテニの暴走を止められる」

「荒唐無稽だな。だが、仮にそれが真実だとしてなぜ我々のコロニーまで出張る必要がある。お前らのDNAがあればよいのだろう」

「それは」


リンの言葉を僕が引き継いだ。


「僕たちにはまだ力が足りない。このコロニーにあると言われている計算資源があれば、僕たちの味方になっている人工知能を強化できるんです。そうすればまだ可能性が出てくる」


僕の言葉に衛兵の男が大笑いした。


「知性のコロニーの人工知能が暴走しているのはどうやら本当らしいな! こんなガキどもをスパイに送り込んでくるとはな。しかも偽装もお粗末ときたもんだ。俺たちはお前らスパイだとする証拠があるんだよ」

「なに?」


どういうことだと僕たちが考えると、男は続けた。


「つい先日知性のコロニーが我々武装のコロニーに宣戦布告した。人類を導くだとよ」


衛兵たちはそろって大笑いした。


「そういう状況下で、だ。めったに外界と交流しない知性のコロニーの連中がうちのコロニーのしかも行政府の近くをうろついている。これが偵察活動じゃなければなんだっていうんだ」


知性のコロニーが宣戦布告? 脳内でパトリオが言う。


「奴の言うことは本当だ。つい今になって、人工知能間のネットワークにマテニの名前で情報が公開された」

「最悪のタイミングじゃないか。というかマテニは本気なのか」

「あいつにうそがつけるほどの器量があると思うか」


僕は黙るしかなかった。

状況は最悪だ。僕は慌ててパトリオに詰め寄る。


「何か策はないのか。あえて捕まろうといったのはパトリオだぞ」

「落ち着け。手錠は外せる。簡単な電子制御だ。銃もそう。セーフティの代わりに電子ロックのかかるタイプだ。もう奴らは銃を撃てない」

「じゃあ、今すぐここから抜け出そう」

「ただ、扉の鍵は物理的なものだ。俺じゃあ開けられないな。おそらく衛兵の誰かが持っている」

「なんだよ」


僕は脳内で肩を落とす。

衛兵の男が僕たち一人一人を目を睨みつけながら


「おらさっさとスパイだと認めろ。自白すれば銃殺ですませてやる」


結局死ぬのかよ。


「大体なあ、人工知能が使える計算資源がこのコロニーにあるなんて作り話誰が信じると」

「あるよ、計算資源は」


僕たちが開けたくてたまらなかったその扉が空いて、男が一人入ってきた。

衛兵たちが一斉に立ち上がって敬礼する。男はそれに軽く答えた。

このコロニーの長だ。僕は瞬間的に確信した。

男は優しげに言った。


「やあ、俺はイエン・ウー。このコロニーの長をやらせてもらってる。今日は隣のコロニーからお客さんが来たと聞いてね」


全員があっけに取られている中、僕はここしかないと決心した。


「聞いてください。俺たちはネットワークからマテニの監視から逃れてここに来た。だからネットワークから切り離されていて、宣戦布告のことなんて知らなかったんです。信じてください。ただ、マテニの暴走を止めたいだけなんです」

「信じよう」

「え」

「このイエン・ウー。君たちの言葉を信じようじゃないか」


イエンの後ろで衛兵たちが頭を抱えている。衛兵がポツリと漏らした。


「あーまた始まったよ。この人の悪い癖だ」

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